下半身は冷えているのに、上半身はのぼせる!?「冷えのぼせ」
2017-04-25 18:30:37
執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
医療監修:株式会社とらうべ
「冷えのぼせ」とい言葉、聞いたことはありますか?
「冷えのぼせ」は名前のとおり、「冷え」と「のぼせ」が一緒に現れる症状のことを指します。
相反するように見えるこの2つの症状、なぜ一緒に現れるのでしょうか?
今回は、この「冷えのぼせ」について解説していきます。
冷えのぼせを引き起こす「下半身型冷え性」
冷えのぼせは、下半身は冷えているのに、上半身はのぼせてしまう症状のことを指します。
冷えのぼせは、「下半身型冷え性」の症状として現れるため、まずは下半身型冷え性について説明しましょう。
「冷え性」には、手足などだけが冷える「四肢末端冷え性」や、身体の表面は温かいのに内臓が冷える「内蔵型冷え性」、全身が冷える「全身型冷え性」など、いくつかのタイプに分けられます。
下半身型冷え性もそのひとつで、次のような特徴があります。
・腰から下が冷える
・顔や上半身にはほてりやのぼせの症状が現れることが多い
・男女ともに中高年に多い
・腰部、臀部(でんぶ)などに問題がある(例:腰痛を持っている)
下半身型冷え性の場合、下半身は冷えていますが、体温を上げるために必要な熱量は普通の人と同程度です。
そのため、全身の血流が上半身にだけ偏ってしまい、体温も上半身は高く、下半身は低い状態、つまり、「冷えのぼせ」の症状が起こることがあります。
冷えのぼせによって身体にさまざまな不調が
冷えやのぼせは、体温にかかわる症状です。
ヒトの体温調節には、自律神経の働きが関係しています。
自律神経には、活動時に優位に働く「交感神経」とリラックス時に働く「副交感神経」という2つの神経系があります。
私たちの身体が「寒い」と感じた時には、交感神経が優位に働いて血管を収縮させたり、筋肉をブルブルと震わせたりして、体の熱を外へ逃がさないようにします。
反対に、暑い時には副交感神経が働いて血管を拡張させたり、発汗を促して熱を外へ逃がそうとします。
このように、体温調節には自律神経がかかわっているため、上半身はのぼせ、下半身は冷えるといった冷えのぼせの症状が続くと、体温にかかわっている自律神経のバランスも崩れてしまいます。
自律神経は、体温だけでなく、心身のさまざまな機能の調節に影響を与えています。
そのため、冷えのぼせによる自律神経の乱れは、次のような症状を引き起こす可能性があります。
頭痛
肩こり
腹痛
睡眠障害(寝付けない、途中で目が覚める、熟睡できないなど)
イライラ、不安感などの精神的症状
また、下半身の血流不足や冷えによって、足のむくみや月経痛などの婦人科系の症状(女性の場合)に悩まされることもあります。
では、冷えのぼせが疑われるとき、どのように対処すればよいのでしょうか?
冷えのぼせにはどう対処すればいいの?
下半身が冷える場合、足元を温めるといった対処法を行いたくなりがちですが、冷えのぼせの場合、かえって上半身の血流だけが良くなってしまい、症状が悪化する可能性があります。
そのため、次のような対処法をおすすめします。
腰やおしり、ふくらはぎの筋肉をほぐす
下半身型冷え性は、腰部や臀部の筋肉(とくに「梨状筋(りじょうきん)」)にコリや拘縮(こうしゅく;関節の可動域が制限されている状態)があり、交感神経を含む坐骨神経が圧迫されて、下半身に血流が届かなくなってしまっていることが原因と考えられています。
そのため、運動などを行って筋肉をよく動かし、柔らかくする必要があります。
とくに効果的といわれているのがウォーキング。
ウォーキングをおこなうときは、ただ歩くのではなく、大股で歩き、腰やおしりの筋肉をよく動かすように意識しましょう。
また、ふくらはぎの筋肉が硬くなっていることが原因の場合もあるので、足や足の指をストレッチするのもよいでしょう。
ただし、下半身の冷えだけでなく、痛みがあるときには、動脈硬化による血流障害や坐骨神経症などの整形外科疾患が原因となっている可能性があるので、まずは病院を受診しましょう。
自律神経のバランスを整える
先ほどもお伝えしたように、冷えのぼせは自律神経にも影響を与えています。
そのため、自律神経のバランスを整え、身体の体温調節機能がしっかり行われるようにすることも、冷えのぼせやそれにともなう不調を悪化させないためには大切なことです。
自律神経のバランスを整えるためには、ストレスをためないことが重要です。
リラックスできる時間を作ったり、疲れをためすぎないようにしましょう。
【参考】
・伊藤剛『図解 いちばんわかる!東洋医学のきほん帳』、学研パブリッシング、2014年。
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku