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上級生が激しくドアを叩き…「おい!出てこい!」 防衛大の元学生“いじめ”の訴え 適応障害で退校 幹部自衛官養成の現場で何が【調査報道】

総合
2024-09-20 14:18

自衛隊の幹部を養成する防衛大学校についてお伝えします。防衛大学校で繰り返されていたのは、上級生による指導の域を越えた“いじめ”です。被害を受けた1年生が撮影した映像に写っていたのは…


【画像で見る】「出てこい!」防衛大“いじめ”動画の記録、黒塗りの“指導記録”


自衛隊の幹部養成学校で何が?

真っ暗な部屋。
ドアの外から「出てこい!」という怒鳴り声が響きます。


「出てこーい!」「出てこーい!」「出てこーい!」

この映像が撮影されたのは、防衛大学校の中。

一体何が起きていたのでしょうか?


神奈川県・横須賀市にある防衛大学校。防衛大臣直轄で、幹部自衛官を養成するために4学年、約2000人が学んでいます。

学生といっても、立場は特別職の国家公務員。学費はかからず、月給やボーナスも支払われます。


学生は4年間を寮で過ごします。朝6時起床。原則1年生から4年生の各学年2人ずつ、8人1部屋で暮らすことになっています。


2023年4月の入校式。整列する新入生の前で、一糸乱れぬ行進を見せるのが上級生です。

「(新入生は)この時、歩けないので横で見ている」
「外から見ていたら、かっこいいんですけど」

こう話すのは、2023年、まさにこの入校式のときに防衛大に入った男性と母親です。


元防衛大生の母親
「これが合格通知。飛び跳ねて喜んだ。制服を着ている姿は自慢に思っていた」

男性は同期の仲間にも恵まれ、勉強や訓練も順調にこなしていました。

しかし、寮生活での上級生からの“指導”は厳しく、とてもつらかったと話します。


元防衛大生
「部屋に内線がある。なるべく早く出ないといけない。1年生は走って電話を取りにいかないと(上級生に)怒られる。部屋に呼び出すか廊下に呼び出されて、時間が無くなって、ご飯を食べに行けない人がいたり、風呂に入りに行けない人がいる」

そして、自分は特に上級生たちに目をつけられていて、指導ではなく、もはや“いじめ”と言うべき状態だったと訴えます。

元防衛大生
「罵声だったりとか扉を叩かれたりとか、夜中に自分がいる部屋の内線にいたずら電話がかかってきて寝られない」

Q.この場を逃げたいとか、考えはめぐらなかった?


元防衛大生
「めぐるが、それをすると同学年の人たちに迷惑がかかってしまう。『お前たちの同期が逃げ出したぞ』と、また厳しくなったり連鎖がある」


“適応障害”判明後も…「出てこい!」

2023年11月、男性は不眠や食欲不振が続いているとして、適応障害と診断されました。

「出てこい!」という怒鳴り声は、部屋に1人でいた男性に向けられたものでした。

このとき、男性は教官に相談し、8人部屋から個室に移されていました。
扉の外にいたのは複数の上級生とみられています。


元防衛大生
「朝起きて清掃の時間がある。その時間にドアを叩いて走って逃げていく。水撒かれたのか、部屋の入り口が水浸しになっていた」

適応障害と診断された後も続いた上級生たちの行為。

当時、男性には4年生からこんなメッセージが送られてきました。


4年生から送られたメッセージ
「お前がなにもしてないのに給料をもらってるのがまじで納得いかない」
「おれはお前みたいなやつを男として絶対認めねぇ」

母親は男性から送られてきたこの映像を見て・・・


元防衛大生の母親
「衝撃しか無かった。手も震えたし涙も出てきたし。心を病んでいる人に対して、ドアを叩いたり、罵声を浴びせたり、追い込むことしかしていない」

母親は息子を自宅に帰らせる決断をしました。

この映像を見た教官も驚いた様子だったといいます。


元防衛大生の母
「『こんなに酷いことが起きてるんですね』と言われた。『これは防衛大では当たり前の話か』と聞いたら『そうではありません』と言われた」

男性と母親は、防衛大側の対応にも不信感を募らせ、男性は自宅療養を続けたまま、2024年3月に退校しました。


なぜ繰り返される 防衛大の“いじめ”

防衛大では、過去にも「上級生による指導」と称した深刻ないじめが起きています。


2013年に入校した男性が、上級生らに体毛を燃やされたり、殴られたりしたなどとして訴えを起こしました。

この裁判では、上級生ら7人に賠償が命じられた他、実態を把握せず、適切な指導をしなかったなどと、防衛大側の責任も認められました。

自衛隊の実態に詳しい弁護士は、防衛大特有の上下関係が背景にあると話します。


自衛隊の人権問題に詳しい 佐藤博文弁護士
「学生の中にも、現場の自衛隊の組織と同じように、隊長・副隊長からヒエラルキーが完全にできている」

今回、JNNは防衛大の学生に対する過去10年間の懲戒処分の内訳を情報公開請求し、独自に集計しました。


内容は「パワハラ」や「私的制裁」など多岐にわたります。


全体の傾向として、4年生が処分されるケースが明らかに多いことがわかりました。中には、全体の60%近くが4年生だった年もありました。

佐藤弁護士は、立場の強い4年生が問題を起こしやすい実態がわかると指摘します。

自衛隊の人権問題に詳しい 佐藤博文弁護士
「教官とか学校も、そこにメスを入れない。ポツポツ出てくる様々な事案に、とにかく個別的に対応してるだけ。根本にある仕組みについてメスを入れない」


黒塗りの“指導記録”「異常としか言えない」

防衛大を退校した男性の母親は、入校してから間もない頃に息子からもらった手紙を今でも大切に保管しています。


入校直後に書かれた手紙
「やはり家での食事や洗濯のありがたみをひしひしと感じます」
「洗濯は何年前のものかわからない古い洗濯機を使っているので、本当に綺麗になっているかわかりません」


元防衛大生の母親
「『この子らしいな』と思った。こういう手紙を読み返すと、すごく残念だという気持ちが込み上げてくる。せっかく楽しんで行けていたのに、なんで潰されないといけなかったのか」

退校後、男性は防衛大側が上級生たちにどう対応したのか知るための手がかりになればと、自分への指導記録を開示請求しました。


しかし、そのほとんどが黒塗りでした。

自衛隊の人権問題に詳しい 佐藤博文弁護士
「異常としか言いようがない。本人に関わることなどは、本人が『明らかにしてくれ』と言っているのだから、秘密にする理由は全くない」

防衛大は取材に対し…


防衛大
「学生の懲戒処分については原則として公表しておりません」


このため、JNNに開示された資料を分析したところ、映像が撮影された2023年11月29日に暴言などを行ったとして、4年生6人が停学1日や戒告の処分をされていました。

この6人が罵声を浴びせるなどしていた加害者とみられます。


元防衛大生
「あの環境で毎日過ごしていたら、感覚が狂ってくる。その立場(幹部)に将来なる人たちが、ああいうことをしているのかと思うと、将来の自衛隊そのものに信用を置けなくなってしまう」


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