「胃のむかつき」いつものことだから大丈夫、じゃない!?
2017-03-13 18:30:32
執筆:吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
医療監修:株式会社とらうべ
「なんだか胃がムカムカする」という経験は、多くの人がお持ちでしょう。
なかには、「いつものこと」と思って市販薬で対処している人もいるかもしれません。
しかし胃のむかつきは、重大な病気の初期症状として現れている可能性もあり、注意が必要です。
ご一緒に詳しく見ていきましょう。
「胃のむかつき」とはどんな状態?
胃のむかつきとは、うまく消化されずに残った胃や十二指腸に残った食べ物が、胃酸と一緒に逆流してしまい、のどの奥や食道、胃の上部に不快感をもたらす状態のことを指します。
嘔吐の前触れとして現れることもあります。
通常、食べ物は口から食道、胃、十二指腸というように、一方向で流れていきます。
ところが、何らかの原因によって、胃の消化活動が低下すると、胃に食べ物が残ってしまい、むかつきの症状が現れることがあります。
胃の消化活動
胃で行われる消化活動は、大きく次の3つの働きによって行われています。
胃のむかつきは、これらのバランスが崩れ、胃の消化活動が低下することで起こります。
1.胃酸の分泌
食べ物を消化するために、胃酸を分泌する
2.胃の粘膜(胃粘膜)による保護
胃の内部を薄い粘膜が覆っていて、胃を胃酸から守っている
3.蠕動運動(ぜんどううんどう)
食べ物と胃が分泌する胃液を混ぜてドロドロにし、内容物を十二指腸へと運ぶ
胃の消化活動が低下すると、胃酸の分泌量が減ってしまったり、蠕動運動の低下や逆方向の蠕動運動(逆蠕動)が起こります。
すると胃に食べ物が残ってしまい、吐き気や胃のむかつきといった症状が現れるのです。
では、どんなことが胃のむかつきを引き起こす原因となるのでしょうか?
「胃のむかつき」の原因
胃のむかつきが現れる原因としては、次のものが挙げられます。
食べすぎ、飲みすぎ
脂の多い食事、香辛料などが含まれる刺激の多い食事などは、消化するのに時間がかかるため、胃の中にとどまる時間も長くなります。
また、アルコールを大量に摂取すると、胃酸と胃粘膜のバランスがくずれ、蠕動運動を遅らせるため、胃のむかつきの原因となります。
ストレス
私たちの身体には、交感神経と副交感神経という2つの自律神経があります。
これらには、さまざまな役割があり、消化活動とも大きく関係しています。ストレスを感じているときに優位に働く交感神経には、胃酸や胃粘膜の分泌を減少させる働きがあります。
そのため、過度にストレスを感じている状態が継続的に続くと、胃の消化機能にも影響を与え、胃のむかつきの原因となります。
喫煙
市販されているタバコの中には、血流を悪化させる作用が含まれているものがあります。
血流の悪化によって胃の粘膜に十分な酸素が送られなくなると、胃粘膜の抵抗が弱くなり、消化活動に影響をきたします。その結果、胃のむかつきなどの症状が現れることがあります。
加齢
加齢によって、胃酸や胃粘膜は減少し、また、蠕動運動も低下することが分かっています。
そのため、若いころと同じ量を食べても、胃のむかつきなどの症状が現れやすくなります。
女性ホルモンの変化
女性の場合、月経や妊娠にともなって女性ホルモンの分泌量が変化します。女性ホルモンのひとつ「プロゲステロン」は、排卵後から月経中にかけて分泌量が増えるホルモンです。
月経前や月経中に胃の不調を訴える方がいますが、これはプロゲステロンの影響と考えられています。
またプロゲステロンは、妊娠した場合も増加します。そのため、妊娠超初期や妊娠初期に、つわりとして、胃のむかつきなどの症状が現れる方もいます。
胃のむかつき…こんな病気の可能性も
胃のむかつきなどの症状が現れたとき、どのように対処していますか?
現在は、胃の不快感に効く市販薬が数多く販売されているため病院には行かず、市販薬で対処し、症状が治まるのを待つという方も多いことでしょう。
しかし胃の不調を放っておくと、病気の発症を見逃してしまう可能性があり、注意が必要です。
胃のむかつきの症状が現れる病気には次のようなものがあります。
胃炎
食生活の乱れやストレスなどによって、一時的に胃の粘膜に炎症が見られるものを「急性胃炎」といいます。
急性胃炎は、炎症を起こした原因を取り除けば数日で回復しますが、何度も炎症をくり返していると、胃粘膜が萎縮し、「慢性胃炎」となります。
上腹部の痛み、むかつき、胸やけ、吐き気、嘔吐などの症状が現れます。慢性胃炎の場合、ピロリ菌に感染している場合もあります。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍
胃酸の分泌が増えることで、胃酸によって胃の壁にただれがおこり、とくに空腹時に胃の痛みを引き起こす疾患です。
胃の痛みのほかに、胸やけ、胃のむかつき、食欲不振などの症状が現れることがあります。
十二指腸も同様のしくみで潰瘍が起こりますが、十二指腸の場合は、食後に痛みを訴える人が多いようです。
胃がん
胃の粘膜の細胞ががん化することで起こる病気です。リスク因子としては、食生活の乱れ、喫煙、ピロリ菌への感染が挙げられます。
胃がんは自覚症状が現れにくく、また、症状があったとしても胃潰瘍の症状と似ているため、がんとして自覚されにくい病気です。
このように、胃のむかつきなどの症状の裏には、治療が必要な病気が隠れていることもあります。
発見しにくい病気を見逃さないためには、症状が現れたときに「いつものこと」と決めつけないことが重要です。
頻繁に胃の不快な症状が現れているという方は、一度病院で検査を受けるようにしましょう。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
助産師・保健師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku