
高市総理の国会答弁で注目を集めることになった「台湾有事」と「存立危機事態」。現実的にはどのような事態が想定され、そのとき自衛隊はどう動くのか。安倍政権当時の自衛隊トップに話を聞きました。
中国が東アジア海域に艦船を展開 台湾巡り高まる緊張...
11月28日、上海で行われた日本のアニメイベントでは、人気アニメ「ワンピース」のエンディング曲が披露される中、突然、真っ暗に。
駆け寄ったスタッフが何かを告げると、歌手の大槻マキさんは退場を余儀なくされました。
翌日、予定されていた浜崎あゆみさんの上海公演も中止に。浜崎さんのSNSには、誰もいない観客席に向かって歌う様子が投稿されました。
日本関連のイベント中止が相次ぐなど、強硬姿勢を崩さない中国。
4日、習近平国家主席と会談したフランスのマクロン大統領は、台湾問題をめぐり「一つの中国政策を堅持する」と発言。国際社会でも中国は攻勢を強めています。
さらに、中国は東アジアの海域に、一時100隻を超える過去最大規模の艦船を展開していると報じられました(ロイター通信・4日)。背景には、台湾の頼清徳総統が11月、防衛力の強化を発表したことがあるとみられています。
台湾を巡る緊張が高まる中、万が一「台湾有事」となった場合、日本にどんな影響が及ぶのでしょうか。
台湾有事で自衛隊はどう動く?
直接日本が攻撃を受ける事態、それを「武力攻撃事態」と呼びますが、日本はその時はじめて、憲法に基づき「個別的自衛権」による武力行使が可能となります。
その憲法解釈を変更し、2015年に安保関連法が成立。これにより、「個別的自衛権」に加え、日本が直接攻撃を受けていない場合でも、「集団的自衛権」による武力行使が可能となりました。ただ、行使できる事態については憲法9条に従い、極めて限定した形で規定されたのが「存立危機事態」です。
アメリカなど、密接な関係のある「他国が攻撃を受け、その結果、日本の存立が脅かされ、国民の生命・自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」だと規定されています。
高市総理は11月7日、「台湾で『海上封鎖』が発生し、中国が武力行使した場合は、『存立危機事態』になりうる」と答弁。つまり日本が武力行使しうると解釈できますが、実際、自衛隊はそうした状況でどう動くのでしょうか。
安保法制の成立当時、自衛隊制服組トップである統合幕僚長だった河野克俊さんに話を伺いました。
河野克俊 元統合幕僚長
「安倍政権になって集団的自衛権に踏み込もうと。しかし、今の憲法がある以上、フルの集団的自衛権は無理ということで限定的になった。日本は、台湾に紛争が発生したときに関与できる仕方というのは、日本単独ということは基本的にありえない。アメリカが介入するのが前提。アメリカがやられた、次は自分(日本)のところに迫ってくるという、ギリギリの状況でこの存立危機事態は発動される」
あくまでアメリカが攻撃を受け、危機的状況に陥らない限り、日本が武力攻撃すること(存立危機事態)はあり得ないと言います。
実は、こうした制約の大きい「存立危機事態」とは別に、もう一つ、重要なフェーズがあるのです。
台湾有事で想定される3つの「事態」 認定する“政治の責任”とは
今回の高市総理の答弁で、「台湾有事」に関連し指摘された「存立危機事態」。それよりも手前のレベルが「重要影響事態」です。
河野 元統合幕僚長
「(重要影響事態は)日本の安全保障に重要な影響を与えるというレベル。放っておいたら日本に重要な影響が及ぶと判断した時に、米軍に対して後方支援ができる」
日本の平和及び安全に重要な影響を与えるとされるこの「重要影響事態」。自衛隊は、“武力行使”はできず、あくまでアメリカ軍などの“後方支援”に活動が限定されるのです。
こうした幅広い概念である「重要影響事態」に対して、武力行使ができる「存立危機事態」は、より一層、危機レベルが上がった事態ですが、その幅はあるように見えて全くないこともありうると、河野さんはいいます。
河野 元統合幕僚長
「(幅は)狭い、もうほとんど自分(日本)がやられる寸前ということ。台湾で有事が起きました、順番通り重要影響事態でステップアップして存立危機(事態)、ステップアップして武力攻撃(事態)と、順番どおりエスカレーションさせてくれることはない。その事態の認定によって、自衛隊のオペレーション、あるいは使える武力が違ってくるので、逆に言えばそれ(事態認定)を決めていただかないと(自衛隊は)行動のしようがない」
では、自衛隊が武力行使するかどうかの事態を、誰が・どう判断するのか。そのときこそ、政治が軍事に優先する、いわゆる「シビリアン・コントロール(文民統制)」が重要だといいます。
河野 元統合幕僚長
「自衛隊はシビリアンコントロール、政治のもとで動く。政府というのは選挙の結果、民意が反映された政府ができているはず。ただ、世論が常に正しいというわけではありません。世論が大きくなればそっち(武力行使)に行こうなんていうことは、国を誤るもとになる。エスカレーションさせる前に、外交も含めて日本として努力する。そこは政治が責任を持って国民に説明をするということ。政治の責任は重大」
日中の対立が続く中、改めて政治の責任の重さが問われています。
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