交感神経の衰えで、食べなくても太っちゃう? 「モナリザ症候群」
2019-01-15 18:30:42
執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー)
医療監修:株式会社とらうべ
「モナリザ」といえばレオナルド・ダ・ ヴィンチが描いた、有名な女性の肖像画が思い浮かびます。
しかし、「モナリザ症候群」は絵画の「モナリザ」とはまったく無関係で、太りやすくなっている身体の状態を表しています。
肥満の人の7割が該当するとも言われる「モナリザ症候群」について、詳しく見ていきましょう。
モナリザ症候群とは
「太りやすい身体の状態」を表すモナリザ症候群。
その語源は「Most Obesity kNown Are Low In Sympathetic Activity」の頭文字を取ったもの。
日本語に訳すと「ほとんどの肥満の原因は、交感神経の働きの低下にある」という意味です。
つまり、モナリザ症候群とは、交感神経の働きが衰えることで代謝機能が低下し、痩せにくい、肥満を引き起こしやすい状態になることを指しています。
カギとなるのは「交感神経」
肥満の原因というと、多くの人が食べ過ぎや運動不足を連想すると思います。
しかし、交感神経の働きが衰えて肥満につながる…いう仕組みはあまり聞いたことがないのではないでしょうか。
そこで、最初に交感神経の働きについておさらいをしましょう。
交感神経は自律神経のひとつ。
自律神経は、身体の健康な状態を保つためにさまざまな機能をコントロールしている神経で、交感神経と副交感神経に分けられます。
それぞれ次のような特徴があります。
交感神経:活動時、緊張時に働く、活動に対してアクセルの役割
副交感神経:休息時、リラックス時に働く、活動に対してブレーキの役割
規則正しい生活をしていると、日中活動しているときには交感神経が優位になり、活動しやすい状態を保ちます。
一方、夜間は副交感神経が優位になり、疲労やダメージを修復しています。
そして、正反対の働きをするこれらの神経は、あたかもシーソーのごとくバランスを取りながら私たちの健康を維持しているのです。
このように、車のアクセル/ブレーキに喩えられる自律神経ですが、車と大きく違う点は、私たちの意思ではコントロールが難しいということです。
つまり、活発に動きたいから交感神経を優位にしよう、リラックスしたいから副交感神経を優位にしよう…といったセルフコントロールはできないのです。
それでは、どのような仕組みで自律神経は調節されているのでしょうか。
交感神経の働きを左右する「日常生活」
交感神経は脳からの信号によってコントロールされています。
そして、信号として発せられる情報源となるのは次のような日常生活です。
朝目覚めて日光を浴びる
規則正しい時間に食事を摂る
適度な活動とリラックス
十分な睡眠
これらの情報により、日中には活動モード、夜間には休息モードと、時間に合わせて自律神経のバランスを保っているのです。
交感神経の機能が衰えると太りやすくなる理由
交感神経の働きに関わる要因のひとつに「アドレナリン」という物質があります。
アドレナリンは交感神経が優位な状態の時に分泌されるホルモンです。
アドレナリンは血管の拡張や収縮に作用して血流を調節し、活動時に行動しやすいモードにしています。
次のようなケースが挙げられます。
心筋の血流促進
全身に血液を送る心臓の筋肉は収縮力を増し、血液循環を良くします。
緊張するとドキドキと心臓の拍動が速くなりますよね。
これによって体温も上昇します。
骨格筋の血流促進
活動時には筋力を向上させるため骨格筋の収縮力も増します。
そうすると、エネルギーを生み出す力も高まります。
血糖値を上げる
肝臓や筋肉に蓄えられている糖を分解してエネルギー源を確保しようとします。
そのため血糖値が上昇します。
糖は脳の栄養源として集中力や判断力を高めることにも作用します。
末端の血流抑制
手先、足先、皮膚、毛髪など、脳や運動機能にとって重要ではない末端部分の血流は制限されます。
内臓機能抑制
戦闘態勢のときには不必要な消化、吸収、排泄の機能は抑制されます。
つまり、胃や腸、腎臓の機能は抑えられます。
このように、アドレナリンはエネルギー消費を高めようとして働きます。
すなわち、交感神経の機能が衰えてアドレナリンの分泌が低下すると、エネルギー消費が抑制されて体内に蓄積されます。
その結果、太りやすくなってしまうという仕組みなのです。
こんな日常生活は交感神経の機能を低下させる!
それでは、どのような生活が交感神経の機能を低下させてしまうのでしょうか。
もしかしたら、ふだん当たり前のように過ごしている生活習慣のなかに、交感神経の機能を衰えさせている原因が潜んでいるかもしれません。
昼夜逆転の生活
朝目覚めて日光を浴びることが、脳からの信号のスイッチとなり交感神経が優位になります。
昼夜逆転の生活をしていて日中に日光を浴びないと、交感神経は優位にならず機能が低下してしまいます。
朝ごはんを食べない
朝ごはんを食べて腸を刺激することも交感神経を優位にするスイッチとなります。
とくに糖質(ご飯・パン・麺・果物など)とたんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品・乳製品など)が重要です。
時間がない、手間がかけられないというときでも、糖質とたんぱく質を補うようにしましょう。
卵かけご飯やバナナヨーグルトなどは手軽でおすすめです。
食事と食事の間が長く空く
次の食事までの時間が長いと、体内リズムの時間が乱れます。
日中の活動時は交感神経が、夜間は副交感神経が優位になる、という生活リズムも崩れてしまいます。
欠食はしないようにして、どうしても夜が遅くなるときには、夕方に軽い間食を摂り、遅い時間の夕食を軽めにしましょう。
このほかに、睡眠不足や過度なストレスも自律神経の働きを乱す原因となり、結果的に交感神経の働きを低下させる可能性があります。
ダイエットには規則正しい生活リズムが重要です。
そのことなしに、どんなダイエット法も効果が得られない…といっても過言ではありません。
忙しい毎日を送っているなかでも、生活リズムを整えることを意識して実践していると、太りにくい身体作りにつながります。
<執筆者プロフィール>
山本 ともよ(やまもと・ともよ)
管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー。
株式会社 とらうべ 社員。企業で働く人の食と健康指導。糖尿病など疾病をもった人の食生活指導など活動中
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku