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【ニューイヤー駅伝】10000m日本記録保持者の塩尻和也とSUBARUのエース清水歓太 群馬出身同学年ライバルの軌跡

スポーツ
2024-12-29 06:00

2025年最初のスポーツ日本一が決まるニューイヤー駅伝 in ぐんま(第69回全日本実業団対抗駅伝競走大会、1月1日に群馬県庁発着の7区間100kmで実施)で、地元群馬県出身の同学年の2人が注目されている。


10000m日本記録(27分09秒80)保持者の塩尻和也(28、富士通)は伊勢崎市の伊勢崎清明高出身。SUBARUのエースで10000m27分31秒27を持つ清水歓太(28)は高崎市の群馬中央高出身。塩尻が大学時代に3000m障害で16年のリオ五輪に出場し、箱根駅伝エース区間の2区では区間日本人歴代1位記録もマークした。10000mでは昨年日本記録(27分09秒80)を樹立。塩尻が注目されてきたが清水もSUBARU入社後のチーム改革と軌を一にして力を伸ばし、塩尻とも勝ったり負けたりするまでになった。塩尻が10000m日本新を出した昨年の日本選手権には清水も出ていたが、「一番悔しかった」と言う。25年元旦に2人の軌跡はどう交わるのだろうか。


◇ニューイヤー駅伝の区間と距離、中継所
1区 12.3km 群馬県庁~高崎市役所
2区 21.9km高崎市役所~伊勢崎市役所
3区 15.3km 伊勢崎市役所~三菱電機群馬工場
4区  7.6km三菱電機群馬工場~太田市役所
5区 15.9km 太田市役所~桐生市役所
6区 11.4km 桐生市役所~伊勢崎市西久保町
7区 15.6km 伊勢崎市西久保町~群馬県庁


3000m障害で高校歴代2位 大学時代に五輪出場、箱根駅伝と快進撃を続けた塩尻

群馬県出身同学年2人の関係は、清水が塩尻の背中を追い続けてきた。


塩尻が中学時代はソフトテニス部だったため、高校1年時は清水の方が強かった。「初めて清水選手のことを知ったのは群馬県の高校総体(インターハイ県予選)で、清水選手が入賞(5000m4位。塩尻は18位)していて、同じ1年生なのにすごいな、と思いました」。


しかし1年の秋から塩尻がぐんぐん強くなり、新人戦5000mでは清水が優勝し塩尻が4秒差の2位。2年の県高校総体5000mでは塩尻が8秒差で勝った。その後の塩尻は3000m障害で全国トップ選手に成長していく。インターハイで5位に入賞。直接対決する5000mでは「塩尻が2回勝って僕が1回勝つ」(清水)という戦績だった。


3年時には塩尻が3000m障害でインターハイ優勝。記録も高校歴代2位(当時)をマークし、日本の3000m障害を担う選手と期待され始めた。清水も「そこは見て見ぬ振りをしていました。勝負は5000mだぞ」と塩尻の勢いへの対処に困っていたようだ。


大学でも塩尻が加速する。順大2年時に3000m障害でリオ五輪に出場。3年時には10000mを中心に出場し27分47秒87をマーク。4年時には箱根駅伝エース区間の2区で1時間06分45秒と、20年ぶりに区間日本人最高記録を更新した。清水も早大3年時に箱根駅伝9区区間賞で走ったが、塩尻との差は開く一方だった。
「大学では駅伝に出るにはどうしたらいいか、自分のことで精一杯で、ライバルだっていう意識も薄くなっていました。しかし箱根駅伝の選手名鑑のライバル欄には、笑われてもいいから塩尻の名前を載せていました。そこをブラしてしまったら、走ってもいないのに負けてしまう気がしたからです」。


大学時代の2人は、「おそらく同じレースを走っていない」(塩尻)。しかし清水がその気持ちを持ち続けたことが、SUBARU入社後の成長につながっていく。


SUBARUのチーム改革とともに成長した清水が記録で逆転

清水の入社2年目(20年)に、SUBARUが東日本実業団駅伝で予選落ちをしてしまう。


奥谷亘監督はそれを機にチーム改革に乗り出した。その中心が選手の自主性を引き出すことだった。練習メニューを選手自身が立案したり、トレーニング方法も選手が外部スタッフに協力を依頼したりした。


「僕は入社1年目の終わりから股関節のケガをして、3年目の5月くらいまで試合に出られなかったんです。2年目の11月に東日本予選で落ちて、チームが変わらなきゃいけないタイミングと重なりました。ケガからようやく回復した時期で、自分も背水の陣じゃないですけど、選手生命を懸ける覚悟でした。ケガをしていた間は自分でメニューを考えていたので、そのやり方を突き詰めてやれたことがよかったと思います。同じくらいの熱量でチームにも向き合いやすかったですね。同期の梶谷(瑠哉、28)がキャプテンになり、自分たちの世代が中心に進められた感じです」。


3年目はトラックで自己記録を次々に更新し、9月の全日本実業団陸上5000mで13分22秒25(5位、日本人2位)をマーク。11月の八王子ロングディスタンス10000mでは清水が27分45秒04で、27分45秒18の塩尻に先着した。


塩尻もその年4月に5000mで13分22秒80と自己記録で走っていたが、9月にタイムで抜かれ、11月には10000mの直接対決に僅差で敗れた。「2種目ともコンマ何秒で悔しかったです」(塩尻)


SUBARUは清水の入社3年目、22年のニューイヤー駅伝で2位と大躍進を遂げた。清水は当時最長区間だった4区で区間8位。3人を抜いてチームを3位に浮上させた。チーム改革の成果が、奥谷監督の想定以上に現れた駅伝だった。


清水は22年3月に10000mで27分31秒27をマーク。この種目でも当時の塩尻の自己記録を上回り、22年オレゴン世界陸上参加標準記録(27分28秒00)にも3秒と迫った。


しかし塩尻も、21年秋の清水の躍進が「こちらもモチベーションになりました」と振り返る。12月には5000mで13分16秒53の自己新をマーク。清水を記録で抜き返し、5000m、10000mでも世界が見え始めた。


22年は故障もあって停滞したが、23年のブダペスト世界陸上(5000m)、杭州アジア大会(10000m)に出場。そして12月には日本選手権10000mで27分09秒80の日本新、その年の世界8位記録と躍進した。


2人とも異なるプロセスで臨むニューイヤー駅伝

2人ともパリ五輪代表入りはできなかったが、ライバル関係が世界を目指す上でもプラスに働いてきた。清水が塩尻との関係を次のように話していた。


「ライバルでもあり、目標でもあるんです。レースに出るときに自分の目標は当然あるのですが、塩尻選手に勝てたらOKと感じるときもあって。塩尻選手が頑張っている限り、目標が下がることはありません。10000mの日本記録は一番出してほしくない相手に、自分が出したいタイムを出されて一番悔しかった。(日本人最初の)26分台も自分が出すつもりでいましたから。塩尻選手に追いつくにはオリンピックに出なければいけませんし、そのレベルの結果を出す。その目標を消してはいけないとずっと思って来ました」。


群馬から世界へ。ニューイヤー駅伝と同じテーマが、群馬出身の同学年2人にも当てはまる。今回のニューイヤー駅伝では、2人とも2区か3区への出場が予想されている。


SUBARUは三浦龍司(22)、並木寧音(23)、山本唯翔(23)の強力新人トリオが加入したが、清水がエースであることに変わりはない。チーム改革から3年が経ち(23年7位、24年14位)、奥谷監督は「甘さも出てきていた」と見ている。そこに強力新人が加入し、練習では新人が練習を引っ張ることも多い。チームが再度、活性化され始めて臨むニューイヤー駅伝となる。


塩尻の出場区間は予想が難しいが、富士通の高橋健一監督は「引っくり返してくれるとしたら塩尻でしょうね」と話す。
「前回は12月10日に10000mの日本新で走って、ニューイヤー駅伝にも合わせましたが走ってみたらダメでした。今回は夏に故障もありましたが、9、10月の試合には出ずに練習を継続できました。12月1日の日体大は調整しないで27分36秒37のセカンド記録です」。


富士通はチーム全体も、ニューイヤー駅伝に向けての練習の流れを変更した。例年は11月下旬の八王子ロングディスタンスにメンバーのほとんどが出場していたが、「ウチは短い距離が得意の選手が多い。(優勝回数の多い)東日本予選は80kmですがニューイヤー駅伝は100km。11月にしっかり走り込んだ方がいい」(高橋監督)という狙いで今年は八王子を回避。11月に合宿を行い、12月の日体大も前述のように調整をしないで出場し、塩尻を筆頭に7人が27分台をマークした。
「塩尻もずっとチームの練習に合流して、良い流れで来ています」。


塩尻が絶好調で臨むニューイヤー駅伝になりそうだが、清水も準備不足で出場した東日本予選(4区区間5位)と違い、「八王子(27分50秒81)も含めて、想定通りの練習と試合で進められてきた」と負けていない。


ニューイヤー駅伝では2年前に一度だけ、5区で直接対決した。塩尻が45分58秒で区間2位、清水が46分13秒で区間5位だった。今回2人が同じ区間で走る可能性は4分の1以下だが、清水は直接対決を熱望する。
「2年前は負けましたけど、近い位置でタスキをもらっていませんから、と言い訳をさせてください。今回は一緒に走りたいですね。同じくらいの位置でタスキをもらって、最後に彼を抜かすことができたら最高です」。


地元選手同士のデッドヒートが、地元を盛り上げるか。


(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)


※写真は左から塩尻選手、清水選手


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