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2025年の為替はどうなる?プロ4人が予想 円安に歯止めは…注目キーワードに「格差」「イーロン・マスク」など【Bizスクエア】

総合
2025-01-16 06:30

今年の為替。2025年のドル円相場どうなるのか、相場のプロたちに予想してもらった。


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円安に歯止めがかかるか 2025年ドル円相場は?

2024年、年初に140円台だったドル円相場はその後じわじわと円安が進行した。


日本銀行 植田和男総裁:
普通の金融政策を行っていく。


日銀は3月、マイナス金利を解除したが、それでも円安の流れは変わらず4月には1ドル160円台まで円安が進行。これを受け政府・日銀は過去最大規模の為替介入を実施した。一旦は円高に振れるも、再び円安方向に進み、7月には162円近くに。こうした中、アメリカでは9月に利下げが始まったが、円安基調は変わらなかった。そして長引く円安で、物価高による家計の負担が深刻に…。2025年、円安に歯止めはかかるのか?


予想するのは、バルタリサーチ・花生浩介氏、三菱UFJモルガン・スタンレー証券・植野大作氏、三井住友信託銀行・瀬良礼子氏、バンク・オブ・アメリカ・山田修輔氏の4人。番組おなじみの為替のプロたちが、2025年のドル円相場の行方を占う。


2024年は、どんな為替相場だったのか。去年の予想とともに振り返る!

番組でドル円相場の予想をしてもらっているアナリストに来ていただいた。2024年、激動の年となった為替相場。円安が定着した感がある、去年2024年の相場を振り返る。


年始は140円84銭という結構な円高でスタートした。2月に150円を突破し、そして4月29日には160円台になってしまったところで、介入があったが、結局7月の161円98銭まで円安が進んで大変だった。その後はアメリカの利下げ期待があって、シナリオ通り円高に振れたが、戻したのは139円57銭が限界で、その後は逆に利下げの速度が遅くなり、日銀も利上げに積極的ではないという見方から、また円安が進んでしまい、結局157円20銭で終わった。そして、去年のアナリストの皆さんの予想を振り返ると…。


――去年2024年の1月に見たものだが、こんなに外れるというのも珍しい。結果が157円で、一番円安を予想したのが山田氏の142円。15円開いて、とてもニアピン賞とは言えなかった。


バンク・オブ・アメリカ 主席日本FXストラテジスト 山田修輔氏:
構造的円安の部分は間違っていなかったが、アメリカ経済の強さ、ドルにその資本が集まる構造が想定以上に強かったというところがこの開きの原因だと思う。


――去年は、アメリカは早く利下げに踏み切るだろうし、日本は利上げするだろうから金利差が縮小するから、円高に振れる。どこまで円高いくだろうかということが話題だった。皆さんで130円ぐらいまで行くと言っていたが、その130円を正直に書いた花生氏。正解とは27円もの開きが出た。


バルタリサーチ 花生浩介氏:
大変恐縮です。やはり一つ言えるのは日米金利差が1%以上縮まったということ。ところが、FRBが0.5%の利下げをしてから、実は直近も1%以上上がっている。中銀からのメッセージと、それから市場の受け止め方にも思いっきりギャップがあった。そういう意味においては、市場が中銀に振り回された1年だったと思う。


――短期金利である政策金利は1%下げた。しかし市場が決める10年もの長期金利は、逆に言うと1%が上がっているそうだが、これは何を意味しているのか。

バルタリサーチ 花生浩介氏:
いろいろ背景はあると思うが、端的に言えば市場が中銀に対する信頼感を失いつつある。


――信用していないということか。目先は利下げをしてるけども、長期的には金利が上がるだろうと見ているのか。

バルタリサーチ 花生浩介氏:
そういうことになると思う。


――植野氏は、金利差は直接響かないという意見か。


三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏:
当時金利差の、金利の方向感をあまりにも重視しすぎた。予想通りアメリカは利下げをして日銀は利上げをしたが、金利の方向性ではなくてレベルに注目すると、アメリカは金利を下げてもまだ4%台前半という状況だと、日米共通の物価目標2%よりも高い実質プラスの領域だ。日銀はマイナス金利解除したと言っても、プラス0.25%だったら物価目標2%を下回る実質マイナス金利。やはり金利の方向ではなくレベルに注目すると、まだ十分なドル安円高が起きるほど金利差が縮まってないと思う。


――金利差に注目して、金利差が縮まるという時は円高に振れるのではないかとみんな思ったが、実際に金利差が縮まってみると「いや、しかし、それにしても」という話になったということか。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏:
今、ドルだと銀行に預けて、4%とか利息もらえたら嬉しい。そういう状況だとドルが売られ続けるという状況の金利には、まだなっていない。


――瀬良氏は、いつも花生氏と同様に円高志向だが、135円を予想して、大きく外してしまった。


三井住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏:
日本が利上げをし、アメリカが利下げをした。これはその通りだったと思うが、大きく外れたのは、日銀はハト派が利上げ、FRBはタカ派が利下げというスタンス。やっていることと姿勢が正反対だったというところが、外れた一番の大きなポイント。


――日銀は利上げをしているが、いつも慎重でハト派だと。FRBの利下げはするにはしたけれども、ずっとやるという感じでもないという、そちらの本音の方を市場が見てしまったということか。

三井住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏:
その姿勢の差が今回の外れの一番大きな要因だと思っている。


――今もそんな感じが続いている。

三井住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏:
今年もしばらくはその動き方は続きそうだと見てはいる。


2025年ドル円相場は? アナリストが大胆予想

――そうした見立ての中で、2025年の予想を皆さんにしてもらう。今年の円相場はどうなるのか。


――株式市場の予想とは違ってだいぶばらつきが出てきた。やはり最後は円高になるという花生氏は、年末140円と予想。


バルタリサーチ 花生浩介氏:
アメリカの金利が今、高止まってるので、多分1月も利下げはやらないだろうし、そういう意味で足元、ドル金利高・ドル高はあると思うが、一方で日本について言えば、金融正常化に向けて徐々に利上げをしていくと思う。

だから日米金利差はやっぱり趨勢的に見て、縮小していくと。それからアメリカはまだわからないが、世界経済で見ると欧州経済は弱いし、中国も弱い。そういうことからすると、トランプ氏に対する期待感が今先行しているが、それに対して少し修正が起こるのかなと思っている。


――ドル高も進むけども世界的に見ると、円もそんなに弱いわけではない。

バルタリサーチ 花生浩介氏:
日銀に政策の余地はあると思う。


――それでも165円ぐらいまで覚悟した方がよいということか。

バルタリサーチ 花生浩介氏:
足元はFRBの利下げ停止、もしくは一部は本当に利上げ再開という話もある。これは期待というか予測先行だが、そこが今ある間は、ドル高という意味においては、継続する可能性はあると思う。


――同じく円高派と言われてきた瀬良氏。年末145円で、137円台の円高もあるのではないかという根拠は?


三井住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏:
去年も8月に、エアポケットに落ちるような形で株安・円高があったが、今年に関してもアメリカ景気後退リスクが一時的に出てくる可能性が十分あるのではないかと見ている。140円割れということになれば、瞬間的に137円ぐらいまで円高が進む可能性というのは十分あるのではないか。


――為替相場も上下の変動が激しい。一方「いやいや、もうそんなふうにはならない、もう円安が定着」というのが植野氏と山田氏。植野氏は、年末159円と予想。この数字だと日本経済には厳しいのでは。


三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏:
ただそうは言っても、アメリカ経済が減速すれども、失速せず。ソフトランディングに成功するのであれば、アメリカの政策金利が下がっても3%台ぐらい前だと思う。

一方でおそらく日銀は「金利は見通し通りであれば上げる」と言っているので、0.75%ぐらいまでは上げると思う。それだとまだ実質金利は、アメリカがプラスで、日本はマイナスという、2024年と全く同じ構図が続く。2024年は1.35%も金利差が縮んだのに、結果140円から157円で円安になったということを考えると、基本的な構図は2025年も変わらないのではないか。


――しかしこれだと電気代もガス代も下がりそうにない。山田氏はいつも新年の予想のときに円安の数字を出して、本当かなと思うが、終わってみると大体いつも一番近いところにいるというのはここ数年続いているが、年末160円という厳しい予想。


バンク・オブ・アメリカ 主席日本FXストラテジスト 山田修輔氏:
日本の構造円安、アメリカのテクノロジー覇権という構造的にドル円が上がりやすい。その中で日米の政策がどうなるかというと、2025年考えると日本の方は少数与党で、おそらく政策を大胆に変えることはできない。

一方アメリカは、いろんな見方があるが、注目しているのがトランプ政権。トランプ氏というものがメインストリーム化したことは重要だ。第一次政権のときは得票数では過半数を下回って、今回2回目勝って、得票数でも過半数を上回っている。ということはもうメインストリーム化している。そうすると政権に入る人材のクオリティが高くなっている可能性はあると思う。第一次トランプ政権に入ることで評判が落ちると考えた方はいると思うが、今回は例えばイーロン・マスク氏であったり、財務長官のスコット・ベンセント氏。テクノロジーや金融業界から錚々たるメンバーが入ってきている。どちらかというと、ドルの基軸通貨としての地位や財政規律を重んじる人も結構入ってきている。そう考えるとやっぱりアメリカへの資本の集中が続くのではないか。


2025年ドル円相場は? 今年のキーワードは?

2025年の為替相場のキーワードをアナリストの皆さんに書いてもらった。直球勝負で来たのは植野氏で「実質金利と為替需給」。


――先ほどから実質金利のお話があったが、そして為替需給。


三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏:
為替需給も大きいと思う。というのも、日本は今エネルギーも食料品もそれから産業用金属も基本的に生活必需物資を海外からドルで買わないと経済が回らない構造の国になっている。今年も実需のドル不足で大体年間10兆円ぐらいはあるかなと。

それに加えて我々がスマホやパソコンをいじってると、結局ITインフラの基盤技術を握っているアメリカに向けてどんどん料金を支払っていかなければならない。いわゆるデジタル赤字。これが大体7兆円ぐらいあるので、足すと大体17兆円。イメージで言うと、2024年財務省がドル売り介入やった金額が15兆円なので、貿易サービス赤字の決済で発生しているドル不足だけで介入の効果を消してしまう働きがある。

それに加えて、NISAを始めた若い人たちがあんまり日本株買わないでバンバン、オルカンやS&P500を買っているといったキャピタルアウトフローも考えると、金利差以外の部分でも円安要素は大きいと思う。


――アメリカは強いかもしれないけども、アメリカの弱い部分にもちょっと注目した方がいいのではないかというのが世良氏で「格差」。


三井住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏:
世界で見てもアメリカ一強の経済にも格差があり、アメリカの国内を見ても産業の分野、一部の分野が強くてその他が弱い。あるいは国民の中で見ていくと所得格差がかなり開いてきている。


――アメリカの世帯収入増加率のグラフを用意した。

三井住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏:
2019年から22年の3年間、しかも物価の部分を調整した実質ベースの増加率。3年で平均は15%だが、高所得と低所得のところの差がものすごい開いてきている。15%という平均の姿は実態を表していない。高所得者、しかも上から10%のところがもう23%近く増加してきている。でも低いところはほとんど増えていない。

この所得格差に対してどんどん開いているとなると、やはり低所得の人たちが貧困にずっと喘いだまま来ている。だからこそトランプ氏が大統領に選ばれた。ここに光が当たるとFRBもアメリカ経済の強いところだけを見てるのではなく、弱いところも見なくてはということでの利下げ観測が出てくる可能性は十分あるのではないかと思う。


――つまりこういうところに光が当たった動きが出てくると、瞬間的に円高に振れることもあり得るのではないかというのが先ほどの137円予想か。

三井住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏:
その通りです。


――変わったところで「イーロン・マスク」という花生氏。


バルタリサーチ 花生浩介氏:
イーロン・マスク氏の注目点としては、一つはウクライナ戦争、それからもう一つは「DOGE(政府効率化省)」といわれる政策経費の削減。


――予算の削減、行政改革。

バルタリサーチ 花生浩介氏:
これについて、イーロン・マスク氏はもうやっている。つまりウクライナに対しても、(スターリンクを使わせたり)交渉はもう昔からやっているし、予算削減についても、例えばテスラであるとか、Twitterであるとか、これも実施済み。やり方もわかっている。なのでその意味においては、結構実現可能性があると思っている。仮にその場合だが、多分両者も含めて、期待インフレ率が下がるのではないか。


――イーロン・マスク氏が活躍してウクライナ戦争を終わらせれば、エネルギー価格は下がるし、それからイーロン・マスク氏が上手くやって政府の歳出削減に成功すれば、みんながインフレになると言っていることが起きなくなり、ミラクルだ。

バルタリサーチ 花生浩介氏:

イーロン・マスク氏が政権から離脱する可能性も5割ぐらいあるとは思うが、仮にうまくいった場合には、インパクトは非常に大きいと思う。


――「トランプ流」の矛盾点を解消してくれるワイルドカードがイーロン・マスク氏ということか。しかし、夏ぐらいまでにはトランプ氏と仲たがいしているのではという見方もある。

バルタリサーチ 花生浩介氏:
その可能性もあると思う。


――そして、なかなか面白い言葉を書いてくれたのが山田氏。「そろそろ必要!円金両用メガネ」。“金”は、ゴールドの“金”なのか。


バンク・オブ・アメリカ 主席日本FXストラテジスト 山田修輔氏:
為替ストラテジストとしても、ドルとかユーロとか円の中の強弱を分析する仕事だが、ここ数年、為替の中でドルが1人勝ちしてきた感じだ。ただドルが本質的に強い通貨・資産かというとそうではない面もある。


――金価格はかなり上昇した。

バンク・オブ・アメリカ 主席日本FXストラテジスト 山田修輔氏:
金・ビットコイン・日本でいうところの都心のマンション。要するに、供給が限られて希少性の高い資産というのはドルに対して相当値上がっている。その背景にあるのは、各国の通貨の発行体である政府、これが財政金融政策において、信任を失ってきているというところがあると思う。米国にしてもコロナ禍でばらまいたお金をまだ回収しきれてない。


――去年2024年は円の信認が問われる1年だと言われていた。結果から見ると円安はこれだけ進んで、円の信認はぐらついてきているが、ドルの信認も磐石ではないという意味か。

バンク・オブ・アメリカ 主席日本FXストラテジスト 山田修輔氏:

はい。そういう意味ではイーロン・マスク氏であったり、米国政府の財政規律、規制緩和というのは、ドルの信認を取り戻せるかどうかという意味においては、非常に重要なポイントになってくる。


――最後に花生氏に伺いたいが、円の信認という意味では、終わってみると円安容認政策をずっと続けているような気がするが、本当に大丈夫なのか。

バルタリサーチ 花生浩介氏:

私は大丈夫だとは全く思っていない。やはり先進国である以上、少なくとも通貨安政策は取るべきではない。逆に言うと通貨安を前提とした経済政策をとった場合に、仮にうまくいかなくなったら、今度は通貨安を施行するための政策を取らなくてはならない。つまり為替レートは目的化してはいけない。なので、円安をちゃんとコントロールする政策が望まれると思う。


――そういう意味では、当局にとって試される年にもなるかもしれない。


(BS-TBS『Bizスクエア』 1月11日放送より)


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