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大人もこどもも、長引く咳には要注意。 「百日ぜき」の可能性も

2018-01-23 18:30:13


執筆:青井 梨花(助産師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
小さいお子さんや赤ちゃんに多く発症する「百日ぜき」は近年、大人の患者も増えています。
大人の百日ぜきは症状が軽く、風邪と間違って放置するなど受診や診断が遅れがちです。
そして、気づかないうちに乳幼児への「感染源」になる恐れがあるといいます。
乳幼児の場合は重症化する可能性がある病気です。
長引く咳に心当たりがあるときは…もしかしたら百日ぜきかもしれません。ご一緒に詳しく見ていきましょう。

「百日ぜき」とは?


百日ぜきは百日咳菌による感染症です。
しつこく激しい咳が特徴で、発症してから回復するまで「全3ヶ月=およそ100日」かかることから「百日ぜき」と呼ばれてきました。
感染経路は飛沫感染か接触感染です。
百日ぜきの典型的な経過は次のとおりです。

カタル期:発症後~約2週間


約7~10日ほど無症状の潜伏期間の後、鼻水やくしゃみなど、いわゆる風邪に似た症状から、徐々に咳が激しくなっていきます。

痙咳(けいがい)期:約2~3週間


「コンコンコン…」と咳込むような連続性の短い咳の後に続いて、息の吸い込み時に「ヒューッ」と笛のような音が出る、特徴的な咳をするようになります。
咳とともに、嘔吐することもあります。
咳で息が詰まり顔面の静脈圧が上がるため、顔がむくんだり内出血したりすることもあります。
とくに6ヶ月未満の乳児では、息を止めてしまう無呼吸発作やけいれんを起こし呼吸停止にいたるなど、重症化しやすいので注意が必要です。
また、肺炎や脳症などの合併症につながるケースもあります。

回復期:約2~3週間


激しい発作性の咳は次第に落ち着いてきます。
ときどき発作性の咳がみられることはあっても、少しずつおさまっていきます。

大人の「百日ぜき」の症状と問題点


一方、大人が百日ぜきにかかると、痙咳(けいがい)期にみられるような発作性の咳はほとんどみられず、比較的長い期間咳が続くほかは軽症で回復することが多いといわれます。
症状が風邪に似ているせいで、「たかが咳」と軽んじて受診が遅れる、放置してしまう、また、診断がつきにくい…といった事情から、周囲に感染を拡大させる懸念があります。
感染が、予防接種を受けていない(=免疫がない)新生児や乳幼児に及ぶと、死にいたるほど重症化させてしまうリスクがあり、現在問題視されています。
日本では、百日ぜきの予防接種を、生後3か月から計4回推奨していますが、ワクチンの効果は少しずつ減り、免疫効果の持続は接種後10年程度といわれます。
このことも、大人の百日ぜき患者が増加している一因と考えられています。
ちなみに他国では、最も予防接種が多いところでは計6回、ほかにも、就学時から小学校低学年までの追加接種や妊婦にワクチン接種を奨励するなど、さまざまな対策がとられています。

百日ぜきから小さな命を守るために~早期診断・治療の推進~


このように、大人の百日ぜきというのは、自分自身は軽症であっても、ワクチン未接種の乳児が感染すると重症化させやすい、という危険を含んでいます。
よって、大人の罹患者の早期診断は、感染を拡大させないためのキーポイントになります。
従来の検査方法では、結果が出るまでに時間を要し、診断遅れの原因となっていました。
しかし、2016年から迅速な検査が可能になり、かつ、保険適応となる新検査が実用化されはじめています。
それにともない同年「小児呼吸器感染症ガイドライン」も改訂され、成人では「2週間以上続く咳」を「1週間以上」に変更するなど、早期診断を実現すべく診断基準も見直されています。
また、今までは小児科のうち限られた医療機関にしか患者報告の届出義務がなく、全体像はつかみきれていませんでした。
こちらについても2018年に届出基準が改正され、対象を全国の医療機関とし、成人罹患者を含め全患者を届け出るよう変更されました。
こうした新検査法による診断精度の向上や、国内全体の百日ぜき発生動向の正確な把握により、早めの対策を講じることで小さな命を守れるのではないかと期待されています。
なお、現在百日ぜきの定期接種は乳幼児期に限られており、それ以外は自費となっていますが、今後、国内の発生状況が明らかになると、この点も考慮され変更が加えられるかもしれません。
最後に、自分で予防的にできる対策として、咳が出たらマスクを着用することや、手洗い、うがいを心がけることが挙げられます。
そして、1週間以上咳が長引くときは、百日ぜきを含む他の呼吸器疾患の可能性があること、自身が感染源になるかもしれないことを踏まえ、風邪と決めつけないで早めに受診するようにしましょう。
<執筆者プロフィール>
青井 梨花(あおい・りか)
助産師・看護師・タッチケアトレーナー
株式会社 とらうべ 社員。病院や地域の保健センターなど、さまざまな機関での勤務経験があるベテラン助産師。
現在は、育児やカラダの悩みを抱える女性たちの相談に応じている。プライベートでは一児の母。
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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