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ジャニー氏による性加害問題 “補償の舞台裏”を取材 東山紀之社長「生前になぜ止められなかったのか」【報道の日2024】

国内
2024-12-29 20:01

ジャニー喜多川氏による性加害問題。1000人以上にものぼる補償申告がある一方で、補償の可否の判断をめぐる過程は“ブラックボックス”などと批判されています。その実態はどうなっているのか?株式会社SMILE-UP.の社長・東山紀之氏が補償の裏側を明かしました。


【写真を見る】“ブラックボックス”と批判された補償の舞台裏


ジャニー氏による性加害問題 「重要で、重大で、根が深いもの」

膳場貴子キャスター
「改めてこの1年間、性加害問題と向き合ってきて、どういうことが浮かび上がってきましたか」


SMILE-UP. 東山紀之 社長
「探りながらやっているというのが正直なところです」
補償させてもらった方が500人を超えるということなので、その人数だけ考えると大変重要で、重大で、根が深いものだなと」


ジャニー喜多川氏の恐るべき裏の顔が暴かれたのは、2023年3月。イギリスの公共放送「BBC」が報じた、半世紀もの間繰り返されてきたジャニー氏による性加害。


ジャニーズ事務所は「SMILE-UP.」と社名を改め、「法を超えた補償」を行うことになりました。


ジャニーズJr.の一員だった倉田順一(56)さんも、補償を求めました。


かつてJr.たちが寝泊まりした合宿所は、ジャニー氏の自宅。倉田さんは13歳でした。その現場では…


元ジャニーズJr. 倉田順一さん
「なんか…思い出しちゃいますね。やっぱり臭いを覚えているんですね。このマンションの中の臭い」


36年前、他の被害者と共に告発しましたが、新聞やテレビは報じませんでした。


元ジャニーズJr. 倉田さん
「取材は受けるが載らない。『何でだ』って。何でこんなにやっているのに、(告発を)何で見てくれないんだって」


性被害のトラウマは依存症となって現れました。


元ジャニーズJr. 倉田さん
「市販薬で強い薬を飲んで、作られている世界に逃げてしまう」

──お仕事は?
「できないですよ」


しかし、被害を申告した倉田さんに返ってきたのは、「在籍を確認できない」という答え。


元ジャニーズJr. 倉田さん
「いやいやいや、(在籍は)絶対あると陳情書を送った」


他の被害者からも批判の声が上がっています。


元「忍者」 志賀泰伸さん(2024年10月)
「補償基準が不透明で、ブラックボックス化されていませんか」


2024年12月19日には、元Jr.の飯田恭平さんと田中純弥さんの2人が460億円あまりの賠償を求めて、アメリカの裁判所に提訴したことがわかりました。


被害者の認定はどのように行われているのか。1年近い交渉を経て、その取材が実現しました。


“ブラックボックス”と批判された補償の舞台裏です。


リストやスケジュール帳などでも在籍確認 補償額の算定基準は明かされず

SMILE-UP.では被害者から申告を受けると、まず事務所に在籍していた事実の確認を行います。このときに精査されるのが、ジャニーズ事務所創業時からの内部資料。


SMILE-UP. 東山紀之 社長
「昔の資料をこれだけ集めてもらって、その中から本当に細かく見ていく作業が必要になってくる」


スタッフと弁護士、約50人が手分けして資料をチェックするのだと言います。


東山氏自身から、個人情報を伏せた上で、その詳細を聞くことができました。


1990年代後半からは、在籍者のデータがリストに集約されています。


SMILE-UP. 東山 社長
「この中に名前が載っていれば、すぐに在籍確認できます。ただ、時代によっては入ってないものもあります」


在籍者リストに載っていない場合、テレビ番組やパンフレット、タレントの昔のスケジュール帳などを一つずつ見て、申告者の名前などが載っていないか確認すると言います。


在籍が確認されるか、申告内容から被害の可能性が高いとされると、被害者救済委員会の元裁判官が聞き取りを実施し、補償額が算定されます。


独立性を担保するため、SMILE-UP.は補償額の決定には関与せず、救済委員会と被害者の間で決まった金額を支払うだけだと言います。


──どういう聞き取りを行っている?
「僕らも知らないです。知ってはいけないので」

──補償金額はどう決定?
「そこも僕らは知らないです」


補償額の具体的な算定基準は明かされていません。


救済委員会によれば、「被害者から公開しないよう要望されている」、「基準が公になると模倣される可能性もある」から、としています。


2024年12月27日までに▼補償申告者1011人。そのうち▼補償金が支払われたのは533人、▼補償しないとされた人は216人です。(236人とは連絡がとれず、11人が手続き中)


膳場キャスター
「補償しない判断はどういうときに?」

SMILE-UP. 東山 社長
「あまりにも確からしさがないと、先生(補償に関わる弁護士)たちが判断したということだと思う」


膳場キャスター
「取りこぼされている人もいるのではないですか」


SMILE-UP. 東山 社長
「記憶が少しでもあって、資料と照らし合わせたときに確からしさがあれば」


膳場キャスター
「新たな証拠・証言が出てきたら、対応は変わっていく可能性も?」

SMILE-UP. 東山 社長
「もちろんそうです。その確からしさがあれば、僕らは拒否は基本的にはしません」


Jr.の管理は主にジャニー氏が行う「スタッフもJr.にタッチさせない空気」

とりわけ被害が多かったのは、ジャニーズJr.。デビュー前にバックダンサーをする
子どもたちです。


Jr.の管理を主にジャニー氏が行っていたため、在籍がきちんと記録されておらず、補償の判断をさらに難しくしていました。


当時Jr.に関わっていたスタッフはほとんどが事務所を辞めており、申告者の在籍確認には元Jr.も協力していました。


元ジャニーズJr. A氏
「(Jr.は)基本的にジャニー氏の管轄。事務所のスタッフも基本的にJr.にタッチさせない空気があった」


芸能界のトップに君臨した人物の、裏の顔。Jr.から見れば、ジャニー氏はデビューを決める絶対的な権力者でした。


ジャニーズ人気の高まりとともに、数十人から始まったJr.の数も、ジャニー氏が亡くなる頃には300人規模に。被害も拡大していきました。


ジャニー氏による性加害を、東山氏は「噂としては聞いていた」と発言しています。


膳場キャスター
「合宿所への出入りもされている東山さんが、噂で留められていたこと自体がすごく不思議」

SMILE-UP. 東山 社長
「それが僕の反省点ですね、やはり今となっては」


膳場キャスター
「私は今、9歳の女の子を育てているんですけれども、性被害に遭ったら本当に辛いなと思って。ショッキングじゃないですか、内容的に。それでも確かめようという気持ちにはならなかったのですか」

SMILE-UP. 東山 社長
「年功序列が大変厳しい世界でした。僕自身も忙しかったし、若かった。芸能界っていろんな噂があるので、それを一つ一つ検証する作業もなかなかできないとは思う」


膳場キャスター
「ジャニー氏の性加害について、今改めて思うところを伺いたい」


SMILE-UP. 東山 社長
「生前になぜ止められなかったのかといういうことですね」
「あのときにきちんと向き合っていたら、被害を受けた方はもっと少なかったのかなという気持ちもあります」


ジャニーズJr.の内部で何が起きていたのか。


合宿所で繰り返し被害に遭ったという元Jr.が、初めてカメラの前で取材に応じました。


Jr.も“噂”を気に掛ける余裕はない「集団でいながらも、孤立している状況」

元ジャニーズJr.
「かなり重度な(被害)内容です。嫌なことだけど、例えばステージのバックで踊るとか、テレビの撮影をするとか、なかなか普段体験できることじゃない。数分我慢すれば、という感覚」


噂が広がることを恐れてか、ジャニー氏は直接声をかけた少年しか合宿所に入れなかったと言います。


元ジャニーズJr. 
「『合宿所の中のことをペラペラしゃべるな』と、厳しく言われていた。例えばレッスンでも、合宿所に行ったことがあるという人と話をしていたら、休憩のときに僕のところに来て『何話した?』って。知らなくて当然なんですよ、隠してたから、ジャニー氏が」


彼は在籍確認にも協力していますが、実態を知るだけに、疑わしい被害申告があることに気づきました。


元ジャニーズJr.
「レッスン場が全然変な場所が書いてあるとか、初めてそこで虚偽申告みたいなものを知って、『これ、まずいぞ』と。お金欲しさに申告する。被害者からしてみたら、一番許せない」


16年半にわたりJr.として活動していた、野田優也さん(40)。当時、仲間たちと性加害の噂を話題にすることは、ほとんどなかったそうです。


元ジャニーズJr. 野田優也さん
「それが本当か嘘かもわからない部分があって、言い方悪いですけれど、みんなライバルだったので、そうして(ジャニー氏に)近づかせないじゃないけど、けん制なのかなと思う部分もあった。全員が被害に遭ったのかと言われたら、そうじゃない話なので」


元Jr.で、今はバーを経営する伴貴将さん(40)。在籍中はドラマにも出演。もはやJr.はバックダンサーにとどまらず、単独コンサートさえ開かれる程の人気でした。


噂を気にかける余裕など、なかったと言います。


元ジャニーズJr. 伴貴将さん
「忙しいというか、ほぼ記憶がなくなるぐらいのスケジュール。仲の良いJr.がどういう活動をしているのかも、正直わからない。僕らは集団でいながらも、孤立しているような状況」


当時、何も出来なかった自分に責任を感じ、野田さんとともに在籍確認に協力しています。


その過程で声を上げられず、心に傷を抱えた仲間もいることを知りました。


元ジャニーズJr.伴さん
「声を上げられていない方、いろんな方々の思いに関しては、ひとえにまとめきれない部分があると思う」
「『いくらもらうんだ』『どうだったんだ』とか、普通に投げかけてくる人もいる。一緒に頑張ってきた子たちも同様の状況にさらされているのかと思うと、そこはすぐに何とかしないとなと」


「在籍が確認できない」と言われた、元ジャニーズJr.の倉田順一さん。元Jr.たちの協力で在籍を裏付ける資料が見つかり、補償を受けることが出来ました。


SMILE-UP. 東山紀之 社長
「この方なんじゃないかと。なかなか僕らとしても判断が難しいけど、面影があると言われればあるので」


倉田さんの許可を得て見せてもらった資料映像に映る、一番後ろの列で踊る若者。不鮮明ながら、協力者や本人の指摘で倉田さんと判断されたのです。


SMILE-UP. 東山 社長
「とにかく皆さんに探してもらって。知識を借りたり、見てきたものを教えてもらったり、非常に助かっています」


その後、倉田さんは東山氏と面会し、謝罪を受けました。


元ジャニーズJr. 倉田さん
「けど、まだ(補償対象外の人が)他にもいらっしゃるじゃないですか。これま
で僕にしてくれた対応をお願いしたい。同じような感じで、つっぱねるのではなく」


けれど、補償で全てが終わるわけではないのです。


心のケアや誹謗中傷の対策はいつまで続くのか…課題は山積み

元Jr.の二本樹顕理(にほんぎ・あきまさ)さん(41)は、今も性被害のトラウマに苦しんでいます。


被害を告発すると誹謗中傷が相次ぎ、2024年4月、妻の故郷・アイルランドに移住しました。


鬱や不眠に苦しみ、薬が欠かせません。被害者救済の一環で、月に2回カウンセリングなどを無料で受けていますが、支援は果たしていつまで続くのか。


元ジャニーズJr. 二本樹さん
「(SMILE-UP.)廃業後は被害者の方々に対するサポートやケアはどうなるのか、今のところ不透明で特に説明も受けていません。最後の1人まで精神的なケアとサポートと補償をしっかり行ってほしい」


心のケア、誹謗中傷対策、課題は山積しています。


SMILE-UP. 東山紀之社長
「期限は決めずに窓口はしっかりと開けておきたい。廃業のことは今考えていません。精神的なケアが必要な方には窓口がないといけないし、誹謗中傷に対しても窓口があります。ゴールは一切決めていません」


申告者の中には、名誉回復を求める人もいました。


望むのは父の名誉回復 「勇気ある行動をした1人として認めて」

1962年に結成された初代「ジャニーズ」のメンバーで、被害に遭った中谷良さん。3年前に74歳で心筋梗塞で亡くなりました。


中谷良さんの娘・江麗さん
「(父と母)2人の事情で結婚できなくて、3人で写っている唯一の写真」


娘の江麗さん。父・中谷良さんは精神的に不安定で、一緒に暮らすことは叶いませんでした。


江麗さん
「20歳のときに1回、父とわかって会いに来てくれて、それまで電話で話をしていた。ずっと病んでいたというか引きずってて、(母は)頑張って良ちゃん(父)を励ましていた」


中谷さんは、ジャニーズ時代の多忙さや性被害による心の傷から、睡眠薬に依存するように。メディアは中谷さんを「落ちぶれた元アイドル」と興味本位に報じました。


1989年、中谷さんは自身の性被害を綴った告発の書を世に送っています。


「ジャニーズの逆襲」より
「マスコミの方々、いたいけな少年がもうこれ以上被害を受けないように取り上げて欲しいと思います」


しかし、こうした告発本はどれも黙殺され、反逆者扱いさえ受けたのです。


10年後の1999年、「週刊文春」の報道が裁判に発展。「性加害を認める判決」が出たにも関わらず、メディアは沈黙します。


最後まで人間不信に苦しんだ父。娘は意を決します。


中谷良さんの娘・江麗さん
「告発本を出して、良ちゃん(父)がこの問題が今の時代にこうなって、どうしたかなってすごく考えて。補償とかよりまず、被害者として認められるべきだと思った」


戸籍上はつながりのない江麗さんに代わり、被害を申告したのは江麗さんの伯母(中谷さんの姉)でした。


伯母は別の番組の取材に答えましたが、江麗さんは今回、補償を申告した理由を自分で説明したいと、私たちの取材に応じました。


東山氏と面会した江麗さんは、補償金を受け取りませんでした。


江麗さん
「(東山氏に)『反逆者だと思いますか?』と投げかけたときに、『いや、思いません』『事務所の大先輩として尊敬しています』という言葉ももらって。反逆者じゃない勇気ある行動をした1人として認めてもらいたい。その姿で思い出してもらいたいと思う」


望んだのは、父の名誉を回復することです。


江麗さん
「声をあげた。でも結果的に取り合ってもらえないというのが変われば。それじゃないと声を出す人もいなくなってしまう。その勇気を無駄にしないような世の中に、社会になってほしい」


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