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マラソン次戦で日本記録を狙う36歳・新谷仁美が女子5000m出場 外国勢との争いで15分ヒト桁のタイムが目標【全日本実業団陸上】

総合
2024-09-22 06:00

全日本実業団陸上が9月21~23日の3日間、山口市の維新百年記念公園陸上競技場で開催され、再起が期待される選手も多く出場する。大会3日目の女子5000mでは新谷仁美(36、積水化学)に注目したい。3月の東京マラソンで2時間21分50秒(日本人トップの6位)と、目標だった日本記録(2時間18分59秒)更新を逃した。マラソン次戦で日本記録を更新するために、全日本実業団陸上5000mで持ち味のスピードを確認する走りをすることが一番の目的だ。


新谷のベースであるスピードを確認するための出場

新谷が全日本実業団陸上5000mに出場する目的を、横田真人コーチ(36、TWOLAPSTC代表)は次のように話した。
「冬にもう一度マラソンに挑戦するので、そこに向かっていく過程でスピードを確認します。僕と新谷の中では、新谷のマラソンの土台はスピードです」


新谷は13年シーズンいっぱいで一度引退している。それまでに3回マラソンを走ったが、2時間30分を切ることができなかった。世界を狙っていたのはトラックで、10000mで12年ロンドン五輪9位(30分59秒19)、13年モスクワ世界陸上5位(30分56秒70)の戦績を残した。


18年に現役復帰。19年世界陸上10000mは11位(31分12秒99)と健闘したが、新谷本人は納得できず、それを契機に横田コーチのアドバイスを受け容れるようになった。20年1月にはハーフマラソンで1時間06分38秒、同年12月には10000m30分20秒44と2種目で日本新。日本選手間では突き抜けたタイムを出して見せた。


21年の東京五輪10000mは、コロナ禍における五輪の存在意義に疑問を感じてしまったこともあり、21位(32分23秒87)と自身の世界大会最低成績に終わった。


その後はマラソンを、つねに日本記録を目標に走り続けた。22年のオレゴン世界陸上は代表入りしたが、現地でコロナに感染し欠場を余儀なくされた。23年1月のヒューストン・マラソンでは、2時間19分24秒と当時の日本歴代2位(現3位)をマーク。3種目目の日本記録に近づいたが、23年9月のベルリン、今年3月の東京と日本記録に届いていない。


その間の練習で持久系のメニューの割合を多く行うこともあったが、新谷&横田コーチの同学年コンビは前述のように、「やはり新谷の土台はスピード」という結論に至った。
「駅伝の区間賞レベルでなく、トラックの標準記録レベルのスピードです。(東京世界陸上参加標準記録の)14分50秒までは仕上がっていませんが、15分ヒト桁は狙いたい」


1周(400m)を72秒00で、12周半(5000m)を走り切れば15分00秒00になる。横田コーチがタイムを口にするのはそのペースで走るための練習ができているということだ。


日本の実業団チームに在籍するアフリカ勢との争いになる。アフリカ勢のペースが遅ければ、新谷が自分でペースを作るだろう。アフリカ勢のペースが72秒より速いときに、それに着くかどうかはスタートしてからの判断になる。


新谷が70~71秒で行くことができれば、東京世界陸上の標準記録も狙えるペースということになる。
 


年齢を感じさせない新谷のすごさ

長距離選手のスピードと持久力の強化バランスは、若い時期にスピードを強化し、年齢の進行と共に持久力を強化するパターンが多い。新谷も30歳を過ぎてマラソンに本格的に取り組んだ点では、そのパターンに当てはまる。だが36歳の今もトラック種目のトップレベルを維持しているのは異例と言える。競技を5年間離れていたことが関係している可能性もあるが、驚異的と言っていいだろう。


新谷はどうしてそれができているのか、という問いに横田コーチは「新谷だからです」と即答した。
「人間、衰えはありますが、それを上回る努力を彼女はしています。コンディショニングへの取り組みは年々レベルアップしている。自分にプラスになる行動が感覚的にできる選手なんだと思います。補食の摂り方や睡眠のとり方など以前は、意識してというか、無理矢理やっていましたが今は、自然にできるようになっていますね。息抜きもしますが買い物や美容院くらいで、深酒は絶対にしません。お酒の席を断ることも多いです」


ベテラン選手の練習でよくあるパターンは、年齢と共に負荷の大きいポイント練習を行う間隔を大きくすることだ。年齢と共に疲れの回復が遅くなることへ対応する方法として一般的になっている。


しかし新谷は違う。


「練習も今が一番積めています。ポイント練習を月曜、水曜、金曜、土曜とやっても外すことはありません。トレーニングと睡眠などの休養、食事やセルフケアなどのリカバリー、全てが自然に回せるようになっています」


新谷のストイックな競技姿勢は、結果を出すためには何が必要かを突きつめて考えたことの現れである。


その新谷でさえ、マラソンで結果が出なかったときは、準備段階でケガなどをしている。今年の東京マラソン前には足首に痛みが出て、1月末の大阪国際女子マラソンのペースメーカーを走るまでは、出場を迷っていた状態だった。


それが東京マラソン後は、長期間走れないような痛みが出ていないという。「フィジカルトレーニングを変えました」と横田コーチ。
「ここ数年間は、一般的に行われているウエイトトレーニングや(重量のある)メディシンボール投げなど、瞬発系や最大筋力を鍛えるメニューを週に3回行っていました。4月からはその頻度を週1回とかに減らして、その代わりにバランス系の機能改善トレーニングを重点的に行うようにしました。走りの中でこういう動きをしたい、という部分につながるトレーニングを、僕がイメージして提案しています」


進化するための方法は選手自身の状態や置かれた状況が変化すれば、その都度新たに生じる。新谷が全盛時と同じペースでトラックを走ったとき、「いつもの新谷だ」と感じる人が多いかもしれない。
だが以前と同じペースで走ることの裏側で、新谷は驚くべき努力をしている。見る側はそこにも思いを馳せて新谷の12周半を見守りたい。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)


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情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

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