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「コーラを飲むと歯が溶ける」は本当?

2017-08-12 18:30:52


執筆:影向 美樹(歯科医師)
「コーラを飲むと歯が溶ける」という噂を耳にしたことがありませんか?
その真偽もさることながら、そもそもなぜコーラなのか、さらにコーラ以外の飲み物は問題ないのかも気になるところです。
今回はコーラを含めた市販飲料が、歯にどのような影響を及ぼすのかについてご紹介したいと思います。

「コーラで歯が溶ける」の真実は?


「コーラで歯が溶ける」と言われる理由は2つあります。
まず1つは、コーラの酸性度です。歯はカルシウムが主成分であるため、基本的に酸に弱い性質を持っています。酸性度を表す指標にpH(数値が小さいほど酸が強い)がありますが、歯が溶け始めるのはこのpHが5.5以下になったときです。
一方のコーラのpHは2.4で酸性度が強く、歯が溶け始める臨界pHの5.5を大きく下回ります。
この点がまずコーラが歯を溶かすと言われる要因と考えられます。
ただ、歯が酸によって溶かされるには時間が必要です。例えばコーラの中に歯を1週間ほど浸しておけば、歯は確実に溶けてしまうでしょう。
しかし実際に口の中でそれほどの長い時間コーラを含み続けることはありません。
コーラで歯が溶けると言われるもう1つの理由は、コーラに含まれる糖分です。コーラには虫歯の原因となる糖が多く含まれているため、長期間にわたって飲み続けると、虫歯のリスクが高くなる可能性があります。
つまりコーラによって虫歯になることが「歯が溶ける」という表現になっていると考えられます。
このようにコーラで歯が溶けるという話は、あながちウソとも言い切れません。しかし虫歯に関して言えば、コーラのみならず糖を含むものであれば虫歯になるリスクは同じです。
また酸による影響は、他の炭酸飲料でも同じことが言えます。つまりコーラに限らず、どの炭酸飲料でも歯に及ぼす影響は同等なのです。

炭酸飲料以外にも気を付けたい飲み物


糖分を多く含む飲み物は、虫歯になるリスクを高くします。ただ炭酸飲料は糖類だけでなく、酸による歯へのダメージも無視することはできません。
そして酸性度の高い飲み物は炭酸飲料以外にもあります。
近年は健康志向の高まりによって、様々な健康飲料が販売されていますが、それらの中にも酸性度の強い飲み物があるため注意しましょう。

乳酸菌飲料


乳酸菌飲料は腸内環境を整えることで便秘の予防に効果があるほか、近年では免疫力を高める効果も注目されています。ただ乳酸菌飲料のpHは3~4と比較的酸性度が高く、糖分も多く含まれています。

食酢


お酢は昔から体に良い健康食として親しまれており、近年では黒酢やリンゴ酢などのお酢系飲料を疲労回復やダイエットなどを目的として愛飲する方も多いようです。
しかしこのお酢も「酢酸(さくさん)」という酸の一種で、pH2~3と酸性度が高い食品です。したがって健康に良いからと頻繁に口にすると、歯に対するダメージが大きくなります。

スポーツドリンク


市販飲料の中でも盲点となりがちなのがスポーツドリンクです。スポーツドリンクにはアミノ酸やビタミンC、クエン酸などが含まれるためpHも3~4と酸性度が高く、さらに糖を多く含みます。
特に注意すべきなのは、水分補給を目的に小さな子供に与えてしまうケースです。
乳歯は永久歯と比べて歯質が弱く、永久歯よりも酸のダメージを強く受けます。
発熱時やスポーツ後など、たまに飲ませる程度であれば問題はありませんが、日常の水分補給としてスポーツドリンクを子供に与えることはあまりお勧めできません。

肝心なのはダラダラ飲まないこと


市販飲料の中には、コーラ以外にも歯にダメージを与えやすいものが多く存在しています。特に健康飲料のなかには、酸を含むものが多いため注意が必要です。
ただし、これらの飲料が直ちに歯に悪い影響を及ぼすわけではありません。
1番問題なのは、これらの飲料を時間も決めずにダラダラ飲み続けることです。
したがって糖類や酸を含む飲料を飲む場合は、飲む時間や飲む量を定め、飲んだ後は口をゆすぐ、歯を磨くなど心がけましょう。
【参考文献】
・酸蝕症の病態と臨床対応 日本補綴学会誌 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajps/7/2/7_142/_pdf)
・飲料の酸性度 東京都福祉保健局 (http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/anzen_info/others/metal/inryou.html)
<執筆者プロフィール>
影向 美樹(ようこう・みき)
歯科医師。歯科医師免許取得後、横浜と京都の歯科医院にて勤務を経て、現在は医療系ライターとして活動中

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情報提供元: mocosuku

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