E START

E START トップページ > マガジン > 高血圧は良くないと聞くけれど… 血圧が低ければ心配はない?

高血圧は良くないと聞くけれど… 血圧が低ければ心配はない?

2018-06-08 18:30:59


執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
動脈硬化や生活習慣病の予防として「高血圧には気をつけよう!」と、声高に叫ばれています。
それでは、血圧が低い分には健康上問題はないのでしょうか。
今回は女性に多いといわれる「低血圧」に注目してご説明します。

血圧の診断基準


日本では2000年に「高血圧治療ガイドライン」が作成されました。
世界共通の血圧分類が採択され、現在は本ガイドラインをもとに高血圧の診断基準が定められています。
たとえば、家庭での安静時血圧の場合、収縮期は135ミリHg以上、または拡張期85ミリHg以上が「高血圧」と診断されます。
これに対して低血圧は国際的な診断基準がないといわれています。
日本の病院で低血圧の目安としている数値は、収縮期が100ミリHg以下、110~100ミリHg以下、110~85ミリHg以下などがあるようです。
低血圧の場合もさまざまな症状が起こります。
しかし、高血圧ほど注意喚起されないのは病気としてさほど重視されていないからなのでしょうか。

低血圧のタイプと症状


低血圧は次の3つのタイプに分けられ、それぞれに特有の症状があります。

症候性低血圧(二次性低血圧)


病気や薬などが原因で低血圧になるタイプ。次のような疾患が挙げられています。
不整脈:心拍が速すぎたり遅すぎたり、リズムが乱れている状態です。動悸・失神・意識消失とともに低血圧も一つの症状です。
心筋梗塞:心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が動脈硬化を起こして狭くなったところに血栓がつまり、血流が止まってしまう病気です。胸の痛みなどとともに血圧も低下します。
肺塞栓症:血栓が肺動脈に流れ込んで詰まった状態です。エコノミークラス症候群ともいいます。呼吸困難や胸の痛みなどとともに、血圧低下でショック状態になることもあります。
甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンの分泌や機能が低下する病気です。疲れやすさやむくみなどとともに血圧の低下もみられます。
起立性調節障害:学童期や思春期の子どもに多い自律神経失調症の一種です。血圧低下で立ちくらみが起こったりします。
この他にも糖尿病、内分泌障害、がん、薬剤の副作用など、さまざまな疾患や薬の影響による低血圧があります。

本態性低血圧


「原因がよくわからない」もので、低血圧ではもっとも多いといわれています。
体質や遺伝による影響が大きいという見方もあります。
おもに疲れやすさ、だるさ、めまい、耳鳴り、肩こり、不眠、食欲不振、集中力低下、動悸、息切れなどの症状が現れます。

起立性低血圧


起き上がったり立ち上がったりすると、急にフラッとするのが「起立性低血圧」です。
たとえば、横になった状態から急に立ち上がる動作をしたとき収縮期血圧が20ミリHg以上下がると、起立性低血圧と診断されます。脳の血流量の減少や自律神経障害などが原因に挙げられています。
この低血圧の特徴は、急に立ち上がったり起き上がったりしたときに、めまいや立ちくらみが起こるということです。
また、一時的に目の前が真っ暗になったり、気が遠くなったり、失神したりすることもあります。
さらに、冷汗・動悸・胸焼け・吐き気・みぞおち当たりの痛みなどをともなうこともあります。

血液循環の改善を!


低血圧の人は一般に、手や脚など末端部の血管の収縮力が弱く血液の循環が悪い傾向にあります。
つまり、末端部の血液が心臓にうまく戻らないのです。
これはむくみを引き起こす原因にもなります。
とくに脚の場合、「ふくらはぎの筋肉」が血液循環に大きな役割を果たしています。
ウォーキングなどの運動によって筋肉をつけて、血液循環を良くすることが低血圧改善につながるといわれています。
高齢の方のフレイル対策(※)としても同様のことが求められています。
※公益財団法人長寿科学振興財団『フレイルとは』(https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/about.html)

食生活の改善


食事で必要なカロリーを摂っていない、栄養バランスが偏っている、無理なダイエットなどをしていると、低血圧になりがちです。
3食バランスの取れた食事を心がけましょう。
栄養素としてはとくに、タンパク質、ミネラル、野菜や海藻類を積極的に摂りましょう。
また、高血圧の場合は減塩が奨励されていますが、低血圧では塩分が不足している可能性があります。
一般的に低血圧の人は疲れやすいので、塩分とクエン酸がしっかり含まれる、たとえば梅干しなどを食事の時に食べるのも効果的です。
血液量を増やすために、水分もシッカリと摂るようにしましょう(必要量1日1リットル~2リットル)。

無理なダイエット、ストレスもよくない!


このように、血圧は低ければいい…というわけではありません。
体質的なこともさることながら、栄養不足やストレスも低血圧を引き起こす原因となります。
低血圧の予防には、極端なダイエットは控え、慢性的なストレス状態に陥らないよう注意しましょう。
また、十分な睡眠と運動や休養も適度に取り入れて、規則正しい生活を送ることも大切です。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

関連記事

情報提供元: mocosuku

  • Twitter投稿
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人気記事

この記事へのFacebookのコメント