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自分の皮膚をむしり取る? ココロの病気「皮膚むしり症」

2018-04-12 18:30:47


執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
カサブタが気になって剥がしてしまう…
吹き出物ができて、つい潰してしまった…
このような行為に至るのことはどなたも経験をお持ちではないでしょうか。あるいは経験はなくとも、その気持ちは理解できることと思います。
しかし、自分の皮膚の皮や爪などをむしり取って傷つける行為を繰り返していたのなら、それは注意が必要です。
「ついつい」や「クセ」を通り越して度が過ぎた先に「皮膚むしり症」という病気があります。
強迫性障害の関連障害として、メンタルな病気だと考えられています。
詳しくみていきましょう。

「皮膚むしり症」はどんな病気?


自分の皮膚を引っかいたり、むしったりする行為を繰り返してしまう「皮膚むしり症」。
部位は、顔や手がもっとも一般的です。
爪や針、ピンセットなどまで使って皮膚の小さな凸凹、吹き出物、硬くなった角質などをむしり取る行為が多く、皮膚を噛んだり強く擦ったりするケースもあります。
さらに、むしることで生じた皮膚の病変を、洋服や化粧で隠したりする人もいます。
しかし、むしることを楽しんでいるというわけではないのです。
むしったあとの出血を見て後悔し、そういう行為をやめようと何度も試みる様子も見受けられます。
楽しんでしている行為ではなく、やめようと思ってもやめられず、皮膚を傷つけ続けているという状況なのです。
ですから、「皮膚むしり症」は強迫性障害の関連障害に分類されています。
強迫性障害とは強迫観念と強迫行為を繰り返す精神疾患です。
自身の意に反して何度も迫ってくる不快なイメージが「強迫観念」、強迫観念から起こる不安によって「〇〇しないではいられない」行為に及んでしまのが「強迫行為」です。
皮膚むしり症の場合、むしる行為が強迫行為に相当しています。
正式に病名として診断基準に入ったのは『DSM-5(「精神疾患の分類と診断の手引き」最新版、アメリカ精神医学会 2013年)』からのことです。

皮膚むしり症になりやすい人は?


専門医によれば、ニキビなど皮膚疾患ができ始める思春期頃から発症が始まり、最も多いのは青年期とのこと。
成人の生涯有病率は1.4%ほどで、その7割以上は女性だといわれています。
また、他の強迫性障害や不安障害を同時に持っていることも多いと指摘されています。
発症しやすいのは、生活環境が安定していて刺激がなく、いわゆる何もすることがない環境に一人ぼっちで放置されているような状況下に多いといいます。
意外に感じるかもしれませんが、極度なストレスや環境が大きく変化しているときには発症しないで、むしろストレスのないことがストレスになります。
まるで暇つぶしで単純作業をするかのように、手近にある自分の皮膚をむしり取る行為に及ぶ、といった印象があるようです。

皮膚むしり症の症状と診断


『DSM-5』によると、皮膚むしり症は次のような基準により診断されます。

くり返し皮膚をむしってしまう


皮膚むしりを止めようと、くり返し試みている:ほとんどは不安や退屈が引き金になって皮膚むしりを始めます。「やってはいけない」とわかっていても止められないでいます。


本人が苦しんでいたり、社会生活に大きな支障が生じている


ほかの病気や物質の作用に起因しない、他の精神疾患では説明できない:強迫性障害、身体醜形障害、発達障害、統合失調症、皮膚疾患などでないことが鑑別されます。


皮膚むしり症の治療について


皮膚むしり症の人は、自分のやっている行為がよくないと理解しています。
ですから、他人の前で皮膚むしりをすることはなく、ばれないように生活を送っています。
また、独り暮らしをしていたり、本人が皮膚むしりを単なる癖だと思っていたりするため、なかなか治療につながらないという現状が指摘されています。
ただし、家族など気を許せる人の前では皮膚むしりの行為をしてしまうことが多いので、家族に促されて受診につながる人もいるようです。
皮膚むしり症の基本的な治療は、強迫性障害や不安障害と同様に、認知行動療法のような心理療法と薬物療法が用いられます。
うつ病の治療に使われるSSRIで症状を緩和し、クセになっている行動を変容するように心理療法が施されます。
なかでも、ハビット・リハーサル訓練が一般的です。
これは、皮膚むしりという行為に気づけるようにする認知の段階と、皮膚をむしりたくなったとき、それを打ち消すような行動(たとえば、手をぎゅっと握るなど)をとれるようにする行動変容の段階とを組み合わせた心理療法の一つです。
もちろん、皮膚科的な病気があるときには、あわせて治療をします。
いずれにしても、一見すると何気ない行為が、本人も周囲も気づかないうちにエスカレートしてしまうかもしれません。
このような病気があるということを私たちは知っておく必要があります。
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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