E START

E START トップページ > エンタメ > マガジン > 患者の人生を守る——高精度の内視鏡検査で病気の早期発見・早期治療の機会を届けたい

患者の人生を守る——高精度の内視鏡検査で病気の早期発見・早期治療の機会を届けたい

2025-12-23 12:00:14

がん研有明病院(以下、がん研)で、消化器内科の診察や上部・下部消化管内視鏡検査および治療に携わってきた渡海義隆院長。2024年6月に独立し、半蔵門渡海消化器・内視鏡クリニックを開業した。渡海氏が目指すのは、「安心して内視鏡検査を受けられる環境づくり」と「精度の高い診断」の実現。患者が不安を感じることなく高精度の内視鏡検査を受けるために、渡海氏はどのような取り組みを行っているのか。

いかに病変を見逃さずに早期治療につなげるか、治療方針を左右する内視鏡診療の重要性 

研修医時代、内視鏡医学の奥深さを知りました。がんの治療方針を決める際には「深達度」を考慮しなければなりません。がんの深達度は臓器の壁に、どの程度深くがんが入り込んでいるかで決まります。外科手術か内視鏡治療を行うかを決めるには、内視鏡検査による正確な深達度の診断が不可欠です。指導医のもとで技術や知識を身につける中で、内視鏡検査に大きなやりがいを感じるようになりました。

初期段階でがんを発見するのは難しいものです。がん研に勤務していた頃、定期的に内視鏡検査を受けていたにもかかわらず、進行したがんが発見されて紹介される患者さんを数多く診てきました。複雑な形状のがんであっても、早期に発見できれば内視鏡で切除することが可能です。しかし、深達度を診断した時点で内視鏡治療ができないケースも多くあります。「がんが進行して手術になる患者さんを減らしたい」との思いが強くなりました。

がん研で内視鏡診療に携わる中で考えていたのは、「患者さんに身近な場所で、がん研と同等の内視鏡診療を提供できないか」でした。がん研のような大規模病院では、患者さんと長年関わっていくことができません。治療後は元の病院やクリニックに戻るため、つながりが途切れてしまうことへの寂しさを感じていました。患者さんが気軽に相談できる安心感と、病気を早期発見できる高精度の内視鏡診療の両立を模索する中、地域に根ざしたクリニックであれば実現可能と考えて開院に至りました。

「怖い」「つらい」を感じさせない、患者が緊張せず内視鏡検査を受けられる環境づくり

内視鏡検査を「患者さんの人生を守る検査」だと考えています。便潜血陽性※1の男性の内視鏡検査を担当したことがあります。異常はなく、男性と奥様に検査結果を伝えると、奥様が「良かった」と涙を流されました。その様子を見て、私たち医師は患者さんとご家族の思いや人生を背負う責任があると強く認識しました。

内視鏡検査に苦手意識を持つ方は多いです。「怖くない」「つらくない」「また受けたい」と思っていただける内視鏡検査と院内環境を提供するのが使命だと考えています。現在、内視鏡検査で鎮静剤を活用する医療機関が増えています。鎮静剤や苦痛の少ない挿入方法を駆使することで、患者さんへ負担をかけずに内視鏡検査を行えるようになりました。

内視鏡検査の精度を高めるには、病変を見つける知識や技術だけでなく機器も重要です。最新のカメラの方が画質も良く、病変を発見しやすくなります。検査がつらい患者さんには、鎮静剤を使用します。鎮静剤を使用すれば眠った状態、もしくは意識があっても「何か行われているな」ぐらいの状態で検査が可能です。鎮静剤を使用できない方には鼻から挿入する「経鼻内視鏡」を使うこともあります。

患者さんの緊張を和らげるために大切にしているのは、コミュニケーションや院内の雰囲気づくりです。医師やスタッフが難しい顔をしていたら患者さんも不安になるので、笑顔を心がけています。患者さんがリラックスできるように、表情や言葉遣い、態度に気を付けています。

※1 便に血が混じっている状態

地域の人たちが安心して受診できる、“温かい”内視鏡クリニックを目指す

私が目指しているのは、地域の方々にとって「安心して内視鏡診療を任せられる」と思っていただけるクリニックです。実現には、「診断の質」を高める必要があります。診断の質を高めるには、日々の勉強が欠かせません。がん研に勤務していた頃は、多くの症例に触れる機会がありました。開院後は、がん研勤務時代ほど症例を診る機会がなくなり、診断力の低下を危惧することもあります。積極的に知識を更新する必要があると考えています。

内視鏡診療では、いかに早い段階で病変を発見し、初期段階で治療へつなげられるかが鍵です。当クリニックはがん研と提携しており、がんが見つかった際には、検査から手術までを迅速に連携できる体制を整えています。特に進行がんと診断された場合には、一刻も早い受診と治療が重要です。

患者さんに安心して受診してもらうため、丁寧な説明も心がけています。患者さんの訴えに対しては「薬を出しておきます」と伝えるだけではなく、考えられる原因や治療方針、注意すべき症状などを詳しく説明。「このクリニックに来て良かった」と知人にご紹介くださる方もおり、大きなやりがいを感じています。多くの方へ病気の早期発見・早期治療の機会を提供できるよう、検査精度の向上や安心して受診していただける環境づくりに努めていきます。患者さんが内視鏡診療に満足して帰っていただける、温かいクリニックでありたいです。

情報提供元: マガジンサミット