女性の健康知識(ヘルスリテラシー)は仕事にも影響!?
2019-06-04 18:30:28
執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
日本医療政策機構が行った調査で「女性の健康知識(ヘルスリテラシー)の高さが仕事のパフォーマンスに影響する」という非常に興味深い結果が示されました。
健康知識と仕事のパフォーマンスとの関係性」と聞くと、健康への関心が高い人だけではなく、仕事で能力を発揮したい人、さらには女性を雇用している経営者の皆さんも気になるのではないでしょうか。
そこで今回は、前述の調査結果をベースに、ヘルスリテラシーについてご説明します。
ヘルスリテラシーとは?
そもそも「ヘルスリテラシー」とはどのような意味なのでしょうか。
ご存知のとおり「ヘルス(health)」は「健康」という意味です。
そして「リテラシー(literacy)」は、本来「識字能力」を指していましたが、現在では転じて「特定の分野に必要な情報を引き出し、その知識を活用する能力」という意味でも使われるようになってきています。
つまり、「ヘルスリテラシー」とは「健康に関する知識を活用できる能力」といえます。
それでは、「女性のヘルスリテラシーが仕事のパフォーマンスに影響する」とは、どのような理由からなのでしょうか?
ヘルスリテラシーと仕事の関係
冒頭で触れた日本医療政策機構の調査は、18~49歳のフルタイムで働く女性2000名を対象に実施されました。
本調査では、「女性の健康情報の選択と実践(9項目)」「月経セルフケア(5項目)」「女性の体に関する知識(5項目)」「パートナーとの性相談(2項目)」という4つの因子(合計21項目)と、「知識に加えて知識を活用した行動に関する項目」によってヘルスリテラシーの高さを割り出しています。
そして、これらと仕事のパフォーマンス、妊娠や不妊治療、女性特有の症状があった時の対処などとの関連を調べています。
そのなかで、仕事のパフォーマンスとの関連について、「PMS(月経前症候群)や月経随伴症状(月経に伴うさまざまな身体的・精神的症状)によって、元気な状態のときと比較して仕事のパフォーマンスが半分以下になる」と答えている女性が約半数にのぼることがわかりました。
また、「更年期症状や更年期障害によって、元気な状態のときと比較して仕事のパフォーマンスが半分以下になる」と答えている女性もおよそ半数いることが明らかになりました。
いずれも、女性特有の不調により仕事のパフォーマンスが落ちる人は決して少なくないことを表しています。
しかしながら、これをヘルスリテラシーの高さ別に分析してみると、ヘルスリテラシーが高い人のほうがPMSや月経随伴症状、更年期症状や更年期障害などによるパフォーマンスの低下が起こりにくいこともわかったのです。
とりわけ「女性の体に関する知識」という因子との関連性の高さから、同調査では仕事のパフォーマンスへの影響という視点において「特に女性の体に関する知識を身につけることが重要である」と結論づけています。
なぜヘルスリテラシーは重要?
今回の調査では、ヘルスリテラシーの高い人のほうが、PMSや更年期症状や更年期障害のときに受診や服薬などで対処行動をする傾向にあること、また、定期的に婦人科や産婦人科を受診していることも明らかになりました。
つまり、何らかの不調があったときに、ヘルスリテラシーの高い人ほど早い段階で健康な生活を維持するための行動を起こしやすいと考察できます。
そうした行動により、日常生活や仕事に生じるマイナスな影響の抑制につながっているのかもしれません。
女性特有の症状や病気は、周囲の人に相談がしにくく、我慢したりうやむやにしたりすることが多いと思います。
あるいは、インターネットなどで情報を検索し、正しい情報なのか確証が持てないまま、必要以上に楽観視して放置するか、逆に恐怖心をあおられて病院などの受診をためらうかもしれません。
こうして事実と向き合わずにいると、日常生活や仕事に支障を来たし、ひいては重大な病気や不妊の兆候を見過ごすことになり兼ねないのです。
実際に本調査でも、ヘルスリテラシーの低い人のほうが職務満足感や生活満足感、QOL(Quality Of Life;生活の質)が低いということが明らかになっています。
ヘルスリテラシーを身につけるために
現在、インターネット上には膨大な量の医療情報があふれています。
その情報は玉石混交ですが、知らないうちに誤った知識を抽出し、正しい情報として取り込んでいる可能性があります。
そうならないためには、信頼できる情報やサイトを見極める目を養うことが重要です。
聖路加国際大学の中山和弘氏が運営するサイト「健康を決める力」では「信頼できる情報」について解説しています。
このようなサイトを参照することもひとつの方法です。
そして、定期的に健診を受ける、不調があったら自己判断や放置をせず早めに病院を受診する、といった心がけも大切です。
医療スタッフとのコミュニケーションを通して、ヘルスリテラシーを高めることにもつながるでしょう。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku