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あなたの周りは大丈夫?「ゲーム依存は病気です」とWHOが認定

2019-01-04 18:30:41


執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
ゲームが気になってスマホが手放せない、休みの日は際限なくゲームにのめりこんでしまう…
そんな状態に陥っている人はいませんか?
アルコール依存症などと同じく「ゲーム依存症」はれっきとした病気であると認定されました。
もしかしたら、気づいていないだけであなたやまわりの友人・家族にも黄色信号が点灯しているかもしれません。
早速ご一緒に詳しく見ていきましょう。

ゲーム依存が病気と見なされる理由


かつての「ゲーム」は、おもに自宅のテレビやパソコンを使って遊ぶものでした。
したがって、場所や時間などの物理的な制約が伴いました。
しかしインターネットが普及し、スマホ等を一人一台持つのが当たり前の現代、ゲームはいつでもどこでも気軽に楽しめるようになりました。
なかでも、スマホによるゲーム依存は深刻な社会問題に発展しています。
もちろん、「アルコール依存症」が病気であっても、アルコールそのものが悪いわけではないことと同じで、ゲームがすべて問題という意味ではありません。
適度に楽しむ分には、ストレス発散やリフレッシュに役立つ娯楽にもなります。
ただし、日々の生活よりもゲームを優先するようになると話は違ってきます。
人間関係や学校生活、仕事などに支障をきたし、その状態が長く続いている場合は「依存」と言えるでしょう。
ゲーム依存は、これまで問題視されつつも、病気とする根拠は確立されていませんでした。
しかし2018年6月、WHO(世界保健機関)がICD(国際疾病分類)とよばれる世界的なガイドラインを改訂する案の中で、ゲーム依存症を病気のひとつと認定したのです。
ポイントを簡単にまとめると、
・自分でゲームをする時間や頻度をコントロールできない
・日常生活よりもゲームを優先する
・問題が起こっていてもゲームをやめられない
という状態が1年以上続いていることが、診断の基準となります。
ただし、状況が深刻な場合は、1年未満の期間でもゲーム依存と見なされるケースもあります。
正式な診断名は「ゲーム障害」と言い、2019年5月のWHO総会で決定される方針となっています。

本当は怖い…スマホ・ゲームへの依存


それでは、実際にゲーム依存に陥ったとき、身体や心にはどのような問題が生じてくるのでしょうか?
常にスマホでSNSをチェックする、ゲームから手が離せない…という状況になると、インスタント食品など手軽な食事で済ませたり、ほとんど食事を摂らなかったりと、食生活が乱れる人は少なくありません。
また、自宅に引きこもりがちで身体を動かさず、ゲームが深夜にまで及ぶと寝不足どころか昼夜逆転になる人もいます。
このような生活習慣の乱れから、頭痛や肩こり、めまい、だるさ、吐き気など身体の不調が起こりやすくなります。
さらに視力や体力・筋力の低下も顕著で、とくに10代など若い世代では発育に異常がみられることもあります。
こうした身体の症状は、学習や運動をはじめ日々の活動への意欲低下につながり、すぐにイライラして短気になるなど、精神面にも影響を及ぼします。
ゲーム依存の状態が長期間続くことで、脳のバランスが崩れていくのです。
さらに、より強い刺激を求めたり、興味がないことへの反応が乏しくなったりする傾向も指摘されています。

自覚するのは難しい「ゲーム依存」


ここまでご覧いただいたところで、「自分はゲームに依存している。今日から改めよう」と自覚した方はいるでしょうか?
多くの場合、ゲーム依存に気づくのは、本人ではなく家族と言われています。
依存している本人は、ただ単にゲームにハマっているだけ、いざという時はすぐにやめられる…と思っているケースがほとんどです。
自分の身近にいる家族や友人が、常にスマホを手放せず、学校や会社を休みがちになる、コミュニケーションが円滑にできないなど、明らかに以前とは違う様子がみられたとき、それはゲーム依存という病気のサインかもしれません。
そのうち飽きるだろう…と様子見の姿勢はご法度です。
時間の経過とともにゲームへの熱中度合いに拍車がかかり、あっという間に依存状態に陥ることも少なくありません。
とくに最近のゲームは、頻繁にボーナスの通知が届く、課金してアイテムがもらえるなど、興味を引く巧妙な作りになっています。
おこづかいの範囲で始めた課金が、気がつくといつの間にか数百万円になっていた…という事態も起こっています。
ですから、兆候に気づいたときは迅速に対応することが肝心です。

まずは病院に相談して!


身近な人が、あるいは自分自身がゲーム依存かもしれないと感じたとき、どのように対応すればよいのでしょうか。
解決の第一歩は、まず、仮に本人を除いたとしても、家族だけでも病院に相談することです。
直接の受診が難しければ、電話相談も可能です。
今の状態が様子見でよいレベルなのか、それとも専門的な対処が必要なレベルなのか、見極めに必要な情報を得て、ただやみくもに時間が経過する状況は回避しましょう。
病院では、冒頭でお伝えした「ゲーム障害」のガイドラインをもとに問診をします。
また、心身の状態に応じて、血液検査や脳画像検査、心理検査などが行われることもあります。
基本となる治療法は、医師や心理士とのカウンセリングです。
ゲーム障害と診断された場合、回復に必要不可欠なのは、本人がゲームに依存している状態を自覚することです。
その上で実生活を少しずつ見直して改善し、運動などゲーム以外の興味を持って集中できる時間を確保します。
グループで話し合う集団精神療法もあります。
重度の依存になると、入院してゲームを完全に断つ環境を作る方法も検討されます。
いずれにしても、上記プロセスをたどらないで、ゲーム依存に陥っている本人のスマホを突然取り上げる、インターネットの接続を切る…といった、強引にゲームを遮断する対処は厳禁です。
多くの場合本人の怒りを買い、さらにゲームに固執するなど、事態の悪化につながります。
子どもから大人まで、スマホの画面に見入っている姿がありふれた光景になった現代。
いま一度、自分自身や家族のインターネットとの付き合い方を見直してみませんか。
依存への黄色信号に早めに気づくことが、生活の破綻を防ぐ鍵となります。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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