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喧嘩をしたとき…どうして女性は過去の出来事を連鎖的に思い出すのか?

2019-03-19 18:30:59


執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
男女がけんかをすると、女性は「いきなりキレる」「過去のことを何度も蒸し返す」など、男性を悩ませるといわれます。
このことは「男性脳」「女性脳」の違いから明らか…という説がありますので、今回注目してみたいと思います。
女性の特徴とされる「女性脳」とはどのような構造なのでしょうか。

人工知能モデルとしての「女性脳」


人工知能の開発に携わり、現在はマーケティング分野で感性分析などを行っている黒川伊保子さんをご存知でしょうか。
彼女はコミュニケーション・ロボットの制作過程で男女の対話スタイルの違いに気がつき、ロボットに対話機能を組み込むとき、状況に応じた男性モデルと女性モデルの使い分け方を模索してきたといいます。
その結果、脳生理学とは異なる見地から、人工知能のコンセプトとしての「女性脳」をモデル化しています。

女性脳の特徴


黒川さんが指摘する「女性脳」には、次の二つの特徴があります。

体験記憶(エピソード記憶)に感情の見出しが付いて保持されている


過去のできごとが「怖い」「つらい」「ひどい」「無神経」などといった、感情が見出しになって保存されています。
そのため、たとえば夫が無神経な発言をすると、「無神経」と見出しのついた過去の発言の数々が一気に想起され、何十年分もの類似記憶が鮮やかによみがえります。
このとき、無神経な発言によって引き起こされる心の動きは「ネガティブトリガー」と呼ばれます。
反対に、うれしかった、楽しかったといった快適な感情は「ポジティブトリガー」として体験記憶に紐づけられます。

共感欲求が非常に強い


「わかる、わかる」と共感してもらえることで、過剰なストレスとなる感情が鎮静化して、ネガティブトリガーである神経回路のストレスも軽減されます。
また、自分の体験だけではなく他人の経験であっても、共感して感情の見出しがつくと、自分の体験と同等の扱いになります。
ゆえに、女性にとって「井戸端会議」は格好の共感の機会でもあり、相互に「とっさに使える知恵」の交換会という意義を担っています。

なぜ「女性脳」なのか?


このような構造が女性に顕著なのは、子どもを産み育てるという女性に備わる特性に由来するのではないかと考えられています。
「子育ては常に新しい問題への直面の連続なので、その時その時に起こってくる事態に人生の記憶を総動員して、瞬時に答えを引き出す機能が備わった」ということを、黒川さんは述べています。
また、共感性によって他人の体験を自分の体験のように記憶したり、自分(の気もち)を大切にしたりすること、自分や自分が大切に思う人のことを最重要視するといった、いわば「わがまま」や「えこひいき」も、哺乳類のメスとして種の保存のために備わっている標準装備のようなものだとも指摘しています。

体験記憶(エピソード記憶)と感情


丸暗記式の意味記憶と違って、体験記憶は「その人が経験したできごと」についての記憶です。
たとえば、“海とは陸地以外の部分で、海水に満たされ…”といったコトバの定義を覚えているのが「意味記憶」ですが、体験記憶で海といえば、Aさんは東北大震災のときの津波を思い出すとか、Bさんはエメラルドグリーンのロマンティックな沖縄の海が目に浮かぶといった、体験を通した記憶を指しています。
そして、震災の津波は「怖かった」とか、沖縄の海は「素敵だった」というように、その時々の感情が強かったり大きかったりするほど、印象深く鮮やかな記憶として、保持されたり想起されたりすることがわかっています。
ちなみに、こうした働きを促進するのは、脳科学では大脳辺縁系にある「偏桃体(へんとうたい)」や「海馬」だと考えられています。
つまり、感情(情動)と記憶との関係性は男女差というよりは、脳の働きがどのように習慣的に使われているかということに影響されているといえるのではないでしょうか。

それでは、男女の差とは?


脳科学的な立場からは、「女性脳」は女性に固有というよりは、習慣によって形成されてきた機能的特徴ということができるでしょう。
黒川さんご自身も「脳機能」であると表現されています。
また、共感性も「ゴール指向問題解決型」の成人男性にはほとんど体験されなくなっているようですが、少なくとも赤ん坊や幼児の頃は男女ともに「そうだ、そうだ」という共感性によって、生活や文化を取り入れたり人間関係をつくったりしてきたはずです。
小さいころから理屈や合理性だけで世界を構築してきたわけではないでしょう。
さらに、昨今注目されているLGBTのような性的マイノリティの生き方もありますが、男性的な女性、女性的な男性など、ジェンダーの境界はかつてよりもあいまいになってきています。
黒川さんの提言は、非常に精緻とはいえロボットのような機械を作るためのモデルから得たコンセプトです。
ですから、実際に脳の中がそのような構造になっているというよりは、「女性脳」的なイメージを持って男女の仲を見つめ直してみてはどうか…という問題提起として捉えることができると思います。
「女性脳」は、男性が女性を理解し、女性といかに円満な関係を築いていくか、という問いに基づいた提起といえます。
男女が対等に共存していく社会にあっては、当然のことながら男性が女性を支配するのではなく、男性と女性が互いに理解し合う、その理解度の深さが社会の成熟度につながっていきます。
そういう意味で、「女性脳」の考え方も傾聴に値すると思われます。
男性諸氏は一度、共感をすることで女性のネガティブトリガーをポジティブトリガーに変換して、そこに何が生まれるのか(あるいは何が壊れるのか)を体験してみてはいかがでしょうか。
【参考】
・黒川伊保子編『妻のトリセツ』(講談社+α新書 2018年)
・黒川伊保子『女の機嫌の直し方』(集英社インターナショナル新書 2017年)
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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