しっかり食べたはずなのに、この空腹感はなに?
2016-11-20 18:30:04
執筆:桜 イクミ(管理栄養士)
食事をしっかりとったはずなのに、お腹が空いていたり、物足りなかったり。
ついついデザートやお菓子を食べてしまった経験が、誰にも一度はあるのではないでしょうか。
今回は空腹や食欲をコントロールする対策をご紹介しようと思います。
空腹を感じるのはどんなとき?
お腹が空いた状態、すなわち胃の中が空っぽ状態を空腹といいます。それは、身体にエネルギーや栄養素が不足している状態のことです。
身体は糖質をエネルギー源としていますが、糖質が不足していると、血糖値が低下している状態になります。
血糖値の低下が起こると、身体は空腹を感じ、脳からエネルギー補給の信号を出します。
これが本来の空腹の状態です。
ニセの空腹がある?
一方、お腹の中に食べ物が入っているにも関わらず、空腹を感じたりさらに食べ物を食べたいという感覚のことは「空腹感」といいます。
よく「デザートは別腹」なんていったりしますね。この「別腹=空腹感」です。
実は別腹は、根拠が証明されていて、専門的には「感覚特異性満腹感」といいます。
この別腹には脳と関係があり、空腹の状態でなくても食欲を刺激してしまうのです。
本来の空腹の状態でなく、お腹がいっぱいでも食欲が増加してしまう別腹は「ニセの空腹」といえます。
別腹はなぜ存在するの?
別腹は、脳から分泌される「オレキシン」という神経伝達にかかわる物質に関わっていることがわかっています。
オレキシンが分泌されると、食欲を刺激して増進させます。オレキシンは、空腹の状態で血糖値が下がっている場合に分泌されます。
ところが、それ以外に食事を食べた後に食べ物を見る、考える、いい匂いがするなどの刺激によって、「おいしそう」と感じた場合にも分泌されます。
オレキシンが分泌されると、胃や消化管が活発に働き、胃に入っていた食べたものを小腸へ送り出します。
これによっていっぱいだった胃の上部にスペースができ、食べ物を受け入れるスペースを作られます。
これが別腹の正体。
食事を食べた後にお腹がいっぱいでもデザートを食べることができる理由です。
別腹を防ぐ3つの対策
1.食べ物を見えるところに置かない
食べ物が見えることで、オレキシンが分泌されることがあります。ですから、食べ物を見えるところに置かないことも、偽の空腹感を防ぐひとつの方法です。
普段から家に食べ物を買いこまないようにすることも有効です。
2.食べたらすぐに歯を磨く
すぐに歯を磨くことで「歯を磨いてしまったから食べないようにしよう」という心理が働きます。これによって、食べ物をさらにとることを防ぐことができます。
3.温かい無糖の飲み物を飲む
コーヒー、紅茶、緑茶などの無糖の飲み物をとることで、満腹感を得られます。また、温かい飲み物を選択することで、心を落ち着かせることもできます。
食欲を増進させる生活習慣
別腹のほかにも、通常以上に食欲を増進させる要因があります。食欲の増進は生活習慣に大きく関わっています。
睡眠不足
睡眠不足は、「グレリン」という食欲を増進させるホルモンの分泌を増やします。
それだけでなく、「レプチン」という食欲を抑制するホルモンの分泌を減らします。
ストレス
ストレスが多い状態は、交感神経を優位にします。交感神経が優位になると、レプチンの分泌が抑制され、食欲を増進させます。
偏った食事
糖質(ごはん、パン、麺類など)に偏った食事や、甘いものなどのとり過ぎると、空腹感が感じやすくなります。
糖質は、血糖値を急激に上昇させます。血糖値が急激に上がると、血糖値の急激な低下も招きやすくなります。
この状態になると、血糖値が緩やかに上下する場合に比べて、空腹を感じやすくなるため、食欲の増加につながります。
空腹感は病気のことも
著しい空腹感、食欲の増進の裏には病気が潜んでいる場合もあります。
過食症、糖尿病、甲状腺機能亢進症、月経前症候群などで食欲の増進が見られることもあります。
空腹感や食欲は自分自身の意思だけではなく、身体の中で分泌されるホルモンの影響も大きく受けます。
空腹感のメカニズムを知り、行動や生活を見直してみてはいかがでしょうか。
<執筆者プロフィール>
桜 イクミ(さくら・いくみ)
管理栄養士・健康運動指導士・フードスペシャリスト
株式会社 とらうべ 社員。病院での栄養管理・栄養指導の経験を経て、現在は企業で働く人の食と健康指導を行っている
関連記事
情報提供元: mocosuku