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なんだか「におい」が感じられない… その症状、嗅覚障害の可能性も

2018-03-12 18:30:33


執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
においを感じる「嗅覚」には「嗅覚順応」という特徴があります。
たとえば最初は嫌な臭いと感じたのに、いつの間にか気にならなくなる…
そんな時間の経過とともににおいの感覚が減退するような性質です。
ですから、においがしない、感じにくい、といった嗅覚機能の異常に気づくのは意外と難しいようです。
それでは、嗅覚障害とはどのような疾患なのでしょうか。
詳しく解説していきます。

嗅覚障害の定義


日本鼻科学会の「嗅覚障害診療ガイドライン」によれば、嗅覚障害はにおいを感じる感覚の一つ「嗅覚」に何らかの異常が生じている状態を指します。
においを感じにくい、全く感じないのは「量的障害」で、嗅覚低下嗅覚脱失といいます。
また、においの感じ方に異変が起こるのは「質的障害」で、本来のにおいとは異なるにおいを感じる「刺激性異嗅症」、何もにおいはしないのににおうと感じる「自発性異嗅症」があります。
異嗅症は量的障害にともなうことが多いといいます。
さらに質的障害には、「嗅盲(=特定のにおいがわからない)」、「嗅覚過敏(=ごく軽微なにおいが不快)」、「悪臭症(=副鼻腔炎や扁桃炎などによる悪臭)」、「自己臭症(=自分が臭いと思い込む)」、「幻臭(=統合失調など心因性の病気の一症状であることが多い)」なども挙げられます。

嗅覚障害の病態による分類


嗅覚障害は異常が生じる部位によって病態と原因が異なります。
病態は次の3つに大別されています。

呼吸性嗅覚障害

(呼吸性のもの)
空気が嗅細胞に届かず、におい分子が嗅細胞の受容体と結合できないために起こる嗅覚障害。
慢性副鼻腔炎(ちくのう症)やポリープ(鼻茸:はなたけ)をともなうことが多い。
アレルギー性鼻炎や骨折などによって鼻腔内形態が変形し、気流が障害されて起こるようなケースもある。

嗅神経性嗅覚障害

(鼻粘膜性のもの)
嗅細胞が障害を受けて嗅覚が低下して起こる。
たとえば、ウィルス感染による嗅細胞の障害、顔面や頭部の外傷による末梢神経性嗅覚障害などが考えられる。
また、薬物の毒性が嗅細胞障害を来すこともある。

中枢性嗅覚障害

(中枢系のもの)
嗅神経よりもにおいの情報を処理する中枢系の障害によって起こる。
頭部外傷による脳挫傷のケースが最も多いという。
脳腫瘍、脳出血、脳梗塞など脳の病気も原因となる。
さらにパーキンソン病やアルツハイマー型認知症など、神経変性疾患の合併症として発症することもある。

嗅覚障害の原因と治療


量的嗅覚障害の原因として最も多いのは、慢性副鼻腔炎、次いで風邪のウィルス、頭部外傷の順であると報告されており、「嗅覚障害の三大原因」と呼ばれています。
その他には前述のとおり、アレルギー性鼻炎、脳疾患、薬物、先天異常、加齢、心因性要因(たとえばストレス)などがあります。
嗅覚障害の治療は原因によって異なりますが、手術や薬物療法による治療になります。
慢性副鼻腔炎の患者におこなった手術前後の嗅覚検査では、約6割に嗅覚の回復が見られたという報告もあります。
薬物療法では、副腎皮質ホルモン(ストロイド剤)の点鼻や内服が現在の主流になっています。
専門医は、においの感じ方に異常があると気づいたらできるだけ早期に耳鼻咽喉科を受診して、診断と治療を受けるようすすめています。

早期発見と早期治療を!


嗅覚障害の疫学調査は、日本では今のところ全国的に実施されていないようです。
ですから実態は明らかになっていませんが、医療機関を受診した患者の実績からみると50歳代に最も多く、女性の割合が男性よりも1.5倍ほど多いという傾向にあるようです。
嗅覚障害を起こしていても、本人がそれに気づいていないケースを想定すると、実際にはもっと患者数が多いと推察されます。
しかも、受診してから完治までに長い時間を要すると専門家は指摘しています。
ですから、実態解明を期待しつつ、早く治すためには早期発見・早期治療が最善策ということを心得ておきましょう。
【参考】
・日本鼻科学会『嗅覚障害診療ガイドライン』(http://www.jrs.umin.jp/news/20170512.html)
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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