女性ならではのお悩み…? なぜ月経前には甘いものが食べたくなる?
2017-11-08 18:30:42
執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
医療監修:株式会社とらうべ
女性のみなさん、月経前になると、無性に甘いものが食べたくなることはありませんか?
どうして、このような現象が起こるのでしょうか?
今回は月経前のカラダの変化に着目し、甘いものが食べたくなるメカニズムを探っていきましょう。
月経前に起こるカラダの変化
女性ホルモンのバランスは、月経周期にあわせて変化しています。
なかでも、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の分泌量は大きく変わります。
エストロゲンには、妊娠に向けて子宮内膜を厚くする、基礎体温を下げる、女性らしさを保つ、骨の健康を保つ、動脈硬化を予防するなどの作用があります。
おもに月経から排卵期にかけて分泌量が増加します。
一方、プロゲステロンには、妊娠しやすい状態に子宮内膜の状態を整える、基礎体温を上げる、脂肪や水分を蓄えるなどの働きがあります。
おもに排卵後から月経前にかけて分泌量が増加します。
このように、両者は月経周期によって大きく変化するのです。
しかし、この変化は女性にとってさまざまな不調をもたらすことがあります。
その症状には個人差がありますが、「イライラやのぼせ、下腹部膨満感、下腹痛、腰痛、頭重感、怒りっぽくなる、頭痛、乳房痛、落ち着きがない、憂鬱…の順に多い」といわれています(日本産婦人科学会「診療ガイドライン外来編2014」より)。
「月経前3~10日前から起こり月経が始まると治まる(あるいはなくなる)」、このような症状は、「月経前症候群(Premenstrual Syndrome、以下PMS)と呼ばれています。
PMSの原因については諸説あり、はっきりしたことはわかっていません。
しかしながら、日本産婦人科学会のガイドラインによると、プロゲステロンが関係していることは間違いないとされています。
そして、このプロゲステロンの分泌量の変化は、食べ物の嗜好にも影響を及ぼします。
具体的にみていきましょう。
月経前に甘いものが食べたくなる理由
先に述べたように、プロゲステロンにはさまざまな作用があり、「インスリン」というホルモンにも影響を与えています。
インスリンは、血液中の糖の濃度(血糖値)を一定に保つ働きを持つホルモンですが、プロゲステロンの増加は、インスリン抵抗性(インスリンの効きを悪くする作用)を高めてしまいます。
通常、私たちが食事を摂ると、膵臓からインスリンが分泌され、血糖値を下げようとします。
しかし、月経前にプロゲステロンの分泌量が増えインスリンの効きが悪くなると、膵臓はより多くのインスリンを分泌し血糖値を一定に保とうとするのです。
その結果、インスリンの分泌量が過剰になり、血糖値が急に下がりすぎてしまうことがあります。
そうすると、血糖値を上げようとする反動が起こり、甘いものが食べたくて仕方がなくなる、落ち着かなくなる、などの症状が現れることがわかっています。
このように、月経前に甘いものが食べたくなる理由は、プロゲステロンやそれに影響を受けるインスリンの分泌が関係しているのです。
「甘いものが食べたくて仕方ない」という状態にしない方法
お伝えしてきましたように、月経前の血糖値の急降下は、プロゲステロンの働きにより血糖値が高くなりやすいことが原因です。
ですから、「甘いものが食べたくて仕方がない」という状態にしないためには、血糖値を一定に保ち、急激な血糖値の低下を防ぐことが必要です。
ポイントは、食事の仕方や内容の見直しで、バランスのとれた食事をすること、よく噛んで食べることが大切です。
加えて、次のことを意識してみるとよいでしょう。
食べる順番に気をつける
血糖値が上がりにくい野菜などの副菜を先に食べる、その後、たんぱく質、炭水化物という順番で食事をすると、血糖値の急上昇を抑えられるといわれています。
規則正しい時間に食事を摂り、欠食をしない
食事を摂らない時間が長くなると、次の食事のときに、血糖値が急激に上昇しやすくなります。
とくに、月経前は水分や脂肪をためやすく、体重が増加しやすい時期ですから、体重や体型を気にする女性の中には、食事の回数を減らしてしまう方もいるかもしれません。
ところが、このような行為はかえって血糖値を上昇しやすくし、甘いものを欲する原因にもなります。
欠食をせず、規則正しい食事を心がけましょう。
間食したいときは血糖値が上がりにくい食品を選ぶ
甘いお菓子やジュースは血糖値を上げやすくします。
そうは言っても、イライラしやすい月経前に我慢をすると、かえってストレスが溜まってしまいますよね。
そこで、間食したいときには、血糖値が上がりにくいナッツ類やチーズ、無糖のヨーグルトなどを選びましょう。
また、「低GI食品」を謳っている製品などもありますので、これらを取り入れてもよいでしょう。
【参考】
・日本産婦人科学会「診療ガイドライン-婦人科外来編2014」http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2014.pdf
・クリニック・ハイジーア「女性を悩ませる低血糖症」
http://pms-hygeia.jp/contents/mechanism/10.html
・クリニック・ハイジーア「機能性低血糖症を予防する食べ方」
http://pms-hygeia.jp/contents/selfcare/32.html
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku