食の欧米化などにより、生産、消費ともに「牛乳大国」に成長した中国。一方で、日本と同じく酪農家の廃業が進み、その数が急激に減っています。中国でいったい何が起きているのでしょうか?
中国・東北部の黒竜江省。牛乳の生産量が多いことで知られる地域ですが…
記者
「かつては牛乳をつくっていた場所ですが、牛乳価格が下落してしまったことにより廃業に至ったということです」
中小酪農家
「(牛乳は)一番良いときで1リットル100円で売れたけど、その後、60円になって、いまではたったの40円」
「(Q.以前は他にも酪農家はいましたか?)たくさんいました。うちでも牛を飼っていました。みんな次々に廃業して村を出て行きました」
牛乳価格の下落に加え、エサの価格が高騰したこともあって経営が悪化。中国全土で酪農家の数は5年間で7万戸から2万戸に激減しました。
中小酪農家の経営をさらに厳しくしているのは、最新の設備を利用した大規模な酪農の登場です。
機械に載せられて自動でぐるぐる回る牛たち。よく見ると、牛には乳をしぼるための道具がついています。1000頭以上いる牛の体調、発情のタイミングなどをデータで一括管理する、いわば最新鋭の「牛乳工場」です。工場には「牛乳業の見本をつくろう」のスローガンも。
中国政府は2000年ごろから「300頭以上の牛を飼う大規模酪農家に限り、補助金を支給する」という政策を打ち出し、酪農の「大規模集約化」を推し進めました。
そこに商機を見出した大手牛乳メーカーが次々と参入。その結果、中国はいまや、インド、アメリカなどに続く世界第4位の牛乳生産大国になりました。
記者
「常温の牛乳が山積みで売られています」
中国では一般的な保存期間が長い「常温牛乳」ですが、冷蔵輸送技術の発達により、ここ10年で新鮮な牛乳の流通が拡大し、消費を後押ししました。
「子持ちの家庭は毎日牛乳を飲みます、栄養になりますから」
「牛乳を飲み始めて2、3年です。私が小さいころは牛乳を飲む習慣はなかったので」
国内の牛乳生産量が増え消費が拡大する一方で、大規模化の流れに取り残されたのが中小の酪農家たちです。なかにはこんな苦肉の策も…
中小酪農家
「茶色は食肉用、白黒は乳牛。(Q.いま牛を飼っているのは牛乳のため?)違うよ、肉を食べるためだ。もう乳牛は諦めて食肉用にしたよ」
中小酪農家の苦境をよそに、中国政府はさらなる酪農の大規模化を推し進めることで牛乳の自給率アップを目指す方針です。
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