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1人あたり2~4万円? 与党 参院選見据え「現金給付」方針一致、一度断念も…なぜ再浮上? 自民「給付ではなく還元」の思惑【Nスタ解説】

国内
2025-06-11 21:44

きのう(10日)、自民・公明の与党が物価高対策として4月に一度断念したはずの現金給付を行う方針を確認しました。なぜ、このタイミングで現金などの給付が再浮上したのでしょうか?


【写真を見る】各政党の減税案・給付案


自民党“還元案”の財源は?「給付」ではなく「還元」のワケ

高柳光希キャスター:
参議院選挙を目前に、一度断念したはずの自民党の現金給付が「還元」という形で再浮上しました。


改めて還元案を見ていくと、▼税収の上振れ分から1人数万円程度を還元し、▼マイナンバーカードの公金受け取り制度を導入するということです。


給付ではなく、あくまで「還元」。ただやはり還元と思わない人やバラマキなのではないかと思う人も多いと思います。自民党はこのあたりをどのように考えているのでしょうか?


TBS報道局 政治部 長田ゆり 記者:
還元はあくまでも案の一つなんですが、ある自民党幹部に聞いたところ、「森山幹事長は『バラマキ・減税は許さない』と言ってきた。ただ、税収の上振れの範囲であれば逃げる余地はあるだろう」というふうに説明しています。


高柳キャスター:
各党の減税案・給付案を見てみても、給付案の中で「還元」という言葉を使っているのは自民党だけなんですよね。


「The HEADLINE」編集長 石田健さん:
やはり有権者は賢いので、この結果を見て「なるほど。今回はバラマキではなく還元なんだ」と思う人は少ないんじゃないかなと思ってしまいます。


井上貴博キャスター:
自分が自民党議員だと仮定すると、「他の党に比べて、選挙に弱そうだな」と思ってしまいそうなんですけど。


長田ゆり 記者:
物価高対策というところでは、「減税」と「給付」は選択肢として色々と議論されてきたと思いますが、今回、自民党が打ち出したいのは、給付の「即効性」と「スピード感」だというふうに思います。


高柳キャスター:
実際にどのように還元をしていくのでしょうか?わかっている範囲でお願いします。


長田ゆり 記者:
還元の財源というのは、税収の上振れ分だと話しています。


直近の数年ではどれくらい上振れていたのかを見てみると、大体3兆円程度でした。なので、今回財源にしようとしている令和6年度も同程度だった場合、還元は1人あたり2万円~4万円になるのではないかと話している人もいます。


これが国民に一律で給付されるのかを取材したところ、ある自民党の中堅議員は、「マイナンバーの公金受け取り制度を利用した場合は、所得制限などをかけると自治体からの給付になり手間がかかるが、一律にすれば政府から瞬時にダイレクトに給付できるため、マイナンバーの制度を利用すると仮定した場合は、基本的には一律になるのではないか」と話していました。


一方で、住民税非課税世帯への上乗せ案というのも別途で検討されています。例えば、国民一律に2万円、住民税非課税世帯には4万円など、収入によってもらえる金額に差がつく可能性も出てきているということです。


高柳キャスター:
マイナンバーカードを使った公金受け取り制度が導入されて実現すると、初の試みということになります。ただ、まだマイナンバーカードの普及率も80%弱ということで持っていない人に対してはどんな対応をされるのでしょうか?


長田ゆり 記者:
政府の基本姿勢としては、▼マイナンバーカードを持っていない人には申請を促し、▼口座を紐付けていない人には口座に紐付けるよう促すとしています。


それでもマイナンバーカードを持たない、あるいは口座に紐付けない人に対しては、コロナ禍の一律10万円の給付のときのように、別途で自治体に給付金の申請を行うなどの手続きが必要になる可能性があり、受け取りにも時間がかかるという可能性があるということです。


「バラマキ」ではなく「還元」という根拠はどこに?

高柳キャスター:
ここまでの説明で、自民党が「バラマキ」ではなく「還元」だという根拠がいくつかあるそうですね。


長田ゆり 記者:
自民党がバラマキではなく還元であるという一番の理由は、「財源を税収の上振れ分にする」と明言しているからです。赤字国債を出さない範囲での還元を行うことが一番の理由になっています。


また、住民税非課税世帯の上乗せ案について、「給付=バラマキと言っても、この物価高の中で本当に困っている人たちへの手当は必要なのではないか」というのが今の自民党の考えです。


そして、マイナンバーカードの利用が実施されれば初運用ということになるので、党内では、便利な制度を普及するための試みとしても意義があるのではないかという声もあります。


井上キャスター:
現金の給付となると、国民にお金をばらまいて票を買っているように見られるのは嫌だという思いがあり、「これは給付ではなく還元なんだ」という考え方なんだろうと思います。


それでいうと、税収の上振れ分を使うというよりも、例えば食料品にかかる消費税をゼロにするというほうが納得してもらいやすいと思うのですが。


石田健さん:
率直に言って二つあると思っていて、一つは、やはり国は会社ではないということです。


国というのは、会社のように「営業利益が出たからボーナスを配る」という考え方とは根本的に異なります。なので、税収分を社会保障やインフラ、未来に充てるという考え方が当然のように出てくるべきです。


しかし、直近の上振れした税収分を国民に還元するという国民民主の論理に乗っかっているという印象は拭えない。


もう一つは、社会保障が持続可能ではなく、多くを国庫から出しているという現状の中で、正面を切った議論をせずに「還元」という目先のマジックワードというか言葉尻だけを変えたような姿勢を打ち出しているというのはあまり誠実ではないと思ってしまいます。


出水麻衣キャスター:
一旦還元してくれるのなら、これからも上振れ分が出たら還元という選択肢が出てくるのかなと思ってしまいますが、そのあたりはどうでしょうか。


長田ゆり 記者:
ある財務省の幹部は、「今回財源にしようとしている税収が上振れる可能性はあるが、トランプ関税の影響などで、今年度の税収が下振れる可能性もある」と話していました。つまり、毎回上振れるとは言い切れない中で、本当に正しい考え方なのかというのはもう一度考えなければいけないと思います。


石田健さん:
この論理が成立して予算を大きく取ってしまえば、「今年は上振れませんでした」というような非常に恣意的な運用ができてしまうわけなので、ここはやはり気になるところです。


井上キャスター:
その前例を作ってしまいかねないということですよね。


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〈プロフィール〉
長田ゆり
TBS報道局政治部
自民党の政策を取材
柔道は黒帯
趣味は永田町のランチ開拓

石田健さん
ニュース解説メディア「The HEADLINE」編集長
鋭い視点で政治・経済・社会問題などを解説


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