【ポコチェ】Cover interview 吉高由里子
2017-09-30 08:55:00
Profile
1988年生まれ。2006年、16歳のときに原宿でスカウトされ『紀子の食卓』で映画デビュー。2014年にはNHKの連続テレビ小説『花子とアン』の主演に抜擢。その後も『東京タラレバ娘』の主演を務めるなど、TVや映画、CMで大活躍中。
自分とは全く異なる人間を演じるそれこそ、この仕事の醍醐味だと思う。
「共感できる部分は全くありませんでした。だからこそやろう!と思いました。だって自分とかけ離れている役を演じられるのは楽しいし、それこそこの仕事の醍醐味だと思うから」
そう話し始めてくれた吉高由里子さん。5年ぶりの主演作となる「ユリゴコロ」で彼女が演じるのは人の死でしか心の拠りどころを感じられない、悲しい殺人者だ。
「主人公の美紗子は愛情も知らないし、幸も薄ければ人間自体の色素が薄い感じの女性。私とは育った環境も何もかもがあまりに違い過ぎたので、逆に共感できずに葛藤するということはありませんでした」
まったく自分と違う人間を演じるにあたり、気になるのが役作りだ。
「監督からのリクエストはひとつだけ。美紗子に何かクセを作りたいということでした。そこで作ったのが手首をカクカクさせる仕草。美紗子に起こる殺人への衝動を手で表現したので注目してほしいですね。あとは特別何か準備して挑むというより、撮影中の環境が美紗子を作ったという感じ。というのは、オール地方ロケだったので、撮影中はホテルに缶詰だったんです。現場に閉じ込められて終わるまで帰れませんよっていう環境で(笑)。自宅から撮影に通うのと違って、リセットする場所がなかったから美紗子を取り払いたくても体に染み付いちゃって…。撮影も後半になると感情が高ぶって涙は止まらないし、台風でコンディションは最悪だし、本当に心身ともに大変でした」
そんな現場で、吉高さんを救ってくれたのが共演者の松山ケンイチさんだったそう。
「出会う人は殺しちゃう役だから、誰かと一緒に待ち時間を過ごしたり、何かを共有することがなくてずっと孤独で。だから松山さんとの撮影が始まって、やっと誰かといられるという安心感は大きかったです。あと美紗子はヒリヒリする心情ばかりだったから、あの松山さんのくったくのない笑顔やヤンチャな感じに救われました」
松山さん演じる洋介との出会いによって、美紗子はこれまで知らなかった愛や幸せという感情に触れることになる。しかしそれはさらなる悲劇の幕開けにしかすぎず…。『アナタの優しさには容赦がありませんでした。』という劇中のセリフが印象的だ。そこで吉高さん自身、今まで容赦ない優しさを感じたことは?
「おばあちゃん…。この仕事を始めたとき、私は16歳でおばあちゃんと一緒に暮らしてたんです。ある日、撮影が夕方くらいに終わるはずだったんだけど、深夜までかかっちゃって。ご飯食べそびれちゃったな… と思って帰ったら、テーブルにおばあちゃんの作ったご飯が並んでて。おばあちゃん、自分も食べずに待っててくれて。テーブルにうつぶせになって寝てたんですよ。その姿見たら泣きそうに…あ、ごめんなさい、今も思い出すと泣いちゃう。そんなおばあちゃんももう歳だから、お料理も作れなくなっちゃって。時間が経つのって本当に早いよね…」
当時を思い返し、目に涙を浮かべながら語ってくれた吉高さんは、16歳でデビュー、そして、今年で29歳。あっという間に30代だよと、いつもの笑顔を見せてくれた。
「最近、感度が鈍って来てるのかなって思う部分が多くなりました。この世界に入ったばかりの頃は人から聞く自分の評判や噂に喜んだり、落ち込んだりしてたけど、今は気にしなくなっちゃった。強くなったのか、鈍くなったのか…(笑)。でも10代のときには分からなかったことが20代でわかるようになったように、30代になって初めて分かることも色々出てくるんでしょうね。その感情に一つひとつ向き合って、今しか感じられないものを受け入れていきたいです。色んなものをいっぱい吸い込んで、いっぱい吐き出して、いっぱい感じたいですね」
最後に吉高さんの『ユリゴコロ』を伺うと。
「『家』かなぁ。人からどう見られるかを意識しなくなったとはいえ、やっぱり常に見られている緊張感があるので、家に帰るとホッとします。ゲームしたり、テレビ見たり、お酒飲んだり。普通のことを普通にできる家が私の心の拠りどころかな」
殺人者役という難役を演じ、役者として新境地を切り開いた吉高さん。
「今回の役がまた次のやったことない役へと続く第一歩になればいい」そう話してくれた彼女の今後の活躍から目が離せない。
『ユリゴコロ』(双葉文庫)
Ⓒ沼田まほかる/双葉社Ⓒ2017「ユリゴコロ」製作委員会
原作/沼田まほかる
監督・脚本/熊澤尚人
出演/吉高由里子、松坂桃李、松山ケンイチ 他
公開/9月23日(土)より、全国ロードショー
TEXT / Satoko Nemoto
PHOTO / Mizuaki Wakahara(D-CORD MANAGEMENT LTD.)
STYLING / Yusuke Arimoto
HAIR MAKE / RYO
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情報提供元: michill (ミチル)