会社に属さず働く「フリーランス」は、いまや全国で460万人にのぼるとも言われています。取引先などで関わる場面も増えていますが、「報酬の低さ」や「立場の弱さ」といった課題も抱えています。
【写真を見る】「タダ働きもある」フリーランスの自由の裏にある“シビアな現実”
自由の裏にあるフリーランスの“シビアな現実”
あなたの周りにフリーランスの方はいますか?
会社員(40代)
「私のいるIT業界は、フリーランスでやる人が結構いる。フリーランスの方がイメージ的には優秀な方が多いかな」
会社員(20代)
「漫画家を志していて、足を突っ込んでいた頃があるので、その頃の友人とかは会社に属していない生活を送っている」
多様な働き方が広がる中、増え続けているフリーランス。
西村淳一さんもその1人です。息子・十五くんの育児をしながら、フリーランスのグラフィックデザイナーとして働いています。
フリーランスのグラフィックデザイナー 西村淳一さん
「自分で仕事の時間を決められる。働く場所もある程度、選べるのもメリットだと思う」
時間に”融通が利く”ため、率先して学校行事に参加したり、体調を崩した十五くんのお迎えに行くことも。
ただ、フリーランスとして働く中では、シビアな現実にも直面してきました。
西村淳一さん
「全く連絡もなく、私のデザインを少し変えただけの別の本が出版されてしまった」
数年前、西村さんがある書籍のために手がけたイラストや図表、約80点が改訂版に無断で使われていたのです。
西村淳一さん
「左が私が作ったもので、右が別書籍で使われた年表グラフ。 相手も丸っきりそのままではまずいと思ったのか、先が丸かったけど、こっち(改訂版)は尖らせた」
報酬も支払われず出版社に抗議しましたが、折り合わず訴訟に発展。その後、主張が認められ和解金が支払われましたが、以来、この出版社と取引はありません。
西村さんはフリーランスの多くが、取引内容に不満があっても口にできないと話します。
西村淳一さん
「『文句が少ない人にこれから頼もうかな』と、スパっと切られるんじゃなくて、少しずつ仕事が減っていったら嫌だなと。嫌われないように我慢することは色々あります」
“タダ働き” や450万円の“支払い遅れ”も…
20年ほどフリーランスで働いてきたエンドウ.さん。ミュージシャンとしてステージに立つほか、有名アーティストの楽曲も手掛けていますが、エンドウ.さんもフリーランスとして”理不尽な経験”をしてきました。
フリーランスの音楽クリエーター エンドウ.さん
「とある会社から『曲を作ってくれないか、君にお願いしたい』と言われ、頑張って何曲か作って『これでいかがですか』と言うと『サビの部分をもう3パターンくれ』と言われ、そういうのを何往復もして、合計10曲くらい作ったところで、『それなくなっちゃいました』と言われ、タダ働きというのもあります」
事前に報酬や支払期限を教えてもらえず、取引先からの支払い遅れに悩まされたこともありました。
エンドウ.さん
「450万円くらいですかね。アニメの音楽を作った時に8か月支払われず、『どうにか今月払っていただけませんか』とお願いして払ってもらえたから良かったが、周りでは泣き寝入りで払われなかったという経験も聞いていたので、とても怖かった」
“フリーランス新法”で変わることができるのか?
国はこうした状況を改善しようと2024年11月に“フリーランス新法”を施行。
フリーランスに仕事を発注する企業に対し、あらかじめ取引条件を書面などで明示することを義務づけ、委託料の値下げなど“買いたたき”を禁止しています。
石破茂総理
「“買いたたき”はやってはいけません。書面やメールで報酬額などきちんと明示しなければいけません」
政府もこうPRしますが、“フリーランス新法”を知っているか街で聞いてみると…
会社員(20代)
「全然知らない。フリーランスの働き方を…どっちなんだろう、守るのか縛るのか」
会社員(30代)
「知らないですね」
――“買いたたき”もあるようだが周りでは?
会社員(30代)
「あまりないと思う。僕が気がついていないだけかもしれませんが」
50人中44人が内容を知らないと回答。フリーランスで働くエンドウ.さんも、まだ大きな変化は感じていないと話します。
エンドウ.さん
「発注側の会社がもう少しフリーランス新法に合わせて変えてくれたら…と思っているが、
向こうも大変でしょうから…無理は言えないですけれども」
フリーランスの“立場の弱さ” 解消される?
藤森祥平キャスター:
フリーランスの皆さんの実情や、新しいルールがまだ広まっていないのがわかります。
フリーランスの職場の待遇改善などを目指している「日本フリーランスリーグ」の調査によると、フリーランスの方の3人に1人が「正当に報酬を得ていない」という回答があったそうです。
2024年11月にフリーランス新法ができました。報酬などの取引条件の明示や、“買いたたき”の禁止をしています。これに違反した場合、調査や指導の勧告などが行われます。それに従わないと、企業名を公表されたり、罰金を科されることもあるそうです。
小川彩佳キャスター:
テレビ業界にもフリーランスで働く方は多くいらっしゃいます。
トラウデン直美さん:
私の周りもフリーランスの方がほとんどで、私自身もフリーランスのような働き方をしているところもありますが、やはりフリーランスの人が主導権を握れる場合は、本当に一握りだと思います。多くの方は「本当はもうちょっとこうしてほしい」という思いを持ちながら働いているのかなと思います。
多くの場合、“やりがい搾取”というか、「自分自身の挑戦や自由な働き方のためにフリーランスを選択しているから、苦労が伴って仕方ない」と思ってしまっているところがあります。また、仕事のその先の付き合いのことを考えると、なかなか言い出しづらい。どうしても弱い立場になってしまう。しかし、それに納得してしまうと悪循環が続いてしまうので、この新法を機に、しっかり交渉していくことも大事だと思います。
小川キャスター:
フリーランス新法は、一つの安心材料にはなるとは思います。しかし、フリーランスの方々の立場が根本から変わるわけでは決してありません。私自身も事務所に所属せず個人でやっているという意味では、交渉を切り出すのも私自身です。その身から考えると、契約の内容を事細かに、新法を武器にして詰めたりすると、次の仕事に繋がらなくなるんじゃないかという不安から、結局身動きが取れない方がいても仕方がないと思います。
藤森キャスター:
日本フリーランスリーグには、「事前に契約を交わすことなどを面倒くさがる企業から、フリーランスに対して発注控えが起きている」という相談が寄せられています。これも何とかしなければいけませんよね。
教育経済学者 中室牧子さん:
フリーランス新法の施行以降、フリーランスの当事者は、この法律についての理解は深まってきていると思いますが、問題は発注者側ですよね。発注者側が、法令順守をきちんとしていなかったり、法律に対する認知や理解が低かったりすることがあるので、そこを当局の方で見ていく必要があると思います。特に映像や音楽のクリエイターなど、文化芸術系で特に問題が多いと指摘されています。
藤森キャスター:
今フリーランスの方で契約や仕事上のトラブルで悩んでる方は、「フリーランス・トラブル110番」があるので、ご相談してみてください。弁護士がサポートしてくれるそうです。
【フリーランス・トラブル110番】
0120-532-110
受付時間:9:30~16:30/土日祝日を除く
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<プロフィール>
トラウデン直美さん
環境問題やSDGsについて積極的に発信
趣味は乗馬・園芸・旅行
中室牧子さん
教育経済学者 教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」
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