
トランプ大統領が打ち出した相互関税。その衝撃は、早くも中小企業などの「現場」に波及しています。一方でトランプ氏を相手に、効果的な「取引カード」を持たぬ日本政府。ちらつくのは、安倍政権時代の”トランプ外交”です。
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“トランプ関税”の衝撃…零細企業「現場」の窮状
一律10%の関税が発動されたままとなった4月10日。
町工場が集まる、東京・大田区では…。
Q.どんな物をつくっている?
部品製造 楠 延亮さん
「機械で加工できる物は何でも」
頼まれた部品は、何でも造るという職人の楠さん。トランプ関税の衝撃に身構えます。
楠さん
「零細企業は、個人で考えてもしょうがない。親会社の方で(輸出が)ピタッと止まったら、こっちも(受注が)ピタッと止まるかもしれない」
アメリカにも輸出されている、ビデオカメラなどの部品を製造する白石さんも、トランプ氏の動向に神経をとがらせます。
ホワイト・テクニカ 白石正治さん
「朝出勤したら、まず『ピッポッパ』でパソコンで見ますね」
毎日、関税の動きをチェックするといいます。
今年に入り、取引先からの値下げ要請に応じたばかり。今回、10%の関税が発動されたことで、更なる値下げを迫られることを恐れています。
白石さん
「仕事をもらってる方なんで(立場が)弱い。(10%なら)1000円だと900円にして納めないといけない。(親会社も)『うちもつらいんだよ』って言うでしょう」
こうした「現場」の窮状を打開できるのか。
ともかくもトランプ政権との交渉が急がれますが、その戦略をめぐっては…
トランプ氏に手札を持たぬ日本…ちらつく安倍政権の過去
日本維新の会 伊東信久議員
「どのようなアプローチで臨まれるか、どのような取引カードを持って行くか」
トランプ政権との交渉役を担う、赤沢経済再生担当大臣。その戦略については…
伊東議員
「スペシャルな技とか、ミラクルな方法はないと思う。どのような取引カードを持って行くか」
赤沢亮正 経済再生担当大臣
「何が最も効果的なのか、といったことを考え抜いて…」
日本側には、確たる手持ちのカードがない状況。
そもそもトランプ氏の一期目、「蜜月」とされた安倍政権でも、関税交渉では一方的な要求を突きつけられていました。
当時の日米には、自動車と農産物、互いの関税をゼロに近づける、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)があったにもかかわらず、トランプ氏は就任早々に離脱。
日本車への追加関税をちらつかせて、個別交渉を迫ります。
安倍総理は、トランプ大統領に接待攻勢をかけ、F35戦闘機の“爆買い”などもアピール。
しかし結局、アメリカ産の農畜産物については、離脱したはずのTPP並みに関税を下げろ、との要求を飲まされ…。日本車については、TPP前と変わらない関税が残されたのです。
それでも日本政府は、“自動車関税は将来的に撤廃される”と説明。さらに…
安倍 元総理大臣(当時)
「日本の自動車に対し、米国は追加関税をかけない。そのことも首脳会談の場で、トランプ大統領から確認を取りました」
追加関税を課さない約束をしていたのです。ところが今回、自動車関税の撤廃どころか、25%の追加関税を課された日本。
石破総理は、赤沢大臣をアメリカに派遣し、4月17日にも会談する見通しです。
トランプ関税を巡る交渉において、日本は何を求められるのか。
4月17日、日本側は赤沢経済再生担当大臣、アメリカ側はベッセント財務長官とグリア通商代表部代表、の顔ぶれで行われる予定の日本とアメリカの関税交渉。
アメリカ側の責任者、ベッセント財務長官がテーマとして挙げたのは三つのキーワードです。
まずは「非関税障壁」。例えば日本の自動車市場を巡って、アメリカ側は日本独自の安全基準があるため、アメリカの車の参入を妨げているなどと主張しています。
次に「通貨問題」。アメリカ側は、日本が為替を円安に誘導しているため、アメリカ製品が割高となり、輸出の妨げになっているなどと主張しています。
さらに「政府補助金」。例えば、日本では米農家を守るために「政府の補助金が使われていて不公平だ」などという主張です。
一方でトランプ大統領は、日米安保条約を巡って「多くのお金を払って日本を守っている」などと、10日にも改めて不満を表明。関税交渉に絡めて、在日米軍の駐留経費の増額など、更なる負担を求めてくる可能性も指摘されています。
元外務事務次官 藪中三十二さん
「恐らく厳しい交渉でしょう。一律10%だけでなく、自動車及びその部品には25%の関税が上乗せされている。交渉次第では、今後また関税率を上げられる可能性があり、非常に厳しい交渉といえます」
「もう一方で、今の日本の立ち位置は悪くないんです。というのも、今後トランプ大統領が交渉するであろう75ヶ国、そのトップバッターが日本であるということ。トップバッターとの交渉が破談となると、関税交渉におけるトランプ氏のシナリオが上手くいかなくなる。その上で、交渉において今、日本がどの立ち位置にいるのか。決して悪くない立ち位置といえる」
「その時のポイントは何か。トランプ大統領はもう述べていて、それは“アラスカのLNG開発”です。日本や韓国の共同開発や投資を求めていて、その先に大きな玉としてアメリカの貿易収支の改善を見込んでいる。もう一つ、トランプ氏はホンダを筆頭に、アメリカに対して投資を検討する日本企業を評価しています。つまり自動車問題においても、大事なのは“日本からアメリカへの投資”です」
「日本がアメリカに対して一番投資している国ということを念頭に、その中でどれだけアメリカを納得させられる材料を提示することができるか。簡単ではないが、今の日本の立ち位置は悪くないということも念頭に、是非やってもらいたいと思います」
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