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緊張してつばを「ゴックン」。 この飲み込み音、どうにかならない?

2018-02-02 18:30:25


執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
皆さんは「固唾(かたず)を呑む」という言い回しを聞いたことがあるでしょう。
「固唾」とは口の中にたまった唾液のことです。
事の成りゆきが気になって、緊張して息をこらして見守る様子が由来といわれています。
このような場面と向き合う経験は誰にでもあると思います。
そして、このつばを飲み込む音を気にしている方も意外と多いようです。
どうして音が出るのでしょう?この音を抑える方法はあるのでしょうか?

緊張時の唾液の特徴


摂食機能療法の専門家、植田耕一郎教授(日本大学歯学部)は、緊張すると唾液の性質が変わると指摘しています。
唾液には「サラサラ唾液」と「ネバネバ唾液」があり、自律神経の働きによってどちらになるかが決定されるとのこと。
心身を緊張させる交感神経が優位なときは「ネバネバ唾液」、逆に、心身をリラックスさせる副交感神経が優位なときは「サラサラ唾液」が分泌されるのだそうです。
また、植田教授曰く、ネバネバ唾液はサラサラ唾液に比べ分泌量が少ないとのことです。
ですから、緊張時というのは唾液量が減って口の中が乾いている状態であると想像できます。
さらに、通常の食事中の唾液は、リラックスしているためサラサラで飲み込みやすいのに対して、ネバネバ唾液は口の中を粘つかせ飲み込みにくい性質を持っているそうです。
つまり、「固唾」の場合はネバネバ唾液であろうというのです。

ネバネバ唾液の解消法


前述の植田教授によると、固唾を呑むことへの対処法は「歯磨き」だそうです。
口の中に物理的な刺激を与え唾液量を増やし、サラサラ唾液に変えていこうというわけです。
ただし、これはあくまでも応急処置的なもので、食事がのどを通らない状態が慢性化しているというなら話は変わってきます。
たとえば、次項に挙げる「ドライマウス」などです。

ドライマウス(口腔乾燥症)


ドライマウスとは、2~3か月以上つねに口の中が乾いた状態になっている症状をいいます。
原因は、加齢やストレス、更年期障害や糖尿病などの病気、薬の副作用などもありますし、食事をするときによく噛まないという習慣も一因に挙げられています。
また、複合的な要因も考えられますので、ケースによってケアの仕方が異なります。
歯科を受診して医師の指導を受ける必要があり、一般的には唾液を出す方法として次のようなことがすすめられています。

舌の体操(舌の筋肉を鍛える)


 舌を出したり引っ込めたりする体操を繰り返す

水を飲む


 とくに、歯磨き後と食間、寝る前にコップ1杯ほどの水を飲む

ガムをかむ


 唾液腺を刺激する。キシリトール入りのシュガーレスがおすすめ。ガムの代わりにだし昆布などでも可

声を出す


 発声によって舌と頬の筋肉が動いて、唾液腺が刺激される

よく噛んで食べる


 咀嚼は唾液腺に刺激を与える。とくに繊維の多い生野菜などは、比較的長い時間よく噛まないと飲み込めないので適している

趣味や運動をしてリラックスする


 好きなことをしていると副交感神経が刺激され「サラサラ唾液」が出るようになる

唾液過多について


ドライマウスとは対照的に、唾液が大量に分泌される「唾液過多症:流涎症(りゅうぜんしょう)」という病気もあります。
通常、唾液は1日に1~1.5リットルほど分泌されるといわれていますが、この量が過剰になってしまうのです。
ちなみに、妊娠して「つわり」の時期に、唾液の分泌が増えて止まらなくなる「よだれつわり」という症状もあります。
唾液過多症の原因も多岐にわたるため、治療や対策も症状により異なります。
耳鼻咽喉科や口腔外科を受診して、薬物療法やマウスピースを使う方法など、医師の指導により適切な治療を受けましょう。

唾液恐怖症


さて、今回のタイトルにもなっている、緊張して思わずつばをゴックンと飲み込んでしまう…こんな経験は誰しも持っています。
ただし、それが必要以上に気になる場合、不安障害と呼ばれるメンタル不調の可能性があり、次のような症状をきたします。

つばを飲み込む音が気になって仕方がない


つばを飲み込む音を他人に聞かれ、自分のことを変だと思われたのではないかと疑う


つばの音で、相手に迷惑をかけてしまったに違いないと思い込む


周囲がイライラしているのを、自分のつばの音のせいだと思う


…などです。いずれも考えすぎだったり、気のせいだったりしても、本人にとっては、確信になっている点が特徴です。
この症状では、認知行動療法などの心理療法と抗うつ剤や安定剤を使った薬物療法など、通常の不安障害への治療法により症状の改善が見込めます。
食事面からみると、現代人の食生活は柔らかいものが増えて噛む必要性が減ってきているともいわれます。
こうした食生活が、唾液の分泌にも大きな影響を与えていると推察できます。
普段の食生活に噛みごたえのある食材を取り入れ、時間をかけよく噛んで食べる、という工夫も、健康な唾液分泌には大切であるといえるでしょう。
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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