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「大江戸温泉物語」湯快リゾートとブランド統合 全国で67施設に拡大 日本人旅行客をターゲットにした戦略 橋本啓太社長に聞く【Bizスクエア】

総合
2024-12-18 07:00

老舗ホテルを買収し再生させてきた大江戸温泉物語が11月、西日本を中心に展開する湯快リゾートとブランド統合し、全国で67施設にまで拡大している。インバウンド頼みではなく日本人旅行客をターゲットにした大江戸温泉物語の戦略について、橋本啓太社長に伺った。


【画像で見る】大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ 高い客室稼働率と事業拡大の秘訣


温泉宿再生の「大江戸温泉物語」 事業拡大のカギは効率化と居抜き

フロントを抜けると森をイメージしたという「プレミアムラウンジ」が宿泊客を出迎え、ご当地メニューが並ぶ夕食のバイキングは平日にも関わらず、多くの宿泊客で賑わっている。鬼怒川のせせらぎが聞こえる露天風呂やいくつもの大きな岩が印象的な内風呂など温泉も人気。


栃木県の鬼怒川の渓谷にたたずむ「大江戸温泉物語Premium・鬼怒川観光ホテル」。この鬼怒川観光ホテルは、大江戸温泉物語が2010年に岡部ホテルグループから、経営権を引き継いだ。


2024年3月から大規模改修工事を行い、7月に現在の形に生まれ変わった。改装前に宿泊したことのある客は「年に2回ぐらい、ここ何年かは来ている。部屋もロビーもきれいになって良くなったのではないか」と話す。


橋本社長に聞く 高い客室稼働率を維持する戦略

2023年から、大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツを率いる橋本啓太社長に館内を案内してもらった。


――立派なシャンデリアがある。


大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ 橋本啓太社長:
居抜き中古物件だが、良いものはそのまま残すということで、(このシャンデリアは)素晴らしいので残した。


――基本的に、全部食事はバイキング形式だが、どんなメリットがあるのか。


大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ 橋本啓太社長:
一番は給仕する人件費がぐっと抑えられる。人件費も原価も半分。


2003年、大江戸温泉物語は東京・お台場に天然温泉が楽しめるテーマパークとしてオープン。年間100万人ほどが訪れる人気観光スポットだったが、2021年に東京都との借地契約の期限を迎え閉館した。


――都市型の温泉テーマパークから、地方の温泉旅館再生に、転換したきっかけは?


大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ 橋本啓太社長:
お台場の事業は一事業だった。今後この温泉を活かしてどういう事業をやっていくべきかと。地方でスーパー銭湯をやるのもありだとは思っていた。その時、大きな宿泊施設の国有財産を民間へ売却していく話があった。ちょうどそういう話をもらってそれがきっかけとなって、築年数がある程度たったものを取得して、現代の温泉旅館に作り変えていくことが始まった。


大江戸温泉物語は、鬼怒川観光ホテルの他にも、栃木県のホテルニュー塩原や、大阪府の箕面観光ホテルといった老舗ホテルを買収し、再び人気ホテルへと生まれ変わらせた。


――高度経済成長期に建てた建物が多く、継続的に投資をする負担はないのか。


大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ 橋本啓太社長:
投資回収年数はかなり短く設定している。客のニーズは5年周期で変化すると思っている。短期で投資回収をして、ニーズに対応している。(新規で物件を建てることは)基本やらない。我々は居抜き中古物件を大体交渉が始まって約6か月で取得する。取得からリニューアルの期間も約5か月。その分、イニシャル(初期投資)のコストもぐっとかなり低くなる。新築の5分の1とか6分の1になる。


大江戸温泉物語のホテルは、1泊1万円から泊まれるスタンダードと、ラウンジでのアルコールが無料になるワンランク上のプレミアム、そして上位ブランドの「TAOYA」などに分かれている。


「仙台の奥座敷」と呼ばれる宮城県の秋保温泉に2023年にオープンした「TAOYA秋保」。1625年に開業の老舗旅館「岩沼屋」を買収し改装した。


「ゆったりと、たおやかに。」をコンセプトにしたTAOYAでは、アルコールを含むホテル内でのドリンクなどが宿泊費に含まれる「オールインクルーシブ」となっている。


宿泊客は「飲み放題で、(料金を)気にしないで飲める」「最高。めっちゃいい」。


バイキングでは地元・三陸産のカキをつかったカキフライや宮城サーモンの藁焼きなどが並ぶ。


温泉は伝統を感じる内風呂、そして新たに大きな露天風呂を増設した。


温泉宿再生の「大江戸温泉物語」 経営統合も…4タイプの宿で拡大

――複数ブランド戦略の狙いは?


大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ 橋本啓太社長:
客の選択肢を増やすということ。宿泊客の「もっとゆったりしたい」という要望をTAOYAブランドで実現させた。若干ゆったり作ることで収容人数も減る。面積あたりの収容人数が減ると少し料金を上げないと同じ利益水準にならないので、宿泊料金を若干上げさせてもらう。


――それでも十分安い。


大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ 橋本啓太社長:
「同じグレードの宿で比べたら安い」ということは、我々の戦略としてやっている。


――物価が上がってきたから、価格を高くしたブランドを作ったのではないということか。


大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ 橋本啓太社長:
全くそうではない。客の選択肢を作っていく過程で結果的にそうなった。(高価格化について)心配させない。必ずスタンダードタイプの宿はある。(スタンダードが)ベースであって、一番の出発地なので大切にしていきたい。


――12月の平日でも客がいるが、足元客室稼働率はどうか。


大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ 橋本啓太社長:
おかげさまで、コロナ後以降、年間の平均稼働は75%以上まで順調に回復傾向にある。(温泉宿)業界だと平均40%や50%だと思うので、高いのではないか。


――客室稼働率が高い理由は?


大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ 橋本啓太社長:
平日も1万円近くまで値段を落として、安くなるところが一番大きな理由だと思う。


――インバウンド景気によって、宿泊費高騰の現状があるが、興味はないのか。


大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ 橋本啓太社長:
あまり興味ない。やはり日本人に一年に何度も旅行してほしいというのが我々の精神。とにかく日本人客が年に何度も旅行してもらえるようにやっていきたい。そのためには宿泊料金を少しでも安くしていく。


大江戸温泉物語は2024年、さらなる成長の一手を打った。さらなる拡大に向け、西日本を中心に29の温泉宿を展開する「湯快リゾート」と経営統合した。


そして、11月に「大江戸温泉物語」にブランドを統合したことで、全国に67施設を展開する国内最大級の温泉宿グループが誕生した。


スタンダードクラスの大江戸温泉物語・志摩彩朝楽は、以前は湯快リゾートとして営業していたホテル。志摩彩朝楽の支配人、宮田浩さんは「西日本エリアだけではなく、日本全国で『志摩彩朝楽』という名前が知れ渡ったということで、非常にメリットがあった。関東からのお客様が非常に増えている」と話す。


温泉宿再生の「大江戸温泉物語」 ブランド統合の理由と今後の狙い

――規模が拡大したことで、良い面は?


大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ 橋本啓太社長:
物流のところ。西日本エリアは、同じエリアにホテルが集積しているので、物流のコストが低く抑えられる。


また、統合により湯快リゾートが進めていたICタグを使った自動精算といった省人化のシステムを導入したことで、グループ全体の人件費を下げることができたという。


大江戸温泉物語は、今後3年で新たに10か所の温泉ホテルのオープンを目指している。


――足元の業績でいうと、単年度黒字にはなっているのか。


大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ 橋本啓太社長:
ちょうど2023年度、一気に黒字化した。既存ホテルのリニューアル投資をしてもぐんと黒字になった。そこを見てさらに既存ホテルだけではなく、新規のオープンも今年手がけている状況。


――今後の展望は?


大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ 橋本啓太社長:
あまり多角化経営というのはしようとは思っていない。この温泉旅館という単一事業で成長していきたいと思っている。我々が考えて客が望んでいて、まだやっていない(ホテルのタイプが)詳しくは言えないが2つぐらいある。客が現時点でも求めているので(その2つのタイプは)ぜひやっていきたい。


4タイプの宿で拡大「大江戸温泉物語」 日本人旅行客がリピートする宿に

大江戸温泉グループは全国に67施設があり、4つのタイプに分かれている。最も高級な「TAOYA」でも1人1泊食事付きで1万円台から泊まれる。その下にプレミアム、スタンダードがあり、部屋で犬と一緒に寝られる「わんわんリゾート」もある。価格競争力があり、稼働率も高くなる。稼働率が高いから低価格が実現するという状況だ。


日本人の「国内宿泊旅行者数」と「費用」同じ7-9月期をコロナ前と比較すると、2024年はコロナ前の2019年に比べて、旅行者1人1回当たりの支出が1万3000円ほど増えているが、旅行者の数は1000万人ほど減っている。


――インフレで値段が上がっているので、お金は出ているが、延べ人数でいうとコロナ前から回復していない。


慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
日本人をターゲットにするとなると、お手頃な価格を用意することは重要。


大江戸温泉グループが単年度黒字を実現したという決算。コロナ前の2018年、2019年は買収やリニューアルにかける費用が大きかったため、赤字となっていた。そしてコロナの時期も厳しい状況が続いていたが、ようやく2023年度、黒字に転換し、売上高もコロナ前の水準にまで戻った。


――今は株主が、外資系のファンド「ローン・スター」ということで、黒字になってきた。今後、出口を探して、独り立ちしていくことが大事か。


慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
ものすごく円安だったので、海外の投資家から見れば非常に安く、日本に投資できたと思う。彼らから見れば、もっとインバウンドとか、価格を上げてという戦略かもしれないが、自立できるといい。


――温泉宿の再生は、日本経済にとってもすごく大事なことだが、日本の資本ではなく外資のファンドがやっているのはなぜか。


慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
いろんなファイナンスの中でリスクを取ると取ろうとする姿勢が、海外の方が非常に積極的なのではないか。


(BS-TBS『Bizスクエア』12月14日放送より)


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