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遺伝子検査で「10キロダイエット」J2サッカークラブでは「フィジカル強化」 スポーツ遺伝子研究の“是非” アスリート“選別”の懸念も…【news23】

総合
2024-10-18 17:19

今、パーソナルジムやプロサッカークラブでは、遺伝子の情報をもとに一人一人に合ったトレーニングが導入されています。一方、国立スポーツ科学センターは、アスリートの「選別」が懸念されることなどから、アスリートの遺伝子研究を停止しました。


【画像で見る】パーソナルジムで“遺伝子検査” J2クラブでも…


広がる遺伝子検査に基づくトレーニング

神奈川県にあるパーソナルジム。専門はダイエットやボディメイクです。


成果のほどは…


ジムに通って7か月(30代)
「7か月で10キロ弱(減った)」


聞けば、ジムに通うのは月2回だけだといいます。


ジムに通って7か月(30代)
「無理して頑張って努力してっていうよりは、たくさん食べて、かつそんなに運動しないでやってるんで」


そんなに魅力的な話があるのでしょうか。


インストラクターの遺伝子トレーニング研究所・杉山知寿子代表に聞くと…


遺伝子トレーニング研究所 杉山知寿子代表
「遺伝子情報を調べて、その方の体質に合わせたトレーニングだったり食事(メニュー)を提供するジムになっています」


遺伝子情報に基づいたトレーニングとは…


遺伝子トレーニング研究所 杉山知寿子代表
「15分時間があったら筋トレした方がいいのか、有酸素運動をした方がいいのかっていうのが分かったりとか、より具体的なアドバイスができるので、お客様がすごく早く成果が出せる」


検査は、遺伝子検査のキットで唾液を採取し、郵送するだけ。1か月ほどで結果が分かるそうです。


40代
「遺伝子検査をしたことで自分の特徴が結構分かったから、それは目から鱗でしたね。脂肪は落ちにくいんだけど筋肉はつきやすいっていうのがわかったから、それがすごく自分にとってのポジティブな気持ちになって。遺伝子検査で後押ししてもらった」


遺伝子情報に基づくトレーニングは、アスリートの現場にも広がっています。


サッカー・J2の「いわきFC」。


2015年に設立され、地元のリーグから始まった後、破竹の勢いで2022年にJ2まで駆け上がったこのクラブは、2018年に強化の一環で遺伝子検査を導入しました。


導入の理由について、旗振り役となったチームドクターは…


いわきFC 齋田良知チームドクター
「私がドクターとして重視しているのは、自分の体を知るということ。お酒が強い・弱いも遺伝子多型で決まっています。筋力も、そういった体質を知ることはすごく大事じゃないかなと思います」


それぞれの選手の遺伝子情報をもとに、筋トレの強度や回数などを調整することで効果的なフィジカル強化に繋がったといいます。


いわきFC 齋田良知チームドクター
「(相手に)体をぶつけていくことにすごく躊躇していたような選手が、自信を持って当たりにいくとか、(相手に)当たられても倒れずにプレーを続ける選手がすごく増えた」


遺伝子検査による「選別」に倫理的懸念も

一方、アスリートの遺伝子研究を停止する動きも。


国の研究機関である国立スポーツ科学センターでは、2017年からアスリートの遺伝子と成績やケガとの関係を研究していましたが、2年前に停止していたことが分かりました。


アスリートの「選別」に繋がることを懸念したからでした。


国立スポーツ科学センター 久木留 毅 所長
「『あなたは中距離よりも短距離が向いてますよ』っていう人が出てくるかもしれない。それを私達が推奨するってことはできない。倫理的な問題です」


しかし、スポーツ遺伝学の第一人者は「発展途上の技術だからこそ研究を続けるべき」だと指摘します。


順天堂大学 スポーツ健康科学部 福 典之 教授
「研究を止めるのではなくて、研究成果を活用するルールを考えていくべきだったのかなとは考えています。科学的なエビデンスに基づいたトレーニングが遅れてしまうのではないかと懸念します」


「あなたは向いていませんよ」という結果が出たら…

藤森祥平キャスター:
遺伝子研究にブレーキをかけた国立スポーツ科学センターですが、主にアスリートを選別することに繋がるのではないかということです。


例えば、遺伝子情報がわかったことで、本人が望んでいるスポーツができなくなって、望まないスポーツの実施を強制されることは回避しなければいけない、という倫理上の問題です。


▼国立スポーツ科学センター 遺伝子研究停止
<アスリートの選別を懸念>
「望むスポーツができなくなる、望まないスポーツの実施を強制されることは回避されなければならない」


小川彩佳キャスター:
研究停止ということについて、どうお感じですか。


教育経済学者 中室牧子さん:
私も、福先生と同じ考えで、研究を続けることも選択肢としてあったのではないかなと思うんですよね。日本で研究をやめてしまっても、海外で続いていくということは、普通に考えられるのかなと思うんです。


一方、同じ研究者としては、国立スポーツ科学センターの研究停止という判断は、すごく重いというか、非常に苦しい決断だったのではないかなとも想像します。


研究の結果、科学が明らかにした不都合な真実みたいなものが、思わぬ方向で人々に受け止められてしまうようなことをすごく恐れたのではないかと思うんです。


例えば、先ほどもあったように、良い方向で後押ししてくれたということなら良いんですけれど、「あなたはこういうのには向いていませんよ」など、そういう結果が出てしまったら、それを信じてしまって、結果としてそうなってしまうことはあるのではないかと思うんです。


例えば、高齢者に対して、「目が悪いので読むスピードが遅くなります」と言った後に、文章を読んでもらうと、実際に読むスピードが遅くなるという研究があるんですよ。


なので、「あなたはこのスポーツに向いていない」と言われると、信じてしまって、結果として、そうなってしまうことも引き起こしてしまうので、そうなってもらいたくない気持ちがあったんじゃないかと思います。


「偶然がもたらしてくれるものもある」

藤森キャスター:
順天堂大学の福教授によると、日本人の特徴で、筋肉に関する遺伝子タイプについて大きく三つの型にわかれるんですが、瞬発力に優れる短距離走向きと、持久力に優れる長距離走向きの筋肉があって、日本人の比率の7割以上が、実は短距離型なんだそうです。


▼順天堂大・福教授によると
<RR型・RX型(速筋型)>
特徴:瞬発力に優れる→短距離走向き
日本人の比率(649人に調査):74%
<XX型(遅筋型)>
特徴:持久力に優れる→長距離走向き
日本人の比率(649人に調査):26%


小川キャスター:
長距離で活躍されている選手も多いと思っていたので、意外ですね。


藤森キャスター:
自分の遺伝子情報を知りたいと思いますか?


小川キャスター:
今は調べたらいろんなことが簡単に出てくる時代ですよね。ショートカットで答えにたどり着ける。


でも、回り道していろいろ思考を巡らせながらたどり着いていた時代の方が、自分が豊かだった気もしていて、探りながら自分を見つけていくという幸せの中で、生きていきたい気持ちもあったんですけど、先ほどのジムを知ってちょっと揺らいでいます。


藤森キャスター:
私は小中高と野球をやっていて、長さでいったらプロ野球選手になっていてもおかしくないと思っています。こういう情報を知ったら、一縷の望みがあったんじゃないかみたいな気にもなります。


教育経済学者 中室牧子さん:
まず、科学は全てのことを知ってるわけではないし、100%の正解を知ってるわけではないっていうことは、すごく大事なことなんじゃないかなと思うんですね。


例えば、経済学の研究では、法律や制度や天候など、いろんな偶然によって生じた変化みたいなものが将来の成果にどう影響を与えるかみたいな研究をよくやるんですけど、結構、影響があることがわかっているんです。


例えば、小学校や中学校のときに、あいうえお順で席に並んで座ったりすることは、よくありますよね。友達にならないような人と、偶然、名字の最初の一字が近くて、前後ろになって、一生の友達になりましたみたいなことは、結構ありますね。


こういう偶然によって起こった変化みたいなものが、実は私たちに大きな影響を与えてるということは、いろんな研究の中でわかっているので、科学によって予測される未来も確かにあるんですけれど、偶然がもたらしてくれるものもあるということだと思います。


私たちはその意味で、科学が分かっていることはあくまで限定的なことなので、今ある不確実性や偶然を楽しむ人生も、私は必要じゃないかなと思います。


小川キャスター:
素敵な答えをいただきましたけれども。議論を重ねていくことが必要なことですよね。


『アスリートと遺伝子検査』について「みんなの声」は

NEWS DIGアプリでは『アスリートと遺伝子検査』について「みんなの声」を募集しました。


Q.遺伝子検査でスポーツの適性判断 どう思う?
「適性がわかるため 賛成」…27.2%
「優秀な人材輩出のため 賛成」…11.7%
「差別などを助長しかねず 反対」…24.9%
「選択肢を狭めかねず 反対」…24.3%
「その他・わからない」…12.0%


※10月17日午後11時24時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは18日午前8時で終了しました


==========
<プロフィール>
中室牧子 さん
教育経済学者 著書「学力の経済学」など
教育をデータに基づいて分析


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