
悪質な自転車の運転に対して反則金の支払いを求める、いわゆる「青切符」による取り締まりを2026年4月1日から始めることが6月17日に閣議決定されました。
焦点となっていたのは、自転車の「歩道通行」のルールです。
自転車の交通ルールについて道交法・交通問題に詳しい弁護士の高山俊吉氏に聞きます。
【写真を見る】自転車「歩道通行」どこまでOK?来年4月から“青切符”施行 知っておきたい交通ルール【ひるおび】
自転車“青切符”の反則金額決定 来年4月スタート
道路交通法施行令改正案が6月17日に閣議決定されました。
「青切符(反則金)」の対象となるのは113の違反行為で、2026年4月から施行されます。
取り締まりの対象となるのは16歳以上です。
≪青切符の主な対象と反則金≫
▼1万2000円
・スマホなどの「ながら運転」
▼7000円
・遮断踏切立ち入り
▼6000円
・逆走、歩道走行など通行区分違反
▼5000円
・イヤホンで音楽を聞きながら運転
・無灯火
道交法・交通問題に詳しい弁護士 高山俊吉氏:
刑事事件として犯罪になるという点では自転車も同じですから、元々自動車と同じ責任がないこともないわけですが、あまり問題にしないできた。それを、やはり事故が減らないから問題にするしかないというのが現状なんですね。
「歩道通行」パブリックコメントで意見相次ぐ
警察庁は反則金の金額を4月24日に公表し、パブリックコメントを募集していました。5900件を超える意見や問い合わせが相次ぎましたが、そのうち4000件以上が「歩道通行」に関する意見だったといいます。
・歩道走行は全て禁止されるのか?
・車道を走るのが危険なので逆に歩道を走行している
・歩道走行で反則金はおかしい
など
街で聞いてみるとー
「(車道が狭くて)車が来ていたりすると車道側に出ずに歩道を通過してしまうことはあります」(20代会社員)
「専用のレーンがあったりなかったりするので混乱するときがありますね」(30代会社員)
歩道通行 そもそもの決まりは
〈道路交通法第十七条第一項〉では、
車道と歩道の区別があるところは「車道走行」が原則となっています。
歩道を通行することができるのは原則「普通自転車歩道通行可」の標識があるときとされています。
コメンテーター 伊藤聡子:
許されているところだけ歩道を走っていいということなんですよね。
ただパブリックコメントにもありましたが、本当に道路がすごく狭かったり、車がスレスレにくると自転車も車も怖いだろうなというところもあるんですよね。日本はまだその辺が整備されていないところもありますよね。
今回警察庁が公開した歩道通行のルールに関する資料によるとー
≪取り締まりの対象外≫
▼13歳未満の子ども、70歳以上の高齢者
▼標識などで通行を認められている場合
▼車道通行が危険な場合(工事などしていて車道が通れない)
▼車道が狭くて危ない
恵俊彰:
年齢制限と標識は分かりやすいですよね。
でも下の2つ。危険な場合をどういう認識で判断していくんですかね。
コメンテーター ふかわりょう:
今回こういう規制を設ける一番の目的は事故を減らすこと。
でも事故を減らすためにとっている手段が、丁寧にやらないと余計に混乱や事故を招いてしまうので、やはりそこら辺の環境整備をしっかりしてからにしてほしいなとは思いますね。
【ケース1】歩道内の自転車 車道側or壁側どちらを走る?
歩道の走行が認められている場合、
自転車は、歩道内の「車道側」と「壁側」のどちらを走行するのが正しいのでしょうか?
コメンテーター ふかわりょう:
反射的に左側に寄ってしまいます。
コメンテーター 伊藤聡子:
車道側ですかね。いざというときは車道に出られるように。
➡歩道の中央から「車道寄り」を徐行するのが正しいとされています。
歩行者の合間を縫って走る蛇行運転などは、違反に問われると2万円以下の罰金または科料となります。
高山弁護士:
実際にこれをしっかり実行している人はどれだけいるだろうかという感じがあるのと、「原則と例外」と言われた瞬間に、人はやっぱり自分の判断で考えるし、好都合に考える場合が少なくない。だから、ルールとしての効力や実効性は「原則と例外」と言った途端にあやふやになるんですよね。
恵俊彰:
人が歩いてるとしたら壁側に行かざるを得ないときだってあるかもしれないし、車道側がちょっと危険だなと思ったら壁側に寄っちゃうかもしれないし、本当に難しい判断ですね。
八代英輝弁護士:
自転車で難しいのは、対歩行者との関係でいうと交通「強者」なんですけど、車との関係では交通「弱者」になるわけですよね。
境界の領域を行ったり来たりしなければならない。
簡単で簡易で免許がいらないというメリットがすごくある乗り物ではあるんですけども、
歩行者を守る点では、歩道では自転車はもう圧倒的に譲らなければならない位置になる。それをやはり認識することが必要だと思います。
【ケース2】停車中の車をよけて一時的に歩道を走行
元々車道を走っていて、停車中の車を避けて一時的に歩道を走行しまた車道に戻る。
この場合違反となるのでしょうか?
高山弁護士:
それは普通、許されます。例外として認められます。
ただし、本当にそうかはかなり厳密にチェックされると思わなければいけません。
この場合、車道側に出ていくことが期待できるかどうかですね。
原則としては、自転車は車道通行なので、停車中の車の右側を通るとされています。
しかし、停車中の車を避けるために追い越し車線へはみ出して走行する自転車も多く見られます。
高山弁護士:
後方の車から見ると、自分の左側から前に出てくるわけですよね。
それから自転車側からすると、通ろうとする際に駐車車両の運転席のドアが開いたりすることもあるわけですよね。だから実際に怖いな、危ないなと思えばどうしても歩道の方に上がりたくなる心理はよくわかりますね。
恵俊彰:
こういうことも青切符の対象になるかですよね。
高山弁護士:
そこは問題ですね。ただ、実際にそれを言うと「悪質でなければ取り締まりません」というわけです。
だけど悪質かどうかの判断はどこで行われるのかというのが、こちらとすれば安心できないというのが市民感覚じゃないでしょうかね。
警察庁は、取り締まりの対象として以下の考え方を示しています。
▼スピードを出して歩行者を驚かせる(歩道を走っている場合)
▼警察官の警告に従わない
▼事故に直結する危険な運転
高山弁護士は、「悪質なケースを取り締まるというが、どう運用されるかは疑問。
安全運転の意識を高めることが基本」
としています。
コメンテーター 伊藤聡子:
自転車ってもう足代わりみたいな感覚で、歩きの延長と考えている方もいらっしゃると思うので、そのあたりの認識がまだ追いついてないかなというのはありますね。あとはやはり自転車専用の道路をしっかり整備していく。これも同時に進めていかないといけないと思います。
恵俊彰:
このままこういう法律が施行されていくと思うと、もう少しルールを確認することが必要なのかもしれません。
(ひるおび 2025年6月18日放送より)
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<プロフィール>
高山俊吉氏
弁護士 道路交通法のスペシャリスト
交通法科学研究会事務局長
著書「入門 交通行政処分への対処法」
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