ただの肥満ではない、治療が必要な「肥満症」について
2017-06-15 18:30:46
執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー)
医療監修:株式会社とらうべ
平成27年度の国民健康・栄養調査によると、男性の3割、女性の2割が肥満に該当します。
肥満というと、「なんとなく良くない」と思う方も少なくないでしょう。
しかし単なる肥満とは違い、「肥満症」には健康を害するリスクがあることをご存じでしょうか?
「太っている」とはどういうことなのか、肥満症のリスクや予防法とあわせて紹介します。
肥満と肥満症の違い
「肥満」は脂肪が多い状態で、病気ではありません。肥満であるかどうかは体脂肪量によって決まります。
実際には、体脂肪量を正しく測る簡単な方法がないため、指標としてBMI(体格指数)が広く用いられています。
日本では、日本肥満学会が定義した基準で、BMI25以上を肥満としています。
一方で肥満症とは、肥満に起因、関連する健康障害を有する場合、もしくは、そうした健康障害を起こすリスクの高い内臓脂肪が過剰に蓄積した場合で、減量による治療を必要とする状態を言います。
具体的には、次の状態を指します。
「肥満に起因、関連する健康障害を有する場合」とは
糖尿病、耐糖能障害、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患、脳梗塞、脂肪肝、月経異常及び妊娠合併症、睡眠時無呼吸症候群、整形外科的疾患、肥満関連腎臓病など。
「内臓脂肪が過剰に蓄積した場合」とは
腹部CTにより測定した内臓脂肪面積が100㎠以上の内臓脂肪型肥満。
しかし、CT検査は気軽にできる検査ではないため、まずスクリーニングとして、へそまわり(腹囲)を測定します。
その結果、男性85cm以上、女性90cm以上のときに内臓脂肪型肥満が疑われ、腹部CTスキャンによる確定診断が行われます。
先に述べたように、肥満は病気ではありません。一方、肥満症は病気であり、治療が必要とされます。
肥満症の治療法
実は、病気が原因で肥満が起こることもあります。これを「二次性肥満」と呼びます。
クッシング症候群などの内分泌性肥満、薬物使用による薬剤性肥満、視床下部の腫瘍などによる視床下部性肥満、遺伝性疾患に伴う遺伝性肥満などがあります。二次性肥満の場合は、もとの病気を治療することが優先されます。
一方、二次性肥満の疑いがない場合には、まずは減量に取り組むことになります。
日本で減量による治療を行う場合は、食事療法や運動療法によって生活習慣の改善を図ります。
海外では薬物療法や外科的療法も行われていますが、日本ではこれらの治療法はほとんど用いられていません。では、具体的にどのように食事療法や運動療法を行うのでしょうか。
減量による治療:食事療法と運動療法
減量をするためには、摂取エネルギーが消費エネルギーを下回ることが必要です。
このような状態になると、身体は不足しているエネルギーを過剰な脂肪を燃やすことで補おうとします。その結果、減量につながります。
食事療法では、エネルギーを適正な量に抑え、脂肪が燃えやすいように炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルをそろえるよう心がけます。
また、極端に食事を減らしてしまうと、身体は生命を守ろうとエコモードになり、エネルギーを消費しないようになります。エネルギーを消費しないということは、食事を減らしても体重が減らない状態に陥るということです。
これが、停滞期です。
このような極端な減量は、リバウンドにもつながります。そこで、適度な食事制限をしながら、運動を行うことが重要になります。
食事や運動などの生活習慣の改善は、自分で取り組める身近なものです。
けれど、「肥満症」と診断され、治療として減量を行う場合には、主治医の指示に従う必要があります。
無理な食事制限や過度な運動は、併せ持つ病気を悪化させてしまうことがあり、自己流で行うことは危険をともないます。
肥満症を予防するには?
肥満症にならないためには、体脂肪を増やさない生活を心がけることが大切です。
次のことに気をつけましょう。
定期的に体重を測りましょう
過去に行われた研究(※)では、20歳以降の体重の変化と、糖尿病に罹るリスクの関連について調査が行われました。
糖尿病は、内臓脂肪が原因となり起こる疾患の代表格です。
調査の結果、20歳以降の体重増加量が2キログラム未満の人に比べて、6~10キログラム増加した人の糖尿病の発症率は2.3倍、10キログラム以上増加したい人の発症率は、3.09倍であることが示されました。
しばらく測っていないと、2~3キロの増減は珍しくないかもしれません。しかし、その積み重ねが大きな体重増加につながり、戻すことが大変になってしまいます。
まずは、定期的に体重を測り、「増えていたら少し気をつける」を繰り返すことが体重増加や肥満症の予防になります。
(※出典:Diabetes Research and Clinical Practice [27 Sep 2013, 102(2):138-146] Long-term weight change in adulthood and incident diabetes mellitus: MY Health Up Study.)
バランスの良い食事を心がけましょう
身体を作り動かすためには、食事を制限するよりも上手に摂ることが大切です。
1回の食事で主食(ご飯やパン、麺類など)、主菜(魚や肉、大豆製品、卵など)、副菜(野菜や海草、きのこ、果物)をそろえることを心がけましょう。
適度な運動を習慣づけましょう
適度な運動とはどの程度を指すのでしょうか。年齢別に説明します。
・18-64歳
歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分以上行い、これに加えて、息が弾み汗をかく程度の運動を毎週60分行うことを目安としましょう。
・65歳以上
身体活動を毎日40分行うことを目安とします。強度は問わず、横になったままや座ったままでければ、どんな動きでもかまいません。
肥満症の予防は日々の積み重ねから。
まずは自分のできる習慣を見つけて実行してみてください。
<執筆者プロフィール>
山本 ともよ(やまもと・ともよ)
管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー。
株式会社 とらうべ 社員。企業で働く人の食と健康指導。糖尿病など疾病をもった人の食生活指導など活動中
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
関連記事
情報提供元: mocosuku