消費税の減税をめぐり、発言のブレを指摘されてきた石破総理。ついに「減税を行わない」意向を固めたようです。その背景には何があるのでしょうか。
なぜ?総理「消費税減税しない」
井上貴博キャスター:
これまでの消費税の減税をめぐる石破総理の国会での発言です。
▼3月28日「一概に否定しない」
▼4月1日「適当ではない」
▼4月7日「現時点で言及すべきではない」
▼4月30日「よく精査し議論したい」
このように発言していました。そして、5月12日の衆議院予算委員会で石破総理は「短い期間に限って減税することが、本当に一番困っている方々にとっていいことなのか」と発言しています。
減税に対してかなり後ろ向きになったのかと思いますが、その背景には何があるのでしょうか。
TBS報道局政治部 中島哲平 官邸キャップ:
石破総理は、消費税減税の財源と効果に疑問を持っているようです。
立憲民主党と日本維新の会は、「食料品などの軽減税率を0%にする」と提言しており、その場合、年間約5兆円の財源が必要になります。
国民民主党は、「消費税を一律5%に引き下げる」と提言しており、その場合、年間約15兆円の財源が必要になります。
その財源について各党の考えは、立憲民主党は「財源は調査中」、日本維新の会は「物価高による税収増加分を充てる」、国民民主党は「赤字国債も辞さない」考えです
それに対して石破総理は、将来世代につけを回してはいけない、国債を使って減税するべきではないとしており、財源が見つかっていない。そのため責任政党としては、消費税の減税をするべきではないという考えに変わってきているようです。
そして、消費税の減税は高所得者にも恩恵があるので、物価高に困っている低所得者により厚い支援をするための政策は、消費税の減税ではないという考えが高まってきたようです。
「赤字国債」の発行で国際的な信用度を失う?
井上キャスター:
減税に対し後ろ向きな背景には、財源と効果があるようですが、これまでの政府の説明を聞くと、自分たちがやりたい政策については、兆円規模の予算を組み財源を出しますが、後ろ向きなものに対しては、財源がないことを言い訳にしているようにも受け取れます。
ターゲットについても、食料品などの軽減税率の引き下げを行えば、低所得者にリーチするような気がします。
文芸評論家 三宅香帆さん:
今トランプ大統領の関税に関する話から、国債がどれぐらい信用を失うと、価値が変わってしまうのかが、日本もアメリカを見て、身にしみてもわかったところがあると思います。
たしかに、赤字国債を出すと国債の信用度が下がり、日本もアメリカと同じように国際的な信用度を失い、それによりまた物価が上がるんじゃないかという怖さを感じたりはします。
TBS報道局政治部 中島哲平 官邸キャップ:
自民党は、今それに対して非常に懸念しています。赤字国債を発行することで、国債の信用度が下がり、日本の経済の悪化につながったり、財政破綻といった問題にも繋がりかねないことを非常に強く訴えています。
井上キャスター:
国債を発行しすぎると、借金が多くなり国際的な信用を失うんじゃないかという懸念もありますよね。
文芸評論家 三宅香帆さん:
どれくらい国債の信用度と物価が関係してるのか、よくわからない方も多いと思います。
TBS報道局政治部 中島哲平 官邸キャップ:
国債を発行すると、IMFといった国際機関からも財政に対して問題視されることがあります。いくら国債が積み重なると財政破綻になるのかは、一概に数字で言えないのが難しいところではありますが、少なくとも楽観視していいものではないと思います。
「減税しない」意向も…現行の経済対策は?
井上キャスター:
ここからは、消費税の減税をするのか、野党との兼ね合いも含めて見ていきましょう。もし減税をしない場合、ほかにどのような政策を行うのでしょうか。
TBS報道局政治部 中島哲平 官邸キャップ:
石破総理としては、2025年度予算の中で、高校無償化の先行措置、備蓄米の放出、ガソリン価格10円の引き下げ、電気・ガスの補助金に関しては、5月中に詳細な制度設計を考えていくといいます。この他にも、既に低所得者への3万円の給付金などの政策は行われています。
ただ、それがなかなか国民の実感に伝わるところまで至っていないのが、国民の理解に繋がらないところだと思います。
そして政府としては、新たな経済政策案として、備蓄米の追加の放出・買い戻しの見直し、秋に低所得者へ、場合によっては幅を広げて中間所得層まで現金を給付するという意見が出てきています。
井上キャスター:
まだ選挙まで時間があり、どうなるかわかりませんが、このまま進むと、野党は減税を打ち出し、与党は減税を打ち出さない。そうすると、選挙で国民の審判を仰ぐということにもなりそうな気はします。
文芸評論家 三宅香帆さん:
減税に代わるような、自民党からの目玉となる政策が、選挙にあたって見たいですし、それがないと、今後日本の物価が変わり、賃金が上がるのだろうかと、正直思ってしまいます。
出水麻衣キャスター:
今国会で、減税をするのかしないのかに時間が割かれてるので、財源がないからという理由で議論が止まってしまってるっていうのは、もったいない気もします。
TBS報道局政治部 中島哲平 官邸キャップ:
12日の予算委員会でも、各党から財源も示しながらの議論が活発になってきたので、そういった意味ではいい流れにはなってきていると思います。
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<プロフィール>
三宅香帆さん
文芸評論家 31歳
著書「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」で「新書大賞2025」受賞
中島哲平 記者
TBS報道局政治部官邸キャップ
過去に石破氏のドキュメンタリー映画制作
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