E START

E START トップページ > マガジン > 脂肪なのに活性化すれば痩せ体質に? 魅惑の「ベージュ脂肪細胞」とは

脂肪なのに活性化すれば痩せ体質に? 魅惑の「ベージュ脂肪細胞」とは

2018-07-06 18:30:55


執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
「脂肪を燃焼させる」といった類のキャッチフレーズをよく見かけませんか?
美容と健康に敏感な方はグッと惹きつけられるかもしれません。
しかし、全般脂肪は悪いもの…という風潮が強いようにも感じます。
ただやみくもに脂肪を取り除けば良い、というわけではありません。
脂肪は体にとって必要なものであり、さらには、活性化すると痩せ体質になる…という脂肪細胞の存在が今注目を集めています。
次から詳しく見ていきましょう。

体脂肪の役割


健康診断などで気になる「体脂肪率」
脂肪はさまざまな形でわたしたちの体に存在しますが、「体脂肪」と言うと、お尻や太ももなど皮膚の下にたまる「皮下脂肪」と肝臓などの内臓まわりにたまる「内臓脂肪」を意味します。
「体脂肪率」は体重に占める体脂肪の割合を示しています。
体脂肪はエネルギーの源として、体を維持するために欠かせないものでもあり、細胞などの構成や体温の保持、クッションとして身を守る役割も担っています。
ですから、過度なダイエットなどによって痩せて体脂肪が減りすぎると、体にさまざまな不具合が生じてしまいます。
しかし、そうは言っても減らしたいと願う人が多い体脂肪。
ところが、脂肪にも種類があり、活性化すれば痩せることにつながる…というタイプの存在が分かってきたのです。

脂肪細胞の種類


脂肪細胞には「白色細胞」「褐色細胞」の2種類があります。
「白色脂肪細胞」は、細胞の中に大きな脂肪のかたまり(脂肪滴)が一つあって、脂肪を蓄える働きをしています。
一般的に「体脂肪」と聞いてイメージされるのは白色細胞で、実際に体脂肪のほとんどは白色脂肪細胞が占めています。
体にとって大切なものではあるのですが、肥満になると細胞が必要以上に脂肪を蓄え、どんどん大きくなってしまいます。
さらに、脂肪細胞は生理活性物質(※)を分泌して体に指示をだしています。
ところが肥満によって脂肪細胞が大きくなるとその指示が混乱をきたし、肥満を招く悪循環に陥って生活習慣病を引き起こす可能性を高めてしまうことも問題になっています。
一方で「褐色脂肪細胞」は、細胞の中に多数の脂肪滴が存在するタイプで、白色細胞と同じ脂肪細胞ですが見た目も全く違います。
褐色細胞が存在する場所は首や肩甲骨まわりなど体の一部です。
しかし、寒さを感じると細胞の中に溜め込んでいる脂肪を燃やして熱を生み出し、それでも足りない場合は白色細胞の脂肪も使って熱を作る、という働きを持っています。
この細胞を鍛えられれば、効率よく体の脂肪を燃やしダイエットするのも夢ではありません。
ところが、とても残念なことに褐色脂肪細胞は乳幼児には比較的多いと言われていますが、成長とともに減ってしまいます。
個人差はあるものの、60代になると褐色脂肪細胞を持つ人は少ないといわれ、また、大人になってから増やすことも難しいと考えられています。
※コトバンク『生理活性物質』(https://kotobank.jp/word/%E7%94%9F%E7%90%86%E6%B4%BB%E6%80%A7%E7%89%A9%E8%B3%AA-163006)

朗報!新たな脂肪細胞の存在が明らかに…


褐色細胞がダイエットに効果があるとはいっても、大人になると減ってしまうのであれば意味がない…と思われた方に朗報です。
実は最近、白色脂肪細胞にまぎれて、褐色脂肪細胞に似た働きをする第3の脂肪細胞の存在が明らかになってきました。
その細胞は、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の間をとって「ベージュ脂肪細胞」と呼ばれています。
しかも、ベージュ脂肪細胞は白色脂肪細胞が元になってできると考えられています。
肥満につながる白色脂肪細胞をベージュ脂肪細胞に変化させることができれば、褐色脂肪細胞のように脂肪を燃やして熱を作り、さらには余分な白色脂肪細胞の脂肪も燃やしてくれるのではないか…と期待され注目が集まっています。

「ベージュ脂肪細胞」の研究報告は続々と!


ベージュ脂肪細胞については、さまざまな研究が進められています。
なかでも群馬大学の研究グループは、2017年にベージュ細胞を増やすメカニズムを見出したと発表しています。
細胞内の「Zip13」と呼ばれる特定のタンパク質が亜鉛の運搬に関わっていて、遺伝子の異常でこのタンパク質が欠けると体の脂肪量が少なくなるといいます。
研究グループはこのことに着目し、あえてマウスの「Zip13」を欠損させたところ、そのマウスのベージュ細胞が多くなることを突き止めたというのです。
実験の結果、マウスはエネルギーの消費量が増え、高脂肪の食事を与えても太りにくくなったと報告されています。
また、急にベージュ脂肪細胞を増やせなくても、現在体にある褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞を活性化できれば、代謝がアップしてダイエットや健康維持の効果を期待することができます。
なかでも、あえて冷たい刺激を与える「寒冷刺激」が一つの方法だといわれています。
さらに、褐色細胞を活性化させる鍵となる食べ物についても明らかになってきました。
例えば、青魚に多く含まれるDHAや緑茶に含まれるカテキン、ミントなども褐色細胞を刺激すると報告されています。
「脂肪でありながら、痩せ体質になる」そんな期待を持てるベージュ脂肪細胞。
今後その仕組みがより解明され、肥満や生活習慣病の予防、新たな治療につながる薬剤の開発に期待しましょう。
【参考】日本経済新聞『「太りにくい細胞」増やす仕組み 群馬大が発見』(https://www.nikkei.com/article/DGXLASFB30H80_Q7A830C1L60000/)
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

関連記事

情報提供元: mocosuku

  • Twitter投稿
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人気記事

この記事へのFacebookのコメント