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「OTC類似薬」保険適用“見直し”が議論に 膨らむ医療費48兆円 適用外で「最大1兆円削減」試算も…負担増に懸念の声「命がかかっている」【news23】

国内
2025-11-12 15:00

病院で出される「処方薬」のうち、街のドラッグストアでも買える成分のもの=「OTC類似薬」について、保険適用を見直す議論が始まっています。負担増を懸念する患者がいる中、国は年末までに結論を出す見通しです。


【写真で見る】保険適用外になると、薬の負担額は?


OTC類似薬 保険適用の見直しを議論

ーー最近、病院で薬もらいましたか


20代
「もらいました。普通に風邪薬です、ロキソニンとか」
「薬局よりは病院で処方してもらうことが多いですね」

20代
「(子どもの)肌が乾燥しちゃってそれの軟膏。毎月何かしらもらったりはしてると思う」


60代
「肩が痛くて、かれこれ2年くらい治らないもんですから、ずっと湿布もらってますけど」

多くの人が処方を受ける身近な薬。そのあり方が見直されるかもしれません。

埼玉県川口市にあるドラッグストアでは...


薬剤師 伊藤拓海さん
「こちらがアレルギー性鼻炎に用いられる薬。一方で、OTC類似薬といわれるものは医療用医薬品になるので、処方箋調剤のほうで受け付ける薬になります」

同じ店内にある調剤薬局に案内してもらうと…


薬剤師 伊藤さん
「先ほどと同じフェキソフェナジンという成分の薬で、OTC類似薬と言われるもの」

「OTC類似薬」は、医師の処方箋が必要なもので、解熱鎮痛剤や湿布薬、保湿剤など市販薬と成分がほとんど同じ薬のこと。

患者が全額支払う市販薬に対し、医療保険の対象である“類似薬”は1割から3割の自己負担で済みます。この保険適用の見直しに向けた議論を、国は本格化させています。

厚生労働省の資料によりますと、4日分の解熱鎮痛剤について3割負担であれば36.4円で購入できますが、保険適用から外れれば121.2円、市販薬だと299円~最大768円となります。(※ロキソプロフェンナトリウム水和物錠剤60mg)

街の人は...


20代
「偏頭痛持ちでバファリンとか買うんですけど、(病院に)行けるときは行って安く保険適用内で買うんですけど、それが適用外になっちゃうと出費が大変ですね」

40代
「私自身がそんなに薬を常時使わない人なので、急に100%(負担)と言われても、そんな実感がないっちゃないですね」

30代
「薬を連日もらうためだけにお医者さんに行くみたいなのが、医療リソースを圧迫していると思うので」


医療費は30年前の2倍に 類似薬の保険適用を外すと最大1兆円削減可

「保険適用の見直し」。その背景にあるのが、膨らみ続ける医療費です。

高齢化などに伴って増え、2023年度は30年前の約2倍となる48兆円と過去最高を更新しました。日本総研の試算では、“類似薬”の保険適用を外した場合、医療費を最大1兆円削減できるとしています。

日本総研 成瀬道紀 主任研究員 
「保険から外すことにより薬の無駄遣いもなくなるし、受診回数が増えることもなくなることがメリット」


現役世代の保険料の引き下げを訴える日本維新の会。自民党との連立合意書に「薬剤の自己負担見直し」を盛り込みました。これを受け、高市総理は「迅速に検討を進める」考えを示しています。

しかし負担の増加を懸念する患者も…


「丁寧に議論してほしい」通院しながら抗がん剤服用 保険適用外なら、さらに10万円の負担 

水泳教室のインストラクターで石川県に住む花岡修子さん(57)。5年前に大腸がんを患い、今も通院しながら抗がん剤を服用しています。花岡さんは、抗がん剤の副作用で手足が腫れ、痛みが伴うこともあるため、医師から処方された軟膏や保湿クリームを使っています。


花岡さん
「かなり腫れてくる時があるので、写真を撮っておいて主治医の先生に見せようと」
「(Q.何種類がOTC類似薬?)いま服用しているのが6種類。6種類のうち3種類が『OTC類似薬』」

治療や検査、薬など医療費の総額は年間20万円ほど。もし“類似薬”が保険適用から外れると、さらに10万円の負担がかかるといいます。


花岡さん
「仕事にも家庭にも影響が出る。命とお金がかかっていることなので成り行きが心配。医療費が厳しいのは分かるが、丁寧に議論してほしい」

政府は、子どもや低所得の人、慢性疾患のある患者に対しては「配慮すべき」としていて、年末までに結論を出す方針です。


解熱剤、湿布、アレルギー性鼻炎… “保険適用の見直し”で負担は?

藤森祥平キャスター:
現役世代の負担をいかに減らすのかという議論でもあります。給料明細からかなり社会保険料が引かれてると感じる人も多いと思いますし、医療費も年々膨らみ続けていますから、このままだと私たちの負担は増える一方です。10月にまとめられた自民と維新の連立合意書では薬代の負担のあり方も見直そうという検討が進められています。

小川彩佳キャスター:
医療費を最大で1兆円削減できるという試算もあるようですが、実際にプラスマイナスで見たときに個人の負担は減るのかどうかという議論もあります。


小説家 真山仁さん:
若い世代の医療費の負担を減らすのは、すごく重要なことだと思いますが、若い人が少し調子の悪いときに買う薬となると、若い人にとってプラスになるのかがかなり疑問です。

藤森キャスター:
対象となる薬が3割負担から10割負担になるということで、解熱剤や湿布、アレルギー性鼻炎の薬などでは以下のようになります。

▼解熱剤(4日分)
3割負担:36円 保険適用外:121円 市販薬:~768円
▼湿布薬(14枚)
3割負担:54円 保険適用外:~181円 市販薬:~1958円
▼アレルギー専用鼻炎薬(14日分)
3割負担:~241円 保険適用外:~804円 市販薬:~2075円

慢性的に使っている人には、かなりの負担感になると思います。

小説家 真山さん:
このようなことが続くと「薬もらうのやめよう」「医者に行くのやめよう」となってしまいそうです。熱があるときに、風邪かなと思っていてもインフルエンザやコロナになっている可能性もあります。医者との距離が遠くなると早期発見が難しくなりますし、お金ばかり気にしていると医療の意義に疑問が生じる気がします。


小川彩佳キャスター:
厚労省の部会などで進められている議論では、子どもや慢性疾患の患者、低所得の人に配慮する方針が示されていて、これに関しては部会でも異論はなかったということです。日々薬に頼っている人にとっては、経済的なハードルを感じずに薬を受けとれるということは心理的にも大きな助けになっていると思いますし、こうした人たちを追い詰める議論にはならないように、丁寧にしていただきたいと感じます。


小説家 真山さん:
結果的に、年齢・世代によって使う側と払い続ける方に差があります。若い人たちは払ってばかりで、それが後期高齢者の人に回っていたりする。そうすると若い人は、「なぜ自分たちは医療を使わないのにこれだけ払っているのか」と、不公平に思うようになります。

現役世代を救うというのであれば、今の医療制度の仕組みを原点から変えなくてはいけないと思います。何となく突貫でやって、パフォーマンスをして医療制度改革というのはおこがましいのではという気がします。

どういう構造になってるのか、なぜお金出してるのに足りていないのかを考えるべきです。薬が無駄なら、無駄にならない方法は、価格を上げることではないと思います。的確に使われているかなど、地道な調査をした上で、最終的に選択肢を出した上で議論してくれないと、金額ありきで進めると怖いなと思います。

藤森キャスター:
一方で、私達も薬を利用する側で、適正に適量を使っているかどうかの確認も徹底したいという気持ちになりますね。

小川キャスター:
様々な材料を得て、整理して考えたいとも思いますし、必ず向き合わなければならないことですから今後の議論の行方も注視していきたいです。

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<プロフィール>
真山仁さん
小説家 2004年「ハゲタカ」でデビュー
近著に政治家のリーダーシップを描いた「アラート」


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