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お酒はよく飲むけど顔は真っ赤に。 お酒に強いの?弱いの?

2018-01-07 18:30:04


執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
お酒を飲むと、顔が赤くなる人がいますよね。
顔が赤くなるとお酒が弱い、というイメージがありますが、なかには顔が真っ赤になりつつ、延々とお酒を飲み続けられる人もいます。
このタイプの人は、「お酒に強い」ことになるのでしょうか。
今回は、「お酒を飲むと顔が赤くなる」という現象について掘り下げてみましょう。

顔が赤くなる原因はアセトアルデヒド


ご存知のとおり、アルコールは肝臓で分解されます。
肝臓で「アルコール脱水素酵素」によって「アセトアルデヒド」という物質に分解されたアルコールは、「2型アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」などの影響を受け、無害の酢酸へと変化します。
最終的に、酢酸は水と二酸化炭素になり、身体の外に排出されます。
お酒を飲んだときに顔が赤くなるのは、アセトアルデヒドの作用によるものです。
アルコールから分解されたアセトアルデヒドは、血液中で増加し血管を拡張させます。
顔の毛細血管が拡張するため、顔が赤くなるのです。
また、もともとアルコールが持っている、血流を良くするという働きも、顔の赤さを促進してしまいます。
さらにアセトアルデヒドには、自律神経である交感神経を強く刺激する作用もあります。
これにより、脈拍や血圧の上昇、冷や汗、筋肉の緊張、頭痛や吐き気、眠気、動悸など、いわゆる悪酔いといった症状につながります。
このような症状になるかならないかは、アセトアルデヒドの分解能力の高さによるのですが、それは「ALDH2遺伝子」という遺伝子によって決まっています。

お酒の強さは遺伝子で決まる


ALDH2遺伝子は、活性型(NN型)、欠損型(DD型)、部分欠損型(ND型)に大きく分けられます。
活性型は、アセトアルデヒドの分解スピードが速く、お酒に強いタイプで顔が赤くなることもありません。
欠損型は、アセトアルデヒドの分解能力が低く、ほとんど飲めないタイプで、アルコールを少量口にしただけでも、顔が真っ赤になります。
部分欠損型は、ある程度は飲めますが、アセトアルデヒド分解能力は活性型の16分の1といわれています。
欠損型ほどではないものの、アルコールの摂取により顔が赤くなるなどの反応が出ます。
このように、お酒を飲んだときに顔が赤くなりやすいかどうかは、遺伝子によって大きく左右されます。
ちなみに、日本人の約半数は活性型以外といわれています。
それでは、「顔が真っ赤になるけれどお酒が飲める」人は、どのタイプに属するのでしょうか。

顔は真っ赤なのにお酒が飲める理由


前述の3タイプのうち、活性型は顔が赤くなりません。
また、欠損型はそもそもお酒がほとんど飲めません。
よって、顔は真っ赤になるけれど飲めるのは、部分欠損型であると推定できますが、部分欠損型は本来そこまでお酒に強くないはずです。
にもかかわらず、顔が真っ赤な状態でお酒が飲める理由として、次のようなことが考えられます。
(1)「ミクロソームエタノール酸化系酵素(MEOS)」の活性化
MEOSは、異物や薬物の代謝やたんぱく質を合成する役割の酵素です。
また、アルコールを分解する作用もあり、日常的な飲酒、大量の飲酒により活性化することがわかっています。
つまり、お酒を頻繁にたくさん飲んでいると、アルコールを分解するスピードが上がり、飲める量が一時的に増える、ということが起こり得るのです。
しかし、もともとのALDH2遺伝子タイプが変わることはありませんから、「顔は真っ赤なのにお酒が飲める」という現象につながると考えられます。
(2)個人的な体質
アルコールを分解するスピードは、肝臓の大きさ(大きいほど速い)や性別(男性の方が速い)、年齢(中年は速い)なども関ってきます。
たとえば、同じ部分欠損型でも、肝臓が大きい中年男性の方が、たくさん飲めると考えられます。
また、お酒を飲むと、毛細血管が拡張して顔が赤くなりますので、毛細血管の拡張の度合も、影響しているといわれています。
総括すると、お酒を飲めたとしても、顔が真っ赤になっている以上「お酒に強い」とはいえないでしょう。

「お酒で顔が真っ赤」にはこんな原因も!


前項までは、遺伝子タイプから顔が真っ赤になる理由を考えてきました。
しかし、遺伝子タイプに関係なく、アルコールにより顔が赤くなる病気があります。
それは「毛細血管拡張症」です。
毛細血管拡張症は、顔の血管が拡張し皮膚の表面に透けて見える皮膚疾患のことです。
顔が赤っぽく見えるため、「赤ら顔」とも呼ばれます。
毛細血管拡張症の原因は複数ありますが、そのひとつがアルコールの過剰摂取です。
毛細血管拡張症になると、飲酒していないときも顔が赤く、治療をしても完治に時間を要する場合もあります。
このように、「顔が真っ赤になってもお酒が飲める」理由として、いくつか考えられる要因があります。
しかし、お分かりでしょう。
いずれにしても、顔が真っ赤になるのは身体からのなんらかのサインなのです。
本人はもとより周囲も、飲み過ぎないように気をつける必要があるといえるでしょう。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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