
約8割の人が経験すると言われる「ミッドライフ・クライシス」。
40代〜60代に訪れる心理的危機で、自身の人生に対する“悩み”や“葛藤”を感じ、漠然とした不安にさいなまれることを指します。
自身も48歳の時に経験したという諏訪中央病院 名誉院長の鎌田医師に聞きます。
【写真を見る】「私の人生このままでいい?」“第2の思春期”『ミッドライフ・クライシス』経験した医師に乗り切るポイントを聞く【ひるおび】
「まさか」と思った…うまくいっていても訪れる“危機”
鎌田医師は、ミッドライフ・クライシスをこう振り返ります。
諏訪中央病院名誉院長 鎌田實医師:
僕は30代後半に病院の院長になりました。赤字を全部返して、若いドクターがいっぱい集まる病院にしてとうまくいっているにも関わらず、48歳ぐらいになんだかわからないけど先が不安な感じがしました。自分は強い人間だと思っていたのに、頻脈発作とかパニック発作とか冷や汗が出てきたりして、不眠にも陥ってしまって。
自分自身が中年危機症候群に陥ってしまって「まさか」と思ったんですけど、3年で脱出できました。
ミッドライフ・クライシスに陥りやすい8つの要因
【1】人生の「山頂」が見えたと感じる
【2】病気が発見され闘病が始まる
【3】お酒、賭け事、不倫などにめり込んでいる
【4】下り坂の向こうに「死」が見え始めている
【5】自分探しが終わらない
【6】子どもが巣立ち、空虚感を覚えている
【7】過度なストレスを抱え、オーバーワークを続けている
【8】人生で初めて「つまずき」と向き合っている
※2つ以上当てはまったら要注意
ーーどんな人がなりやすいと言えますか?
鎌田医師:
仕事のしすぎで疲れている人、人生や仕事の壁にぶち当たってなかなかその壁を突破できない人。それから子育てで疲れきっている、あるいは子育てが終わって“空の巣症候群”になっている方などはなりやすいと言われています。
「漠然とした不安がある」街の人はー
49歳女性 パート・子ども2人
「なんとなく不安というか、残り何年生きられるかわからないと考えると、具体的ではないが漠然とした不安がある」
53歳女性 会社員・子ども2人
「50過ぎて子どもも自立して体調が徐々に衰えてきてるなと実感しちゃうと、人生下り坂というか、何もなく生活が続いていくと思ってたのが、ちょっと先を考えなくちゃいけないなと。」
48歳女性 派遣社員・子ども2人
「前だと会社から帰ってきたら家にみんないたのが、今は帰っても誰もいないし、土日もみんなそれぞれの予定で出かけている。1人の時間が増えるので、自分のことも考えるしこの先の不安は前より感じる。」
65歳男性 社労士
「50代ぐらいになったときに、サラリーマンのどん詰まりで自分が上がるところまで上がったけど、こっから先がないな、あとは退職するだけだなみたいなときに、次の人生どうするの?て考えることありますよね。」
一方で、ミッドライフ・クライシスを感じていない人もいます。
56歳女性 会社員・子ども3人
「子育てが終わって、次の自分の好きなことができると思っているので、下り坂とか思ったこともない。」
53歳女性 資格勉強中
「20代のときから掲げている人生最大の目標が、『楽しかった』って言って死ぬこと。そのための経験値を今貯めている状態」
挑戦が転機に「乗り越えたワケ」
ミッドライフクライシスに陥ったものの、今前向きに一歩を踏み出したというマリさん(49)に話を聞きました。
マリさんは高校生から大学生の3人の子どもを育てている会社員です。40代前半に不安や悩みを感じ出したといいます。
マリさん
「『このままでいいのかな』みたいな。不安とか悩みがあるわけじゃなくて、家庭もうまくいってるし、多分相対的に人生もうまくいってるんだけど、私これでいいのかなというのがすごくあったんですね。外的要因じゃなくて自分の内側から沸き起こってきたから、ミッドライフ・クライシスだったんだなと気づきました。」
マリさんは当時の心境についてこう語ります。
マリさん
「惰性で生きてたみたいな感じ。人生100年時代の半分ぐらい来たなと思って、これからはどんどん気力も体力も衰えるだろうなと思って。
そのときにすごく感じたのは、未来の私が今の自分を見てどう思うだろう、このまま惰性で
生きていったら、自分の終わりを迎えるときに『もっとやりたいことやればよかったじゃん』って…」
悩みを抱える中、彼女を突き動かしたのは、ある挑戦でした。
マリさん
「20代のときから不動産投資をやってみたいなという気持ちがあったんですけど、私には無理とかリスクが大きすぎるとか、自分でやらない理由を見つけてやらなかった。
でも『なんで私にこの経験をさせてくれなかったの?』って未来の自分から言われそうだなと思って。やりたいことをもっとちゃんと自分に聞いてやろうと思いました。」
参加した不動産のセミナーでは、多くの人との出会いが得られ、購入した物件を自らリフォームするなど、楽しい日々が続いているそうです。
ミッドライフ・クライシスを乗り越えたマリさん。今は登山や散歩、さらには読書といった新たな趣味も見つけ、価値観も変わったと言います。
マリさん
「今思えばただ自分が動いていなかったからやりたいことがわからなかっただけで、1歩足を踏み出してみたら、やりたいことがどんどん出てきた。読書も始めていろんな人の話を知ることで、やりたいことがどんどん広がっていって、今までいた世界って狭かったんだなって。
だから悩んでもがき苦しんで、『私の人生これでいいの?』って思ってよかったなって思ってます。」
恵俊彰:
クライシスって聞くと「危機」だから、ピンチかなと思いましたけど、今の話を聞くと変わり目なのかな。もがき苦しむことがすごく前向きでいいことみたいじゃないですか。
コメンテーター 友利新:
危機じゃなくてチャンスに変えて、また新しい楽しいことを見いだしていらっしゃるので、ちょっといいなって思っちゃいましたね。
鎌田医師:
やはり人生の中でギアチェンジをしなくちゃいけない時期がある。
マリさんは不動産投資で新しい人たちと付き合うことによって、新しいつながりができてうまくギアチェンジできたんじゃないかなという気がしますね。
『人生は二毛作』乗り切るポイントは?
ミッドライフ・クライシスを乗り切るポイントを鎌田医師に伺いました。
健康を保つための「睡眠」「運動」「食事」に加え、「自分を肯定する」ことが大切です。
そのために大事なのが「達成感」で、大きな目標ではなく「やった」という気持ちになれる小さな目標を立てるといいそうです。
鎌田医師:
何か小さな目標を持って、それが達成できるとドーパミンという快感ホルモンが出る。快感が起きると、もっと努力してもっと違うことをやってみようとなる。
小さな目標を作って達成していくことが、ミッドライフ・クライシスを抜け出していく上でとても大事ですね。
また、誰かのために活動することも良いそうです。
中年期になると自分を満たすだけでは満足できなくなることもあるので、下の世代に橋渡しする、上の世代に手を差し伸べるなどで自分の存在意義を再定義することが出来ます。
江藤愛アナウンサー:
会社員の人生、定年を考えたらつらくなるけども、会社の利益として後輩を育てていくというのを1個目標にすればいいんですね。
(ひるおび 2025年7月15日放送より)
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<プロフィール>
鎌田 實氏
諏訪中央病院名誉院長 医師・作家
自身も48歳でミッドライフ・クライシスを経験
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