うどんチェーン「丸亀製麺」の運営会社は、店長の年収を最大で2000万円にする新たな制度を導入すると発表しました。どんな狙いがあるのでしょうか。
【画像を見る】年収2000万に…対象候補の店長たちが行った“独自の取り組み”
6人が最高年収2000万円に 従業員がやめない組織作りとは
井上貴博キャスター:
年収2000万円へと引き上げる。社内としてはポジティブに受け止められているのかなと感じますが、取材をしていてどんなことを感じますか。
TBS報道局 経済部 窪田ゆき 記者:
丸亀製麺全体で店長が750人ほどいますが、その中から選ばれたのはたった6人でした。
そのため、取材した神戸市・垂水店の店長の原さんは、「店長として2年しか経っていない状態で、まさか自分が選ばれるとは」とすごく驚きを隠せないようでした。それと同時に、「モチベーションが上がった」とも話していました。
井上キャスター:
やはり給料が上がることで、従業員のやる気に繋がることが想像できます。
企業側の狙いは、丸亀製麺の運営会社「トリドールホールディングス」の一つの理念として「従業員がやめない組織作り」をしたい。これは各企業の経営者の方、それぞれ頭を悩ませているところかと思います。
飲食サービス業・宿泊業は“離職率”が特に高いと言われています。他の業界よりも5~10%ほど高く、25.1%です(厚労省:令和6年雇用動向調査パートタイム含む)。
その中で、トリドールは13.6%(2024年度・パートタイム含む)と11.5%低いです。この数字をもっと下げていきたいとのことです。
もう一つ、興味深い取り組みがあります。今の時代と少し逆行する取り組みです。
丸亀製麺のこだわり 「手作り」から生まれる付加価値
井上キャスター:
今はロボット技術を駆使し、従業員の数を少なくして生産性を上げるのが主流となっていますが、それとはまた違った考え方です。
神戸市にある「丸亀製麺垂水店」の厨房を見ると、従業員が8人配置されています。仕事内容は被ることがなく、役割分担をして8人ということです。
TBS報道局 経済部 窪田記者:
従業員の人数が多いかなとは思うのですが、麺を茹でる人だったり、注文を受ける人だったりと、1人1人に役割分担があって、「手作り」にこだわりがあるため、この人数にしているということです。
井上キャスター:
分業制を行うことは、どの企業もやっていることだと思います。ロボットに変えても良い作業ですが、それでも“人の手で”ということですね。
「The HEADLINE」石田健 編集長:
都内の丸亀製麺に行くと、インバウンドのお客さんがすごく多いです。店内に活気があって、実際に茹でているところや、麺を売っているところを見ると、体験として面白いのだろうなと感じます。そこがロボットになってしまうと味気なくなる。
もちろんロボットにすることで効率化を図り、価格を下げる方向性もあるとは思います。ですが、体験価値を上げて、インバウンドも含め、色々なお客さんに来てもらうことで、付加価値をつけて、インフレの社会の中で、現状の飲食業のデフレではない世界観を目指していくことは、一見時代に合ってないように見えても、今後の脱デフレの日本社会には合っているのかもしれないです。
出水麻衣キャスター:
1つの店舗でこれだけの大人数を束ねるとなると、店長さんの手腕が大事になるので、年収2000万円という人事制度は納得ですよね。
井上キャスター:
効率化ばかりを図っていくと差別化が図れなくなるので、その中で違いを見せることがこの施策なのかもしれません。
年収2000万円実行のための“2つの柱” 対象者になるには…
井上キャスター:
年収2000万円をどういう制度でやっていくのか。2つの柱があるようです。
(1)店舗の運営が安定していること
→判断基準:従業員のやりがい、離職率の低さ
(2)店舗独自の取り組みを実行
性別・年齢も問いません。現在の対象候補は6人ということです。
年収2000万円の候補として挙がっている、広島東雲店の伊澤店長(46)は、店頭で「揚げもみじ饅頭」を販売。
また、愛知・春日井西山町店の山本店長(59)は「うどーなつ」販売開始を知り、社長に直談判。それにより駐車場で“専門店”をオープンさせたそうです。
このように競っていくわけですが、2000万円をどう捻出していくのか。
これはまた別の課題にもなりそうですが…。
TBS報道局 経済部 窪田記者:
今の年収は約520万円ですが、2000万円なのでその約4倍のコストがかかりますが、予算はお店の売り上げから捻出すると考えているそうです。
井上キャスター:
売り上げ全体からいえば、その100人200人規模を2000万円にするわけではない。ある程度のやりくりをすればという感じもします。
「The HEADLINE」石田健 編集長:
トリドールとしても考えていると思いますが、これがわかりやすい旗になって「何人か選ばれたらOK」ということではなく、従業員全体がベースアップになっていくような仕組みと合わせてやっていく。
そうすると、どうしても利益率の問題も出てくると思うので、一部はロボット、もしくはテクノロジーの力など、何かとの組み合わせなのかもしれないですね。
外食業界全体で報酬アップの動き 3年間で賃金約20%の増加も
井上キャスター:
様々な企業で同じような課題があります。
外食業界全体での店舗の報酬アップの流れを見ますと、店長の年収においては、「トリドール」で最高年収2000万円、「すかいらーく」でも最高年収1000万円。
さらに、社員に対しても「ロイヤルHD」は3年間で賃金約20%増加、「ワタミグル-プ」でも賃金約5%増加ということです。
これは外食業界に限らず、様々な業界でこういった取り組みが行われるわけですね。
「The HEADLINE」石田健 編集長:
それこそ不動産の価格が、だんだんグローバル基準に近づいてきている。これは苦しい部分もありますが、世界で共通ぐらいの価格になってくることを考えると、当然、人件費もそこに追いついてくるだろうと。
そう考えると、1000万円はすごくキャッチーな数字ですけど、アメリカやヨーロッパを見ると、1000万円はそんなに高いというわけでもないので、どの業種や業態もそこは重ねてくることになりそうですね。
==========
〈プロフィール〉
窪田ゆき
TBS報道局 経済部 外食・旅行担当
週1で食べるほどハンバーガー好き
石田健さん
ニュース解説メディア「The HEADLINE」編集長
鋭い視点で政治・経済・社会問題などを解説
・“ポカリ”と“アクエリ” 実は飲むべき時が違った! “何となく”で選んでいませんか?効果的な飲み分けを解説【Nスタ解説】
・「50ccって便利だったので残念」ガソリン原付バイク10月で新車の生産終了へ 販売店から切実な声「売り上げに直結する重要な問題」
・女性に言ってはいけない『たちつてと』子育てママ就業率9割の時代「ママの笑顔は家族の笑顔」パパスキルUP講座 新潟市