1月20日は「血栓予防の日」 血栓とは?病気との関係を知ろう
2018-01-19 18:30:46
執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
20という数字の「つ・まる」の語呂合わせ、また、二十四節気のうち1年中で最も寒くなる「大寒(だいかん)」がこの頃にあたり(※2018年の大寒は1月20日です)、寒い時季は血栓ができやすいという背景から、1月20日は「血栓予防の日」と認定されました。
また、この日から1か月間は「血栓予防月間」として掲げられています。
「血栓予防の日」は、日本ナットウキナーゼ協会(JNKA)が制定しました。
今回は「血栓」や血栓にまつわるさまざまな病気についてご説明します。
血栓とは何か
血栓とは血液の塊です。
血管が傷ついて出血すると、止血する働きが起こります。
血小板が血管の傷ついた部分にくっつき、血小板同士が集まって損傷部をふさぐ仕組みです。
さらに、止血をより強固にするため、血液中の「凝固因子」が作用し「フィブリン」と呼ばれる糊状の膜をつくります。
これがさらに血の塊を強固にして出血を止めるのですが、このときの血の塊が「血栓」なのです。
血栓症について
本来、血栓は止血をするためにできるのですが、血栓が血管を詰まらせると、さまざまな病気を引き起こします。
このような疾患の総称を「血栓症あるいは血栓塞栓症」といい、以下のようなものが挙げられます。
塞栓(そくせん)症
おもに動脈で起こる血栓症です。
血管が老化して動脈硬化が進むと、血管壁にコレステロールなどが溜まって血管が糊状になり、内部が狭くなって内皮がはがれ落ち、血管が傷ついたような状態になります。
そうすると、血栓ができて大きくなり、血管が詰まってしまう状態が「塞栓症」です。
エコノミークラス症候群
おもに静脈で起こる血栓症です。
静脈は、動脈よりも血流が遅く血圧も低いため、血液が滞りやすくなります。
いわゆる「血のめぐりが悪い」のです。
そんな状態のときに血栓ができ血流に乗って移動し、肺動脈に引っかかって肺塞栓を発症するのが「エコノミークラス症候群」です。
長時間飛行機に座ったままの状態が続くようなときの症例が多いため、この名がつきました。
その他の病気
心臓に栄養を与えている冠動脈が詰まる「心筋梗塞」、頭の中の脳動脈が詰まる「脳梗塞」、心房細動で心臓に血栓ができて脳血管が詰まる「脳塞栓症」、足からの血液を心臓に戻す深部静脈を血栓が詰まらせる「深部静脈血栓症」などがあります。
このように、動脈硬化や血液の流れが悪くなる「血流のうっ滞(=滞り)」が血栓症の原因になります。
そして、血栓症から生命にかかわる重大な病気も発症します。
血栓症の治療薬
血栓症の治療や予防には、血小板や凝固因子が働くのを抑制する薬を服用します。
いわゆる、血液をサラサラにする薬で、「抗血小板薬」と「抗凝固薬」と呼ばれています。
動脈ではおもに血小板による血栓ができやすく、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞といった病気には、抗血小板薬が多く用いられます。
また、静脈では血液のうっ滞による血栓ができやすく、心房細動、深部静脈血栓症、肺塞栓(エコノミークラス症候群)などには、抗凝固薬が用いられます。
ただし一様ではなく、血栓は血小板と凝固因子に複雑に反応してできるので、専門医がケース・バイ・ケースで薬を使い分けて処方します。
また、本来の止血という働きでできる血栓を抑えるわけですから、こうした薬によって出血しやすくなったり、止血しにくくなったりする副作用も指摘されています。
主治医の指導に従って服用することが重要です。
ナットウキナーゼへの期待
「血栓予防の日」を制定した日本ナットウキナーゼ協会(JNKA)は、血栓を溶解する成分「ナットウキナーゼ」の普及に努める団体です。
ナットウキナーゼは、納豆の発酵過程で納豆菌が作り出す、たんぱく質分解酵素として発見されました。
血栓の主成分フィブリンを直接分解する働きを持ち、身体の血栓溶解酵素を活性化させたり、血栓溶解酵素をつくりだす組織を増大させたりと、ナットウキナーゼにはさまざまな角度から血栓を溶解する効果があるとわかってきています。
また、納豆には血液凝固を促進するビタミンK2が含まれていますので、ビタミンK2を含まないナットウキナーゼの方が優れた血栓溶解作用があるといわれています。
世界血栓症デー
血栓に関する記念日には、10月13日の「世界血栓症デー」もあります。
こちらは、国際血栓止血学会が血栓症への正しい知識の啓発と、血栓症に起因する病気や死亡の減少を目的として制定し、2014年からこの活動を世界的に行っています。
日本では「一般社団法人血栓止血学会」が、この日を日本記念日協会に登録し、啓発等の活動に取り組んでいます。
心筋梗塞や脳梗塞はすでに重大な死因として知られていますが、専門家の所見では、その原因が血栓症であるという認識はまだ不十分であるとのことです。
血栓症の知識とともに、そのおおもとである「血栓」について、私たちはもっと知る必要があるでしょう。
【参考】
・日本ナットウキナーゼ協会『血栓予防月刊』(http://j-nattokinase.org/thrombosis/month.html)
・一般社団法人日本血栓止血学会『世界血栓症デー』(http://www.jsth.org/%E4%B8%96%E7%95%8C%E8%A1%80%E6%A0%93%E7%97%87%E3%83%87%E3%83%BC/)
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku