笑うことで健康に! 「笑い」が生み出す健康効果
2017-08-27 18:30:55
執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
「笑う門には福来る」のたとえのように、笑うことの健康効果が注目されています。
具体的に、笑うことでどのような健康効果が期待できるのでしょうか。
一緒に考えてみたいと思います。
笑いが希求されている!?
笑うことは、楽しさ、うれしさ、おかしさなどを表現する感情表出行動です。
心理学的には「快感情」の一つで、怒りやつらさのような「不快感情」とは区別されます。
また、自分自身が不安定なとき笑いは起こりません。「笑っている場合じゃないでしょう!」と怒りさえこみあげます。
笑う主体が安定しているときに「笑い」は起こる(河合隼雄)とされています。
現代社会は不安定で不確定な時代といえるでしょう。「お笑い」が流行るのは、安定への憧れと不安定に耐えていく頑健さが、いつの時代にも増して希求されているからでしょうか。
笑いがもたらす9つのメリット
さて、笑いが健康にもたらす効用をあげてみましょう。
意外にも、多くの効果が指摘されています。
免疫力アップ
外部から侵入する病原体を攻撃する生体防御機能の「免疫」。これにかかわる免疫細胞のうち、病原体を直接破壊するNK(ナチュラルキラー)細胞と、抗体を作り出す働きをするB細胞とのはたらきを、活性化させる作用が笑いにあることがわかりました。
判断力や記憶力の活性化
笑うことで脳への血流が増加し、海馬や側頭葉といった記憶や判断力にかかわる器官が活性化されます。同時に、脳の状態をリラックスさせるアルファ波も増加させ、相乗効果で脳の機能が高まることが指摘されています。
幸福感や意欲の向上
脳内麻薬ともいわれる「エンドルフィン」や「ドーパミン」。これらは脳内ホルモンとして興奮を助長し、幸福感や意欲性を高めます。
笑いはこれらの神経伝達物質の分泌を促進する作用があります。
ストレスの軽減
笑うことで、「セロトニン」や「ドーパミン」の分泌が促進されます。セロトニンは心のリラックスに欠かせないホルモンで、セロトニンが減少しているとうつ病などになることがわかっています。
また、ドーパミンには上に挙げた意欲の向上作用だけでなく、ストレスホルモンの分泌を抑制する働きもあります。
アレルギーの改善
アレルギーは体内の免疫細胞が自分自身を攻撃してしまう現象です。中でも免疫グロブリンIgEと呼ばれる抗体が原因で起こるアレルギーに対して、笑いはこのIgE抗体を減少させる作用のあるといわれています。
たとえば、アトピーなどはこの例ですが、笑いによってアトピーをはじめアレルギーが改善される場合があるということです。
糖尿病・リューマチ・心臓病の予防
漫才を見て爆笑した後に食後血糖値を測定すると、その上昇を抑えることができたという知見があるそうです。また、間接リューマチを悪化させる「IL-6」も、大笑いした患者さんが短期間で値を下げることができたとか。
さらに、心臓病についても心拍数や血圧の上昇を抑えることが笑いには可能です。このように、病気の予防にとって笑いが果たしてくれる役割がいくつか認められています。
血行の促進
適度な運動や入浴などと同じように、笑うことで横隔膜が刺激され、腹式呼吸となって血管を広げ、副交感神経を刺激します。その結果、血行が良くなります。
筋力を高める
顔もお腹も身体も、笑うことで筋肉を動かすことにより、筋力を高め、あるいはしっかりと筋肉を引き締めてくれます。とくに顔の場合、しわやたるみの予防にもなるといわれています。
ダイエット効果
笑うことで消費するカロリー(10分間)は、軽い笑いの場合10キロカロリー程度、思い切り笑ったら30~40キロカロリーにもなるといわれます。
ウォーキングの場合27キロカロリーほどなので、笑うことの消費カロリーはバカになりません。また、上に挙げたような筋力アップの結果、基礎代謝がアップすることも笑いの効用かもしれません。
笑いにはダイエットに資する一面もあるというわけです。
感情表出と感情抑制:笑いとメンタルヘルス
以上に挙げた身体面への健康効果だけでなく、笑いにはメンタルヘルスへの効用もあります。
感情抑制とは喜怒哀楽の感情をうちに秘めて出さないこと、感情表出とは反対に、それらを表現したりコトバにしたりすることです。一般に感情抑制が深刻になると、失感情症といってストレス疾患の原因となるような事態が起こります。
反対に適度の感情表出は、自分自身にとっても気持ちを表に出すことでスッキリしたり、周囲の人とのコミュニケーションにおいても、自分の気持ちをわかってもらったり、相手の感情に共感できたりといった、精神的な健康をもたらす効果があります。
このように、ココロの健康の立場からは、もちろん笑いにも健康効果がありますが、笑いにとどまらず、感情全般を表現すること伝達すること自体が、メンタルヘルスをもたらす可能性があるのです。
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku