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子どもに多いという「夢遊病」 考えられる原因は?

2018-02-18 18:30:23


執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
睡眠中に起き上がり何かしらの行動をとって再び眠りにつく「夢遊病」。
夢は見ていないのですが、「夢の中をさまよい歩くような」イメージからでしょうか、この呼び名で知られています。
また、英語では "sleep walking" と表しますから、この現象のもう一つの呼び名「寝ぼけ行動」はさらにリアルです。
今回は、医学的には「睡眠時遊行」と呼ばれる「夢遊病」のメカニズムについてご説明たいと思います。

睡眠障害としての夢遊病


不眠症や過眠症をはじめ、睡眠に関するさまざまな障害の総称を「睡眠障害」といいます。
WHO(世界保健機関)のICD-10(G47睡眠障害)、アメリカ精神医学会DSM-5(睡眠‐覚醒症候群)、睡眠障害国際分類ICSD-3など、おもな専門的診断分類にも記載されている分類項目です。
この睡眠障害のうち、睡眠中や睡眠と覚醒の境界状態で生じる様々な現象を総称して「睡眠時随伴症(※)」と呼んでいます。
なかでも、ノンレム睡眠からの覚醒時に起こる「覚醒障害」のひとつに「睡眠時遊行症:ゆうこうしょう」、いわゆる「夢遊病」があります。
睡眠時遊行は、夜間に眠り始めてから最初の3分の1の頃合いに発生することが多いとされています。
寝床から急に起き上がって寝床を離れて歩き出し、服を着る、ドアを開ける、階段を上り下りする、別の部屋に入る…など様々な行動をとるほか、食べ物を食べることさえあるといいます。

「夢」にともなう行動ではない夢遊病


皆さんご存知のとおり、睡眠は「ノンレム睡眠(深い眠り)」と「レム睡眠(浅い眠り)」との睡眠サイクルによって構成されています。
一般に、ある程度ストーリー性を持つ印象に残る夢というのはレム睡眠時に見ることが分かっています。
一方、夢遊病を睡眠ポリグラフ(睡眠障害の診断に用いられる検査の一つ)で記録したところ、こちらはノンレム睡眠の段階3から4という深い睡眠時に発生していることが分かりました。
行動中に声をかけても目を覚まさないことの多い夢遊病ですが、夢とは関係なしに歩きまわっていると考えられています。
ちなみに、ノンレム睡眠のステージ3と4とは、入眠後およそ1~3時間に集中して現れます。
夢遊病=睡眠時遊行もこの時間帯の発生が多く、目は開けているものの深い睡眠のままだといいます。
睡眠時遊行は大体1回あたり15分くらい続きますが、まれに30分ほどの場合もあるそうです。
睡眠時遊行が終わるころには自分のベッドに戻って再び眠りにつき、翌朝目覚めてもほとんどの場合その時のことは覚えていないといわれます。

子どもに多い夢遊病


睡眠時遊行は「歩くことが可能な年齢になったら、どんな子にも起こる可能性がある」といわれるくらい子どもに多い現象です。
発症のピークはおおむね8~12歳で、子どもの場合ほかの睡眠障害よりも有症率が高いといいます。
考えられる要因は、子どもは脳の睡眠覚醒周期をコントロールする機能が未発達で、運動を制御する機能だけが先に覚醒し、意識を制御する機能は眠っているためであるといわれています。
つまり、睡眠時遊行は睡眠障害というよりむしろ覚醒障害といえるわけです。
12歳くらいまでの児童期の睡眠時遊行は、自然に回数と時間が減少して、思春期になるとほとんど消失するといわれます。
ですから、子どもの夢遊病については特別に病人扱いをしないで、遊行中の安全を注意するなどの配慮が求められます。

思春期以降~大人の夢遊病


一方、思春期以降の睡眠時遊行は、積極的に治療を受けるよう推奨されています。
たとえば、睡眠遊行中に呼び止められ、抵抗して暴力を振るった場合、相手にケガをさせたり、物を壊したりする可能性があります。
他にも、車の運転や調理をするなど、覚醒しているときに複雑な行動ができる大人は、睡眠遊行中の行為も複雑になって大きな怪我や事故などを引き起こす危険性が高いのです。
ですので、睡眠外来など専門医の診察と治療をおすすめします。
薬物による治療が一般的ですが、怪我をしないための予防策などもアドバイスしてくれます。
ちなみに、ケガや暴力を伴う睡眠時遊行は男性に多く認められるとのこと。
また、双生児による研究から遺伝的要因の影響も指摘されています。
睡眠の専門医によると、子どもの頃は発症しなかったのに、大人になって発症したケースでは「閉塞性睡眠時無呼吸」「てんかん夜間発作」「医薬品の影響」といった特定の病気が関与している可能性があるといいます。
さらに、認知症の初期に初めて発症するという例もあるそうです。
広く知られる「夢遊病」ですが、そのメカニズムは不明な点も多く、とくに大人の夢遊病は本記事を参考に十分ご注意ください。
【参考】
・樋口輝彦/他編集『今日の精神疾患治療方針』(医学書院 2013年)
・掘忠雄/著『眠りと夢のメカニズム』(サイエンス・アイ新書 2008年)
※厚生労働省 e-ヘルスネット『睡眠時随伴症』(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-025.html)
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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