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ニセの薬なのに効果がある!? 「プラシーボ効果」

2016-12-09 21:30:54


執筆:南部 洋子(看護師)
監修:坂本 忍(医師・公認スポーツドクター・日本オリンピック委員会強化スタッフ)
「病は気から」という言葉があります。
“病気は気の持ちようによって良くも悪くもなる”という意味ですが、実は、薬や医療行為の効果についても、受ける側の気の持ちよう(思い込み)が大きく影響することがわかっています。これを「プラシーボ効果」と言います。
今回はこのプラシーボ効果について、詳しくご紹介していきましょう。

偽物の薬でも治療効果を発揮する?


プラシーボの語源は、ラテン語の「喜ばせる」や「満足させる」を意味する言葉「プラセボ」です。
もともとは、医師が患者に気休めとして与えていた薬のような形をした丸薬風のものを指していました。
薬効成分を含まない偽物の薬でも、本人が信じて服用すれば症状が改善するなどの一定の効果が認められるため、「プラシーボ効果」として知られるようになりました。
「プラセボ効果」あるいは「偽薬効果」などとも呼ばれます。

薬の臨床試験に利用される


現在では主に、医薬品の臨床試験で薬物の治療効果を判定するために使われます。
被験者を2つのグループに分け、一方のグループ(実験群)には薬効成分を含む薬を与え、もう一方(対照群)には薬効成分が含まれていない偽薬(プラシーボ)を与えます。
両グループに与えられる薬は、見た目はまったく同じです。
その投与結果を比較することで、思い込みや自然治癒ではなく、成分が実際に効果を発揮しているかを確かめるわけです。
なお薬剤以外の治療行為でも、同様の治癒・改善効果が上げられることが明らかになり、これらも広い意味で「プラシーボ」と呼ばれます。
ちなみに、被験者に対してはその人が実験群と対照群、どちらのグループであるかは隠されます。
また処方する医師側も第三者が作成した割り付け表に従って薬を配布することで、それが薬なのか偽薬なのかわからないようにします。
この方法を「二重盲検試験」(ダブルブラインドテスト)と言います。

薬の代わりにはならない


プラシーボ効果の特筆すべき点は、本人の気分的な問題だけでなく、客観的に測定可能な改善効果が現れることもある点です。
薬を飲んでいるという安心感によって、自然治癒力が引き出されたのかもしれません。
ただし、プラシーボ効果があるからといってそれが薬の代わりになるわけではありません。プラシーボ効果は人によってかなりの差があり、常に同じような治療効果が得られるわけではないからです。

薬効成分を含まないのに害がある「ノーシーボ」


ラテン語で「害する」という意味の「ノセボ」が語源で、薬効成分を含まないのに害があるものを「ノーシーボ」と呼びます。「反偽薬」とも呼ばれます。
ノーシーボ効果とは、プラシーボとは逆で、服用する人の思い込みによって悪い効果が出てしまうことを指します。
「薬を飲めば必ず副作用が出る」や「副作用による健康被害が心配だ」など、副作用を心配しすぎて、本来はそのような作用はないはずなのに、実際に症状が出てしまうのです。

医師が偽薬を用いることもある


ここまで見てきた通り、薬効を含まないものが、服薬者にとって好ましい結果をもたらす時はプラシーボと呼び、悪い結果をもたらす時はノーシーボと呼ばれます。
同じ薬の形をしたものでも、もたらされる結果によって呼び方が異なるのです。
薬の臨床試験以外にも、医療の現場でもプラシーボ効果を利用することが医師法によって認められています。
例えば、不眠を訴える患者に睡眠薬を服用しすぎるのはよくないと判断した医師が、ビタミン剤を睡眠薬と偽って処方することができるのです。
実際に患者がビタミン剤でも眠ることができたなら、その医師は名医と呼べるかもしれませんね。
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー

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情報提供元: mocosuku

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