受動喫煙でもない「三次喫煙」 どういう害がある?
2016-11-25 12:00:42
執筆:井上 愛子(保健師、看護師)
2020年に開催される東京オリンピックに向け競技場整備に関するニュースが連日放送されている中、日本の喫煙対策も進められています。
タバコの健康への影響は、もはや喫煙者本人に限らないことは明白です。
近頃は受動喫煙に加えて、「三次喫煙」という言葉も耳にするようになりました。
この三次喫煙とはどういうことでしょう?また健康への影響はどれほどあるのでしょうか?
詳しく解説していきます。
三次喫煙とは?
タバコを吸う人が、自分の肺に煙を吸い込むことを「一次喫煙」といいます。
またタバコを吸った人が吐き出した煙や、火がついたタバコから立ち上る煙などを、ほかの人が吸い込むことを「二次喫煙」といいます。
二次喫煙は、別名「受動喫煙」とも呼ばれています。受動喫煙という呼び名の方がなじみのある人も多いでしょう。
それに対して三次喫煙は、一次喫煙や二次喫煙(受動喫煙)のように、タバコの煙が目の前に無いのに、衣類などに染みついたタバコの煙に含まれる成分を吸い込むことをいいます。
タバコの煙に含まれる有害な物質が、タバコを吸った人の衣類や髪の毛、部屋のカーテンや壁紙などに付着し、揮発した成分を他の人が吸い込むことをイメージすると、わかりやすいかもしれません。
三次喫煙による影響は?
厚生労働省の報告では、タバコの煙には60種類以上の発がん性物質が含まれるといわれています。
さらに、そのほかにも「ニコチン」をはじめとする有害物質が含まれています。
ニコチンは強い神経毒性のある猛毒です。
しかしニコチン自体に発がん性物質はなく、体内で分解されると、発がん性物質が生み出されることが分かっています。
ほかにもタバコの煙にはニコチンのような有害物質が、約4000種類も含まれているのです。
これらの発がん性物質や有害物質による受動喫煙の害を、厚生労働省は次のように報告しています。
・受動喫煙による死亡者数は、推計で年間15,000人にのぼる
・成人では、心疾患リスクは1.25-1.3倍、肺がんリスクは1.2-1.3倍に高まる
・乳幼児や児童では、呼吸器症状、肺の発達の遅れ、乳児突然死症候群、中耳炎などの耳疾患、重度で頻回な喘息発作を引き起こす
・妊婦自身や妊婦周囲の喫煙によって、低出生体重児(2500g未満で生まれること。約3000gで生まれるのが平均的)や早産(妊娠22~37週未満に生まれること。妊娠37~40週で生まれるのが理想)のリスクが高まる
これに対して、三次喫煙にどれだけの健康被害があるのかはまだ研究途上にあります。
受動喫煙のように「死亡者や病気になる人が何倍になる」といった具体的な報告はまだありません。
現段階では、2014年にアメリカの研究チームが「受動喫煙よりも三次喫煙の方が、健康に被害が及ぶ」と報告しています。この報告では受動喫煙に比べて三次喫煙におけるニコチンなどの物質の影響は、数倍から数十倍になるとされています
。
子どもはカーペットやソファーなどに接することが多く、身体の発達も未熟です。その分、タバコの煙に含まれる有害物質にさらされる被害は深刻です。
私たちの将来を担う大切な子どもたちを、タバコの被害からぜひとも防ぎたいものです。
一次喫煙や二次喫煙(受動喫煙)、三次喫煙も含め、タバコの健康被害はまだすべてが明らかになっていないことも多い現状です。
分かっていないことが多いだけに、タバコを吸う人は、健康に害のあるタバコをやめるに越したことはないでしょう。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
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情報提供元: mocosuku