正座をすると、どうして足はしびれるの?
2018-01-14 18:30:40
執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
昨今は生活様式の洋式化が進み、畳の上で過ごす時間は減少しています。
そして、日本伝統の座り方である「正座」をする機会も少なくなっているようです。
ですから、たまに法事などで正座をすると、足がしびれて痛かった、困った、恥ずかしかった…という話をよく聞きます。
どうして正座をすると足がしびれるのでしょうか?
今回は、正座による足のしびれの原因や対処法についてお話します。
正座とは
正座は日本の伝統的な座り方です。
正しい姿勢で座る、という意味から「正座」といいます。
膝を前にそろえてたたんだ屈膝座法(くっしつざほう)で、背筋を伸ばして座ります。
基本形は、両足をそろえて膝を折りたたみ、かかとの上にお尻をのせる状態で、このとき、足首がまっすぐになり、足の甲がたたみや床についている座り方です。
和式の生活様式や武道などのお作法で、ちょっとかしこまったシーンでよく見かける姿勢(座法)ですが、洋式の生活が浸透し、あまりする機会がなくなってきているようです。
正座は、腰から上は身体にとってやさしい座り方といわれます。
しかし、長時間になると、足がしびれる、膝や足首に負担がかかるなど、身体面での問題もでてきます。
正座で足がしびれる理由
正座は、膝や足首に体重がかかりますので、一部の神経や血管が圧迫されて足がしびれます。
総腓骨神経が圧迫される
膝外側には「弁慶の泣き所」で有名な腓骨(ひこつ)があり、そのすぐ側を総腓骨神経が通っています。
一般に神経は損傷を回避するよる体内深部を通っていることが多いのですが、表面の近くを通る神経もあり、総腓骨神経はそんな神経の一つです。
皮膚表面に近いと、圧迫されやすく、しびれが生じる原因となります。
足背動脈が圧迫される
足の甲側の足首の真ん中辺に足背(そくはい)動脈が通っていますが、正座によってこの動脈が圧迫されると血行不良を起こし、しびれの原因となります。
このように、神経や血管が圧迫されて、末梢神経の機能が低下し、末梢神経の異常を知らせる電流が流れて「しびれ」を感じるのです。
足のしびれはいわば、「このままだと神経機能が低下し、無感覚状態になるよ」という警告の意味をもつ「生体の防御反応」といえるでしょう。
足のしびれを防ぐ対策
「正座は身体にとって最高のストレッチ」という説もあり、正しい正座をしているとさほど足に負担はかからないといわれています。
とは言え、日常的に正座をする習慣がない方は、しびれ防止策として次のような点に留意してみましょう。
背筋を丸めて体重を足にかけていないか
背筋が丸まっていると足の甲とふくらはぎに全体重が乗ってしまい、しびれが生じやすくなりますので、負担を分散させる工夫をしましょう。
・背筋を伸ばして、背筋にも負担をかける
・腰を入れて重心をやや前におくことで、腹筋にも負担をかける
・お尻を持ち上げるようなイメージで、足にドッカリ乗せてしまわない
両足が平行になっていないか
つま先や甲を重ねると、両足が平行にならず下半身のしびれ防止になります。
左右の足が平行になるように正座をすると、かかとにお尻がのって全体重がかかります。
また、この姿勢だと足首がもっとも伸びた状態で血流にもよくありません。
・足を平行にしないで、つま先や甲を重ねる
・膝をぴったりとくっつけないで、ほんの少し外向きに開く
重心が一点に集中し続けていないか
体重をかける場所をときどき変更すると、足への負担を分散できます。
正座をしながら、ときどき足を動かしてみましょう。
・お尻を片方の足の上に置く
・重心を移動して、交互に足を楽にしてやる
跪坐(きざ)のすすめ
しかし、周囲の目が気になって我慢するほかない、いろいろな努力はしてみたもののしびれてしまった、というようなときのために、「跪坐(ぎざ)」という座り方をご紹介します。
これは、膝をついて、つま先を立てるという座り方です。
立てたつま先に力を入れることで、しびれからの回復を早める効果も期待できます。
正しい正座ではありませんが、足を投げ出したり、しびれて倒れてしまったりするよりは、ずっと格好がよい対処法だと思います。
【参考】
矢田部英正『日本人の座り方』(集英社新書 2011年)
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku