『ボクたちはみんな大人になれなかった』燃え殻さんの話題作
2017-08-27 07:00:00
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Twitterで発表されて以来話題を呼び、書籍化後は4万5千部も売れている『ボクたちはみんな大人になれなかった』。43歳の男性が15年以上も昔の恋の話をしみじみ語る展開に思わず引き込まれ、私にも昔、大好きな人がいたなあ、とつられて思い出してせつなくなる、そんな不思議な共感に満ちている本なのです。
元恋人への友達申請
物語がFacebookの友達申請から始まるところも新鮮です。主人公の男は、混んでいる電車内で、間違えて遠い昔に交際していた女性に友達申請ボタンを押してしまったのです。文中にも「マーク・ザッカーバーグ(facebookの創始者)がボクたちに掲示したのは「あの人は今」だ。」とあるように、SNSのおかげで昔の知り合いの消息は随分探しやすくなりました。昔好きだった人の名前をそっと探した人もいるはずです。もちろん私も探しました。20年ぶりにその人を見つけた瞬間「わあ、老けたなあ」と思いましたが、ということは私も年を取っているんでしょうね。
でも、できるのは大抵はそこまで。遠くからそっと「昔大好きだった人の今」を眺めるのが精一杯、私もそうです。私が大好きだった人はもう結婚していました。20年前の私なら彼が他の女性と結婚したらどうしても許せなかっただろうけれど、今なら、ああ幸せなんだね、よかったね、と素直に言えます。彼の今を邪魔したくないし、友達申請なんてとてもできません。だからこそ申請を出しちゃった主人公にスリルを感じて、もし自分だったらどうなっただろうと妄想を楽しみながら読んでしまうんでしょうね。
大好きだったあの人
思えば若い頃の恋愛は、純粋なものでした。30歳前後になると、結婚するのかしないのか、結婚をしたらしたで子どもを作るか、家を買うか、年金は準備した方がいいのか、などと考えなければならないことが次々襲ってきて、ピュアな「好き」という気持ちのままではいられません。物語も過去のフリーターだった主人公と、現代の仕事で活躍する主人公の生き方とが対比されていきます。
ただ会いたいから会う、抱き合いたいから抱き合う。若い2人の恋は、甘酸っぱくも楽しそうで、ただ一緒にいられるだけで幸せなんだな、他にはなにもいらないんだな、ということがよくわかります。未来を案じることもあるけれど「きっと大丈夫だよ」という根拠のない言葉だけで片付けることができる、それも若さゆえでしょう。
いつかは来る別れ
物語では主人公が繰り返し恋人の女性のことを決して美人ではないと語ります。けれど、彼は彼女のことが大好きでした。その理由は、冒頭のあたりから一貫して「キミは大丈夫だよ」という言葉を、彼女がずっと言い続けてくれていたからでもあるでしょう。私たちは距離が近くなればなるほど照れて相手をほめなくなり、ダメ出しばかりしてしまいがちです。けれどやはり、大切な人を讃え続けたほうが愛されるのです。
そして、恋人とはいつか別れが訪れます。突然気持ちの行き違いが起き、二度と会えなくなることだってあるのです。そうなってから後悔しても、間に合いません。恋人と定期的に会えていること、または結婚して毎日顔を見ていること、当たり前のように感じてしまいがちなことは、実はとてもありがたいこと。この本を読み、自分の過ぎ去った恋を振り返って共体験することで、逆に、今目の前にいる大切な人のことを、より大切にしたくなるはずです。
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情報提供元: michill (ミチル)