E START

E START トップページ > 国内 > ニュース > 死亡ひき逃げ事件「公訴時効」の必要性とは?“免罪リスク”など撤廃には課題や壁も【Nスタ解説】

死亡ひき逃げ事件「公訴時効」の必要性とは?“免罪リスク”など撤廃には課題や壁も【Nスタ解説】

国内
2025-12-09 22:01

16年前、埼玉県熊谷市で小学4年の男の子がひき逃げされ死亡した事件。


【写真で見る】時効まで約4年 小4男児が亡くなったひき逃げ現場


時効まで残り4年を切るなか、母親は9日、法務省に「死亡ひき逃げ事件」の時効撤廃を求める嘆願書を提出しました。


犯人の処罰できなくなる「公訴時効」

山形純菜キャスター:
「公訴時効」とは、犯罪から一定期間が経過して、犯人の処罰ができなくなるというものです。

2010年4月27日改正法が施行され、「殺人罪」「強盗殺人罪」など人を死亡させた犯罪で死刑にあたるものについては、公訴時効が廃止されました。以前は25年の公訴時効があったということで、厳格化されています。


TBS報道局 社会部 寺島尚彦 記者:
名古屋のアパートで女性が殺害された26年前の事件で、10月に犯人が逮捕されました。法改正が行われていなければ、時効が成立していた事件にあたります。

逮捕された女は「毎日不安だった」と供述しているということで、まさに“逃げ得”は許されないという遺族の思いが解決に導いた事件だと思います。


なぜ必要?「正義」と「平穏」のバランス

山形純菜キャスター:
公訴時効は、▼「犯罪者を処罰する重要性」という正義の実現、そして、▼「過去の事件と区切りをつけ社会全体の平穏を保つ」法的安定性、この二つのバランスを保つためにあるということです。


TBS報道局 社会部 寺島尚彦 記者:
「これだけの事件だから、絶対に犯人を捕まえてほしい」という国民の思いにこたえる「正義の実現」の一方で、バランスも必要です。

罪には重いものから軽いものまであり、軽い罪でも犯人が国家権力のもとで、監視をされることが良いのかどうかという点。そして、被害者の中にも「今の生活を維持したい」「そっとしておいてほしい」という人もいれば、当然、処罰感情の強い遺族もいます。

犯罪者・被害者も含む社会全体に、平穏と区切りをつけることが必要だと、そのバランスを取り決めているのが「公訴時効」の考え方とされています。


「時効」 がなかったら…

山形純菜キャスター:
公訴時効がない場合の懸念点などを見ていきます。


【公訴時効がないと…】
●証拠の劣化・散逸
●冤罪のリスク
●捜査への負担


事件が起きてから時間が経過するとともに証拠が劣化・散逸してしまい、証拠がなくなることで、冤罪のリスク、潔白の証明が限られてくるといいます。

そして、▼警察の人員や予算が限られ、捜査への負担がかかるという懸念が出てくるということです。


井上貴博キャスター:
本当に難しい問題で、海外でも「時効」をどう考えるかは、意見が分かれているようです。


フリーアナウンサー・文筆家 住吉美紀さん:
その罪の軽さ・重さについては、主観的な視点・客観的な視点のバランスの取り方なども含めて難しいと思います。


TBS報道局 社会部 寺島尚彦 記者:
法定刑が上がれば上がるほど、悪質であればあるほど、公訴時効が長くなります。法定刑を上げていくことが公訴時効を撤廃するうえでのポイントだと思います。


井上貴博キャスター:
ひき逃げというのは、殺人に近いのではないかという感情もわきますよね。


死亡ひき逃げ公訴時効の壁 社会の声で変化も

山形純菜キャスター:
死亡ひき逃げ事件の公訴時効の壁を見ていきます。


【死亡ひき逃げ事件 公訴時効の壁】

“意図的ではなく不注意”
●過失運転致死
7年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金 公訴時効10年

“犯罪を認識”
●危険運転致死
1年以上の有期拘禁刑 公訴時効20年

●救護義務の違反(被害者を救護せずに現場から逃走など)
10年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金


TBS報道局 社会部 寺島尚彦 記者:
ひき逃げ事件は、逃げた部分は「故意犯」で、ひいた部分は「過失犯」となります。

救護措置を取れば、救われる命もあるはずです。悪質なひき逃げは、証拠隠滅を図っているのと同じで、殺人と同等とすべきだという意見もあります。

自分も被害者になる可能性があるという“自分事”として公訴時効を考えて、議論していかなければいけないと思います。


井上貴博キャスター:
罪の重さは、社会の声を受けて変わってきているわけですよね。


TBS報道局 社会部 寺島尚彦 記者:
もともと公訴時効が3年だった「過失運転致死」は、「法定刑が低いのではないか」と議論され、現在では10年になりました。声を上げることの重要性がわかります。


フリーアナウンサー・文筆家 住吉美紀さん:
市民が声を上げるのはすごく大切なことだと思います。社会は、そうして少しずつ変えていかなければいけないのではないでしょうか。難しい問題ですが、こうしたことを機に考えることは大事なことだと思います。


==========
<プロフィール>
寺島尚彦
TBS報道局社会部 警察庁担当
事件・事故 犯罪被害者支援などを取材

住吉美紀さん
フリーアナウンサー・文筆家
NHKアナウンサーとして人気番組を担当 2011年フリー転身
不妊治療など人生を赤裸々に綴ったエッセイ「50歳の棚卸し」が話題


「インフルにかかる人・かからない人の違いは?」「医師はどう予防?」インフルエンザの疑問を専門家に聞く【ひるおび】
【全文公開】“ラブホテル密会” 小川晶・前橋市長の謝罪会見【後編】「どちらからホテルに誘うことが多かった?」記者と小川晶市長の一問一答(9月24日夜)
「あんな微罪で死ぬことはないだろう…」逮捕直前にホテルで命を絶った新井将敬 衆院議員「この場に帰って来れないかもしれないけども、最後の言葉に嘘はありませんから」【平成事件史の舞台裏(28)】


情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

ページの先頭へ