「女子力」についてマジメに考えてみる
2016-12-01 18:30:04
執筆:座波 朝香(助産師・保健師・看護師)
「女子力アップ」だとか「女子力が高い」などとよく聞きますが、“そもそも女子力とは?”と素朴な疑問をいだいたことはないでしょうか。
女性の一生にたずさわる助産師として、女子力とその高め方についてまじめに考えてみます。
まず女子力という言葉の意味は?
「女子力」という言葉は2000年ころから使われはじめ、2009年のユーキャン新語流行語大賞の候補にもなっています。
その当時は女子力という言葉の意味に対して『きれいになりたいと願い、行動する力』という意味で使われていました。
最近では、その意味はさらに広くなり、「女性であることを楽しむ積極性や、女性特有の魅力を高めていく前向きな姿勢を指すようになった。」と説明されていました。
今でも幅広い意味で使われていて、最近で女子力の高い男性について「女子力男子」といった使われ方もしていますね。
女として生まれるのはいつか
「女子力」という言葉に決まった定義はありませんが、「女」であることの定義はあります。
性別がいつ決まるのか、話はあなたが“オギャー”とこの世に産まれ出てくる前にさかのぼります。遺伝子的に、性別は受精の段階でその子が男になるのか女になるのか、決まっているのです。
受精卵は、男性(精子)と女性(卵子)がそれぞれ23本の染色体を持ち寄っています。そして46本の染色体のうち、2つの染色体の組み合わせがXXであれば女、XYであれば男というわけですね。
妊娠6週目から生殖器がつくられ始め、安定期の16週頃にはほとんどの臓器が完成し、生殖器(膣、子宮、卵管、卵巣)もつくられます。
身体が女として生まれても男として生まれても、赤ちゃんのうちは同じようにカワイイものですよね。それが、成長するにつれて外見や身体の機能に男女の差が出てきます。
とくに大きな分かれ目は思春期、男女で身体つきも変わり月経が始まります。
女らしさをつくるものとは
さて、身体だけでなく嗜好や性格、考え方やあり方にも男女の差が影響していると考えられてきました。
たとえば色の好みについて、「女の子はピンクが好き」「男の子は青が好き」、遊び方も「女の子はおままごと」「男の子は戦隊ごっこ」、女性は「おしとやかに」男性は「たくましく」といった具合です。
このような「らしさ」は、ジェンダーといって社会的な性別です。
家族、学校、仕事など様々なコミュニティや、恋愛、結婚、医療健康面、マーケティングなどのいろんな場面において、男女の違いを意識しないことはないでしょう。
「女らしさ」に現れるジェンダーは、コミュニティの文化や背景の影響をうけてつくられます。
一方で、最近ではこういったジェンダーにとらわれないあり方が強調されてきている面もあります。
言葉にしても「女性(男性)だから」と思われていたことへ反するかのように「女性(男性)“なのに”○○」というギャップを表す「○○女子(男子)」という言葉が浮き上がります。
たとえば「肉食系女子」「理系女子(リケジョ)」「土木系女子(ドボジョ)」「草食系男子」「スイーツ男子」などです。
現代人の女子力は低下している?
芸能界だけでなく、ハイブランドのファッションショーでも「ジェンダーレスファッション」が登場して、スカートは女子のものではなくなってきているほど。
これまでのジェンダーにとらわれない、多様な生き方がますます広がっているようです。
ファッションや趣味嗜好だけではなく、仕事と家庭生活といった基本的なライフスタイルも多様化し、女性が社会で活躍しています。国からも「女性活躍推進法」が打ち出されていますね。
一方、仕事をする上では女性が活躍する場面が多くなるほど「まだまだ誰もが活躍できるというわけではない」ということを実感することが多いのではないでしょうか。
たとえば男性と同様にバリバリに働きキャリアを積んではいたものの、結婚をして妊娠を望んでもなかなか子どもができないと悩み、これまでの働き方やライフスタイルを見直す人もいます。
また、育児休暇から無事に元の職場に復帰し、これまでと同じ量の仕事をこなそうと思っても、残業はできずに持ち帰りの仕事が増え、子どもを寝かしつけた後に夜な夜な仕事をして体調をくずしてしまうといったケースもあります。
もちろん子育て、家事、仕事と、効率よくこなしている人もいますが、だれもがバリキャリママになれるわけではありません。女性も、男性と肩を並べて働けることは素晴らしいことですが、いろんな場でジェンダーレスになったとしても、完全にボーダーがなくなることはないのかもしれません。
最初に説明した、生物学的な性としての「女」であることを無視することはできないからです。
もしもそれを無視した生活を続けようとすれば、身体からは何かしらのサインを出してくるでしょう。
女性の性周期など、女性特有で繊細な身体機能がダメージを受けてしまうという点で、活躍することが期待される現代人は女子力低下の危機と隣り合わせなのかもしれません。
「波」を乗りこなす力が「女子力アップ」!?
「人間の性」には生物学的な「性」だけでなく、ジェンダーという概念も含めていろんな「性(セクシュアリティ)」があります。
多くは男女を分けて区別するものです。でも、2つに分類することができないことも多くあります。
つまり、ある部分では男女という2つの色に分けることができても、ある部分では2色にはなりません。
色は無限にあるのと同じく、「性(セクシュアリティ)」は多様な「自己表現」であるとも考えられています。女性は綺麗、美しいという秩序がある限りは、それを表現し続ける、つまり女子力アップをめざし続けるのではないでしょうか。
しかし、身体が自然とつくりだす美もあるので、やはり身体の性が表現しようとしていることも無視はできません。
たとえば、美肌の時期とそうでない時期があることに気付いている人も多くいるでしょう。ダイエットで効果が出やすいときとそうでないときがあるのを気付く人もいるでしょう。
どちらも月経が始まった後から、排卵日まであたりが調子の良い時期です。
肌の調子が悪い時期だからといって、あれこれやろうとすると逆に肌荒れを起こしたりすることもあります。このように、女性ホルモンの波にうまく乗ることが、1つの女子力アップの方法です。
年齢によっても、女性ホルモンが活発で成熟している20~30歳代の時期と、不安定な思春期、産後(産褥期)、更年期などの波があります。
その時々の変化を受け入れていくことが、女子力を高める秘訣なのかもしれません。
<執筆者プロフィール>
座波 朝香(ざは・あさか)
助産師・保健師・看護師。大手病院産婦人科勤務を経て、株式会社とらうべ社員。育児相談や妊婦・産婦指導に精通。
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情報提供元: mocosuku