
展示や工芸体験を通じて、きねがわの歴史と産業を学ぶ。
10月19日に東京・墨田区の東墨田地区で行われた「きねがわスタンプラリー」を取材しました。
【写真を見る】革細工の体験、ゾウ、豚、犬(2種)の形のキーホルダー
東墨田には「きねがわ(木下川)」と呼ばれている地域があります。
この地域は衣料品やバッグ・財布などのもとになる「皮革」「レザー」を製造する工場が多く集まり、豚革の生産は日本一の規模です。
また、皮革を作る過程で得られる動物の脂肪分から石鹸やラードなどを作る工場、飲食店などから使用後の食用油、廃油を回収して家畜飼料や工業用油脂、燃料などにリサイクルする工場もある油脂の街でもあります。
スタンプラリーは2015年から毎年開催。今年は約500人が参加。
「スタンプラリー」はきねがわの歴史や産業を多くの人により深く知ってもらおうと2015年に始められました。
毎年10月に開催され、今年は約500名が参加しました。
「スタンプラリー」で回るのは東墨田2丁目にある墨田区社会福祉会館の1階にある産業・教育資料室きねがわ、2階の展示コーナーの2箇所と、近くにある都立皮革技術センター、八広児童館の合計4箇所。
それらのスタンプポイントでスタンプを集めながら、地域の歴史と産業を学ぶイベントです。
社会福祉会館では資料室で皮革産業・油脂産業の歴史を知る展示を見たり、子どもたちが豚皮、牛皮を使ったゾウ、豚、犬(2種)の形のキーホルダー、豚の皮でコースターをつくる体験ができます。
社会福祉会館の2階ではジオラマの展示、プラレールで遊べるコーナーなどのほか、今回初めての企画もありました。
同じ墨田区で、この地域から2キロ程度離れたあたりが舞台となっている「墨東綺譚」(作:永井荷風)で描かれている、玉の井の戦前の町並みを再現したミニチュアの展示があり、大人の来場者が興味深く見ていました。
社会福祉会館に来ていた母親と2人の娘に感想を聞きました。
参加者の声
(母親)3年連続ぐらいで来ています。毎年来て、地域のことを改めて勉強しています。
(妹)(工芸体験では)象を作りました。簡単でした!
(姉)革について知れて、興味を持てました。
また、別の母娘は、このように話していました
参加者の声
(母親)まだこのあたりに引っ越してから2年目なんですけど、1年目で初めてここに来て、いろんな歴史のあるものを子どもたちに直に知ってもらいたくて連れてきました。
(娘)工芸体験は楽しかったです。家の周りに革の工場があったりして、革っていうと動物の皮をはいだりして作るから、命のありがたみをよく感じました
実際に革に触れる工芸コーナーは子どもたちには貴重な体験で、自分で作ったキーホルダーを持ち帰れるので人気があります。
多くの子どもたちで賑わって、順番待ちをしていることもありました。
近隣の学校では、生徒が移動教室などの行事でほかの地域に行く機会に、おみやげに革製品を持っていってはどうか、という意見が出るほど地域産業の理解や関心が高まったそうです。
スタンプポイントの八広児童館では車椅子の乗車体験をしていました。
乗った人がひとりでコースを回ると、記念品がもらえます。
初めて車椅子に乗った健常者の女性は、以前に父親の介護をしたことがあり、その時いかに乱暴に扱っていたか、この乗車体験から理解したと話していました。
年に1回の一般公開! 「都立皮革技術センター」
もうひとつのポイント、都立皮革技術センターは革産業の振興のための試験や技術支援などをする施設です。
ここには工場のような設備があり、年に一度、スタンプラリーの日に一般に公開されています。
動物の皮をなめして製品化するための機械が数多く並んでおり、スタッフが機械の用途や製造過程をくわしく説明してくれます。
こちらでも豚皮製の巾着作りが体験できます。
来場した高校生、子供連れの父親、大学生に感想を聞きました。
参加者の声
(高校生)僕は初めて来ました。皮をなめして成形するという一連の過程を見ましたが、本当に初めて知ることばかりなので、面白いです。
(男性)来たのは2回目です。子どもと一緒に(巾着を)作る体験ができて、とても楽しいです。子どもは今後、革のことを知ることになると思うので今から体験できると、とてもいいかなと思います。
(大学生)革製品がまず好きというのと、大学の研究でこの地域のことを調べていてそれがきっかけで来ました。革製品の作り方に関してスタッフの方が熱心に説明してくださって、革に対する思いがすごいんだなって感じました。
参加者は毎年来ている地元の人も多いですが、東墨田に長く住んでいる人でも、皮革技術センターが何をしている場所か知らない人もおり、施設内を見学できるのは貴重な経験と言っていました。
また都内の別の区や近県からの人もいました。
群馬県の高校の教師は人権教育の参考にするために来て、いずれ生徒も連れて来たいと話していました。
新しい住民が増える街での学びを
東京都墨田区は都心部へのアクセスが便利で、東京スカイツリーが近いこともあって住宅地として人気が高まっています。
東墨田地区のマンションに他の地域から引っ越してくる人が増加して、近くの小中学校では生徒数が増えているところもあるそうです。
そうした新しい住民にとって地域のことを知ることができる「きねがわスタンプラリー」はとても学びの多いイベントだと思いました。
主催団体のひとつ、産業・教育資料室きねがわの館長・岩田明夫さんはイベント開催の意義についてこのように語っています。
産業・教育資料室きねがわの館長・岩田明夫さん
「人口がどんどん変わってきているのは事実です。
新しい人がどんどん入ってきて、それに対してどういう学びをしていくのが問われてくるので、その答えが、僕はここだと思ったんです。
人が集まれる場所で、ここの地域がこんなことをしているのが分かる。
地域の産業が自分たちの生活とどう関係するのかが分かる場所というのは大きい。
初めて来る人にとっては特にそうだと思います」
スタンプラリーで施設をすべて回ると、見学や工芸体験のほかに、記念品がたくさん貰えます。スタッフが手作りした革製コインケースなど、この地域ならではの記念品も貰えるので、興味を持った人はぜひ来年の開催に足を運んでほしいと思います。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当:藤木TDC)
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