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5月12日は「慢性疲労症候群」世界啓発デー、どういう病気かご存じですか。

2017-05-12 18:30:47


執筆:吉村 佑奈(助産師・保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ

「慢性疲労症候群」という名前を聞いたことはありますか?
「慢性的な疲労なら、だれにだってあるでしょう?」と思われるかもしれません。
しかし、慢性疲労症候群と慢性的な疲労は全く違います。
そこで、今回はあまり知られていない、この慢性疲労症候群について解説していきます。

慢性疲労症候群は新しい概念


それまで健康に過ごしていたにもかかわらず、ある日突然、原因不明の強い倦怠感や疲労感に襲われ、また、それに伴うさまざまな症状によって日常生活に支障をきたすものを「慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome; CFS)」といいます。
慢性疲労症候群は比較的新しい概念です。
1988年、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が病態を解明するために、慢性疲労症候群の基準を発表したのが最初でした。
その後、これをもとに世界各国で慢性疲労症候群のケースが報告されるようになりました。
日本では、1991年に研究班が発足され、さまざまな研究が行われています。
では、慢性疲労症候群ではどのような症状が現れるのでしょうか。

慢性疲労症候群:慢性的な疲労とどう違う?


倦怠感や疲労感に伴い、次のような多様な症状が現れます。


  • ・発熱

  • ・リンパ節腫大

  • ・のどの痛み

  • ・頭痛

  • ・筋肉痛や関節痛

  • ・脱力感

  • ・睡眠障害

  • ・思考力の低下

  • ・抑うつや不安



休息などによって症状が軽減される「慢性的な疲労」とは違い、慢性疲労症候群になると、上記の症状が長期間(診断基準では6カ月以上)にわたって継続し、日常生活や職業生活を送るのが困難になります。
ひどい場合には、寝たきりの状態になることもあります。
では、どうして慢性疲労症候群の症状が現れるのか、そのメカニズムについてみていきましょう。

慢性疲労症候群は脳や神経の機能異常


慢性疲労症候群は、脳や神経の異常と考えられています。
免疫力が低下してしまい、再活性化したウィルスから身体を守るために作られたサイトカイン(免疫細胞から作られるたんぱく質)が、脳や神経の機能異常を起こさせているのではないか、といわれているのです。
そして、免疫力低下に影響を与えていると考えられているのが、ストレスと遺伝的要因です。

ストレス


慢性疲労症候群の患者は、ライフイベントや人間関係によるストレスを感じやすいことがわかっています。
また、ストレスに対する感受性が高く、些細なことを気にしやすかったり、完璧主義の傾向があることも明らかになりました。
ほかにも、肉体的なストレス、紫外線や騒音といった物理的なストレス、農薬などの化学的ストレス、ウィルスへの感染といった生物学的ストレスも発症に関係していると考えられています。

遺伝的要因


これまでの研究によると、慢性疲労症候群患者と健常者では、気分を安定させる働きを持つ神経伝達物質「セロトニン」の代謝にかかわる遺伝子の型が異なることがわかりました。
この型の違いによって、ストレスへの感受性が高くなると考えられています。
こうしたストレスや遺伝的要因によって、免疫系や神経系、内分泌系に変調をきたし、脳や神経の機能異常が起こると考えらえているのです。
このようなメカニズムを見ても、慢性疲労症候群がただの疲労と違うことがわかりますね。

慢性疲労症候群は治るの?


慢性慰労症候群の治療として、向精神薬(SSRI、抗うつ薬、抗不安薬など)や漢方薬などによる薬物療法、抗酸化療法(ビタミンCやコエンザイムQ10の投与など)、認知行動療法などの精神療法などが行われています。
ただ、治療法に関する研究も現在行われているところで、治療法が確立されていないのが現状です。
実際に、慢性疲労症候群患者の1/4分の方は、このような治療法の効果がみられずに、日中も起き上がることができずに、生活介護を必要とすることもあるようです。

今後の課題


これまでお伝えしてきたように、慢性疲労症候群は比較的新しい概念であり、明らかになっていないことも多々あります。
それに加えて、「慢性疲労症候群」という名前から、「疲れているだけ」などと誤解を受けやすいことも患者を苦しませる要因のひとつです。
呼び名に関しては、近年見直しが行われ、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」という名前が用いられるようになっていますが、まだ世間での認知度が低いのが現状です。
そのため、今後いっそうの研究が求められるとともに、正しい理解が進むことが今後の課題といえるでしょう。
【参考】
・『慢性疲労の陥るメカニズム,環境要因,遺伝的背景』(http://www.fuksi-kagk-u.ac.jp/guide/efforts/research/kuratsune/pdf/2008chiryoub.pdf)
・「慢性疲労症候群に対する治療法の開発と治療ガイドラインの作成」研究班 HP(http://www.fuksi-kagk-u.ac.jp/guide/efforts/research/kuratsune/index.html)
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
助産師・保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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