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“黒字万博”の裏側で…「建設費未払い問題」置き去り“万博倒産”の危機…閉幕から1か月 進む解体工事に影響も【news23】

国内
2025-11-14 15:02

閉幕から11月13日で1か月となる大阪・関西万博。公式キャラクターの人気や運営費の黒字など、華々しい成果の一方で、悲鳴をあげている人々もいます。海外パビリオンでは建設費の未払いトラブルが相次ぎ、いまだ未解決のまま。その影響は、急ピッチで進む解体工事にも広がり始めています。


【写真を見る】「本当に悔しくて残念」下請け業者からの悲痛な声


万博閉幕から1か月…現地では

13日、パビリオンの解体や撤去が進む会場の中が、報道陣に公開されました。


愛子さまも訪れた「電力館」。ゲームを通じて最新の電気エネルギー技術を学ぶことができました。


記者
「電力館の前に来ています。このように撤去作業が進んでおり、廃材が積み上げられています」


そこには、「万博ありがとう」など、閉幕を惜しむ来場者のメッセージがびっしり書かれていました。


そして万博の華、海外パビリオンは…


記者
「現在は、海外パビリオンそれぞれで解体や撤去に向けた作業が進められているということです」


出展した国は、2026年4月13日までにパビリオンの敷地を更地にし、博覧会協会に返還することになっています。


未払い置き去り…“万博倒産”の危機

一方で、置き去りになっているのが「建設費の未払い問題」です。


マルタ館を建設 Aさん
「たった1年でこんな状況になってしまうのは、本当に悔しくて残念でしかたないです」


京都府内で建設業を営むAさん。会社が経営危機に陥っています。


Aさんはマルタ共和国のパビリオン工事を、外資系の元請け業者「GLイベンツジャパン」から請け負った1次下請け業者です。         


参加国が独自に建てるパビリオンの中で、最後に着工したマルタ館。


Aさんは、昼夜を問わず作業を続け、予定された工期より遅れましたが、開幕には間に合いました。


しかし、元請け業者は「工期の遅れなどによるペナルティが発生し、支払える金額は残らない」などと主張。


2025年6月、Aさんは元請け業者に対し、約1億2000万円の支払いを求めて東京地裁に訴えを起こしました。


提訴して以降、従業員が徐々に辞めていき、これまでと同じ規模で工事を受注することも難しくなっています。


マルタ館 1次下請け Aさん
我々にとってはこれは本当に災害と同じ。大きな事故に巻き込まれた。最低限、今を乗り越えるための力を貸していただきたい」


そもそも、大阪府などはパビリオンの建設を進めるため、地元の中小企業への呼びかけを行ってきました。


ただ、今回の件については、「民間同士のトラブル」だとして、立て替え払いや資金繰りの支援はできないとしています。


一方、元請け業者はJNNの取材に対し、「係争中につき詳細は差し控えさせていただきます」としています。


こうした未払いのトラブルは、マルタのほかアメリカ、ドイツ、セルビアなどあわせて11の海外パビリオンで起きています。


未払いを訴える会社は30社以上で、Aさんのように元請け業者を提訴したケースだけでも、支払いを求めている金額は、あわせて5億円以上にのぼります。


11月4日、当事者でつくる被害者の会は、東京の外国特派員協会で会見を行いました。


マルタ館 2次下請け 高関千尋さん
「日本で起こっている問題・トラブルを確実に(海外企業の)本社でも理解させるためには、海外のメディアの協力が必要」


アメリカ館 3次下請け 岸田宗士郎さん
「きれいごとを言っている場合ではない。今回の件で日本政府が本当に信用できないと思いました」


外国メディアの記者も、この問題について関心をもっていると話します。         


パンオリエントニュース カルドン・アズハリさん
「実はすでにこの問題について記事を書いていますし、4日の会見の様子についても別の記事を書こうと思います」


「いのち輝く未来社会のデザイン」。そう掲げた大阪・関西万博。その舞台を支えた建設業者が“万博倒産”の危機に立たされています。


“海外企業”とのトラブルなぜ?

小川彩佳キャスター:
30以上の下請け会社が未払いを訴えているということですが、そもそもなぜこのような事態になっているのでしょうか。


MBS万博担当記者 清水貴太記者:
やはり大きな要因は、工期の遅れです。工期が遅れて、大手のゼネコンが海外パビリオンの工事を請け負いませんでした。これは、海外パビリオンが独創的なデザインを計画していて、これが開幕までに間に合わないと判断し、大手のゼネコンは断ってしまいました。


その代わりこの工事を請け負ったのが、中小規模の建設事業者です。やはり国家プロジェクトということで、「ここは一肌脱いで頑張ろうじゃないか」と、万博のパビリオン工事を請け負うことになりました。ただ、中小規模の事業者は、当然海外の企業や国とは、なかなかこれまでお付き合いはありませんでした。


その中で起こるのが、一つは言語の問題です。例えば図面は全て英語で書かれていますが、業者は日本語しかわからないので、スマホでスキャンをして翻訳を行い、「こんなことが書かれているんだ」と、現場で知りながら図面を読み解いて建てることもあったようです。


また時間がないので、契約書を結ばずに作業を優先してやってしまうというケースもあり、「何とか開幕に間に合わせたい」というところから、契約書よりも作業を優先してしまう。これが結果的に今の未払いのトラブルに繋がっていくことになります。


小川キャスター:
ギリギリの状況だったということですね。


清水貴太記者:
特に開幕に間に合うのかどうか、本当に微妙なラインだったことが、こうしたトラブルに今つながってしまっていると思います。


小川キャスター:
本当に成功裏に閉幕し、華々しく終わった万博でしたが、現場ではまだトラブルが起きている。この状況について、いかがですか?


東京大学准教授 斎藤幸平さん:
皆が「成功して終わってよかったね」としか思っておらず、このような問題があることをすっかり忘れていると思います。


こういう大変な状況で大手ゼネコンが引き受けられないような中で、無理して引き受けてくださり、何とか成功させてここまできて黒字も出したのに、この仕打ちというのは許せないですよね。


間に入った「GLイベンツジャパン」という会社が、ニュースによればこれからもアジア競技大会などにも関わるようで、また別のところでも同じことが起きるかも知れないということになれば、日本の色々なイベント開催とかにも支障が出ます。これはやはり国がもっと責任を追及しないのかと憤ってしまいます。


藤森キャスター:
そもそも、想定がついたことではないのかという気もします。


清水貴太記者:
やはり国や博覧会協会も、その旗を振った責任はあると思います。法律的には確かに民間同士のトラブルかもしれませんが、やはり政府や博覧会協会は「開幕に間に合わせます」ということを、遅れが指摘されていた2023年頃しきりに言っていたわけです。そういうふうに旗を振った責任があるとは思います。


だから今こそ、この未払いの被害を訴える中小の事業者を救う手立てを考える必要があると思います。


国・大阪府から救いの手は?

小川キャスター:
国家プロジェクトということで、安心して請け負った方たちもいらっしゃったと思います。具体的に国や自治体はどういった手を打てるのでしょうか。


清水貴太記者:
一つ参考になるのは、新型コロナの際に事業者向けの貸付制度が国や自治体で設けられました。こうした事業者を救済するための法令を作る、ある種の政治判断ですね。こうしたことで、政治の力で何とか中小の事業者を救う手立てを考えていく必要があると思います。


東京大学准教授 斎藤幸平さん:
もっと強いことはできないのでしょうか。これから入札できないよう出禁にするとか、それぐらいの罰則も含めてやらないと、本当にこんなに頑張った中小企業の方たちが報われないですよね。


清水貴太記者:
一つ策としては、建設業法に基づく規制というところが考えられます。国や都道府県というのが、建設業許可を出しています。つまり建設を営んでいる方々への規制の権限を持っているわけです。


例えば一定の場合に、業者に対して建設業法に基づく規制をかけることができるのは、国や都道府県であったりするので、建設業法を生かして指導や勧告をすることによって、トラブルが考えられるような企業が、日本の工事に入らないようにするプランも考えられます。


東京大学准教授 斎藤幸平さん:
国交省や国がもっと動こうと思えば、そうした余地もあるということですね。


藤森キャスター:
建設の問題を論じてきましたが、そういう動きで近々に考えなければいけないのは、解体が始まっており、解体業者とも今後トラブルがあるかもしれませんよね。


清水貴太記者:
実は解体の方が、より切羽詰まっているという状況です。この未払いの問題が明るみに出たことにより、パビリオンの解体をしようと考えていた業者が、少し二の足を踏む状況が続いています。


解体は、建物を取り壊してしまうと、担保に残るものが何もありません。建設の段階だと、建てた建物を担保にして、金額の交渉ができます。ただ、解体は全部壊してしまうので、担保がありません。解体をしてから、未払いのトラブルに巻き込まれると、食いっぱぐれるリスクが非常に高まるというところで、解体の業者はそこを非常に懸念しています。


東京大学准教授 斎藤幸平さん:
このままレガシーとして残ってしまう可能性もあるということですか。


清水貴太記者:
ただ、博覧会協会は、土地を大阪市から借りている状態なので、いずれ敷地を返さないといけません。敷地を返すというのは、更地にして返さないといけない決まりになっているので、海外パビリオンも、大阪市が「これは残していいですよ」と言わない限りは、更地にして返さなければいけません。


レガシーに繋がるんじゃないかというところもありますが、そこはまた法律や大阪市と博覧会協会の関係性というところで、難しい問題も出てきます。


小川キャスター:
現在進行形の問題だということですよね。万博問題は全く終わっていないということです。


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<プロフィール>
清水貴太
MBS記者 誘致段階から大阪・関西万博を取材
元大阪府政キャップ

斎藤幸平さん
東京大学准教授 専門は経済・社会思想
著書『人新世の「資本論」』


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