「えっ…」もしかして、アブナイ? 認知症のサインとは
2017-03-20 18:30:15
執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
認知症患者数は、超高齢社会が進むにつれて急増しています。
国民の10人に1人が認知症という事態も迫っています。
おもに加齢によって脳が壊れることで生じる認知症。できるだけ早期発見・早期対応することによって進行を緩やかにするようにと叫ばれています。
早い段階で認知症のサインはキャッチできるのでしょうか。
認知症とは
「健常な成人になった人が病気や事故で脳をこわし、知的な能力の低下を招いて、一人で暮らしていくことが難しくなった状態」が認知症です。
60歳代後半から有病率が増加し、80代後半では約41%、90代で約61%と「加齢による病い」の側面は否めません。
ところで、認知症の原因は多数あって、一つの病気ではありませんが、日本ではアルツハイマー型認知症が約6割、血管性認知症がおよそ2割と多数を占めています。
アルツハイマー型認知症は、原因不明で脳の神経細胞が徐々に衰える「脳変性疾患」、脳血管性認知症は、脳血管障害や脳炎など、「脳の病気や障害の後遺症」から発症します。
また、アルツハイマー型認知症の3割ほどに、脳血管障害を合併した「混合型認知症」が診られます。
認知症の症状には、中核症状とBPSD(行動・心理症状)とがあります。中核症状は脳の障害が原因で、記憶障害、注意力の低下、実行機能障害、言語障害、見当識障害、病識の欠如などが現れます。
BPSDは患者さん個々の体調や生活環境に影響されて出てきます。
もの盗られ妄想、睡眠障害、抑うつ、徘徊、逸脱行為、介護拒否、多動、落ち着かなさ、せん妄、などが現れます。
認知症の治療と予防:早期対応の必要性
認知症の大半を占めるアルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型などの認知症は、現在、完治させる治療法は見つかっていません。
症状は比較的ゆっくりと進行していくので、症状の進行を遅らせたり軽くしたりする対症療法と、介護などのケアがメインとなっています。
それでも、早い段階で見つけて治療に取りかかることによって、症状の改善や効果的な対症療法ができることがわかっています。
専門医への早期受診が奨励されており、「もの忘れ外来」「認知症外来」あるいは、「神経内科」や「老年内科」があります。
また、予防因子として、「生活習慣の改善」「運動・趣味・各種アクティビティ」「積極的なかかわりや人間関係」が挙げられています。
日常生活における認知症のサイン
早期発見・対応のために、日常生活で注意したい「認知症の危険信号」が挙げられています。
認知症の専門医・朝田隆医師は、次のような行動が複数みられる場合、また、くり返される場合は早めに専門医を受診するようすすめています。
・何回も同じことを聞いたり、話したりする
・しまい忘れや置き忘れが目立つ
・冷蔵庫に同じ食材がいくつも入っている(同じものをいくつも買いだめしている)
・冷蔵庫に入れるはずのないものが入っている
・日にちや曜日、月や季節を間違えることがある
・以前よりも調理に時間がかかり、同じ料理ばかり作るようになる
・鍋を火にかけていることを忘れ、鍋を焦がすことがよくある
・子どもや孫の名前を混同する
・約束の時間や待ち合わせの場所をよく間違える、または忘れる
・朝、話したことを午後には忘れている
・趣味や好きだったことに興味や関心を示さなくなった
・会話がかみ合わない、話が通じない
(参照:朝田隆監修『ウルトラ図解 認知症』法研、2016.による)
もちろん、症状の現われかたにムラがあったり、何となく症状が出ているのでわかりにくいこともあります。
また、家族には症状がよく現われるのに、外で他人と会うと、シャキッとしていることもあります。
さらに加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れは、素人には見分けが難しいということもあります。
しかし、認知症が進行してくると上に挙げた症状がハッキリと増えてきますので、家族など周囲の人たちはよく見ていて、気がついたら早めに対応することを話し合ってみてください。
軽度認知障害を見つける
認知症と正常な状態との「グレーゾーン」を「軽度認知障害(MCI)」と呼んでいます。
朝田医師はこれを「あきらかに“歳のせい”とはちがう記憶障害がみられるけれど、日常生活に大きな支障はきたしていない」とみなしています。
これまでの研究で、MCIと診断された後、1年後に認知症を発症するのは約10%、4年間では半数ほどでした。
また5年後も症状が進行しない割合が30%程度、症状が改善したり正常に戻ったりする人も20%くらい見られました。
ですから、MCIの段階で適切な治療や予防を講じれば、進行を遅らせたり、症状を改善したりすることも可能になるでしょう。
MCIは病院で検査してもらいますが、これもまた、早期発見のための「サイン」を見つける方法といえるでしょう。
【参考】
朝田隆監修『ウルトラ図解 認知症』法研、2016.
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku