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高層マンションの街・武蔵小杉の地域防災のこれから

国内
2025-06-18 16:13

人口が増え続けている武蔵小杉の「課題」

今回は「高層マンションの街・武蔵小杉の地域防災のこれから」について考えます。神奈川県川崎市中原区の武蔵小杉駅周辺には、20棟近い高層マンションがそびえたっています。


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交通のアクセスも良いこのエリアにはここ20年で転入者が多く、特に小杉町3丁目という駅前エリアは2004年に1046世帯・1851人だった人口が、2024年には2621世帯・5508人にまで増加しています。


小杉町3丁目はこれほど人が増えていますが、9割がマンション住民です。働き盛りの世代も多いために、ボランティアで小杉町3丁目町会の役員を担える人材は減少していて、さらにマンション住民の加入もほとんど無いために、ついにこの3月末で町会が解散となってしまいました。


仮に数千世帯のマンション住民が町会に入ったとしても、人が多すぎるゆえの問題もあったといいます。副会長をしていた安藤重美さんに聞きました。


安藤重美さん
「会費を回収するにもどうするかっていうのが難しくて、もしも例えば400世帯の所だとすると400もやらなきゃいけなくなっちゃう。なかなか昼仕事していて誰もいないっていう場合が多くてそこからもう既に難しいっていう」


町内会の解散と防災対策

町内には50階以上ある高層マンションもあり、1棟あたり数百もの世帯があります。そして、皆さんの記憶にもあるかもしれませんが、この近くでは2019年の台風災害で高層マンションの地下などが水没する被害がありました。直接的な大雨、強風のような被害ではなく、排水が追い付かない「内水氾濫」という都市部ならではの問題を考えさせられるきっかけになりました。


町会が無くなった今、自主防災組織はどうしていくのか?といった懸念がありますが、最後の町会長をしていた五十嵐俊男さんは今後の小杉町3丁目エリアの地域防災に期待することについて、このように話してくれました。


「解散する前になかなか(防災)組織を立ち上げるというのも難しいので、例えば高層マンションが町会の会員じゃないとか、いや町会だとか、そういう3丁目町会っていう枠が外れればね、お互いの動きが良くなるんじゃないかって、私はそれを期待するような面もあります」


新規マンション住民を中心にした防災対策とは

五十嵐元会長が期待する動きは、早速始まっています。それはマンション住民中心の、防災マニュアルの作成です。


小杉町3丁目のみならず、武蔵小杉エリア一帯のマンション14棟・7500世帯をまとめる「一般社団法人 武蔵小杉エリアマネジメント」が、各マンションの防災担当の住民などと週末に集まって話し合いを始めています。


自身も高層マンションに暮らす、一般社団法人 武蔵小杉エリアマネジメント代表理事の松尾寛さんが、今進めている新しい地域防災の取り組みについて話してくれました。


一般社団法人 武蔵小杉エリアマネジメント代表理事 松尾寛さん
「防災委員会とか、各マンションにあるわけですよ。で、今私たちがやろうとしているのはそれをまとめた一つの団体を作るというのが方針なんですよ。だからあえて言うなら『マンション防災協議体』みたいなのを作りたい。高層マンション用の、災害が起きた時のアクションプランというのをまとめようよという事を今やろうとしています。地震が起きましたといった場合にまず何をしましょうと。フロアごとに『無事ですシート』を全部ドアに貼るようにして、何も貼っていないところはじゃあ皆でドンドン叩いて何とかしなきゃいけないと、そういうアクションをしましょうと。それと同時に、本部をまず築きましょうと。あそこのフロアは誰か怪我しているみたいだけれど誰もいないよ、とかね。そういうのがきたら本部から動くようにしましょうというアクションプランを今作ろうとしています」


松尾さんが教えてくれたアクションプランは、人口の多い高層マンションエリアならではのものも多く、在宅避難をベースとした数日分の水や食料、簡易トイレ、階段を降りる時に足元を照らすランタン、それにオール電化の高層マンションも多いため充電器やバッテリーなどの備えについても盛り込みたいということでした。


町会という自主防災組織がなくなった今、こうして新しい「マンション防災協議体」が地域の防災組織に変わる役割になるべく、動き出しています。


2019年の台風で実現した「近隣住民の助け合い」

さて、高層マンションというと、一見、昔ながらの温かい近所づきあいとは遠いイメージがありますが「こんないい話もあるよ」と、松尾さんが実際にあったエピソードを教えてくれました。2019年の台風災害の際の話です。


一般社団法人 武蔵小杉エリアマネジメント代表理事 松尾寛さん
「2019年に1棟が水没した時にですね、このへん水で溢れたわけですよ。で、水が引いたんですけれど泥んこになったわけです。その時に『俺たちでやろうよ』と100人くらい集まったかな、あの時ね。マンションの前をダーっと全部掃除したんです。だから私はあれを見て本当に思ったんですけれど、災害がでても助け合いますよ。大丈夫ですよ。マンションの人だから助け合えないっていう人もいるかもしれないけれど、皆助け合いますよという自信ができましたね」


この時はマンション住民が中心となって、区内の一戸建ての多い別のエリアの泥掃除もしに行って皆で泥を運び出したそうです。新しい地域防災の組織が、マンション住民と地域の絆となり、これからも災害時に困っている人を皆で助け合えるような、安心して暮らせる街になることを願います。


(TBSラジオ「人権TODAY」担当・TBSラジオキャスター 加藤奈央)


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